EU問題から地域格差を考える(中編) -格差拡大は資本主義の宿命なのか-

私は、前編の冒頭において、高齢者ばかりの熊野の漁村に住んで地方の衰退を目の当たりにして以来、

・都市と地方の経済格差の拡大は必然だったのか、それとも経済政策の失敗だったのか。

・地域格差は今後是正に向かうのか、それとも固定化もしくは一層拡大するのか。

の探究を自らの命題にしていると述べました。

 

 また、EU問題を題材にしてあれこれ自問自答した結果、

・経済単位を大きくすることには地域間格差を拡大する欠陥がある。

・日本を分割してそれを独立的経済単位にすれば、地域経済にふさわしい為替レートとなり地域経済は良くなるはず。

との一応の結論に至ったところです。

 

そこで、今回はさらにコア(中心)と周辺との格差拡大が是正に向かうのか、それとも固定化又は一層拡大するかについて、考えてみたいと思います。

 

結論を先に言えば、残念ながら、

資本主義は中心が周辺を蒐集(しゅうしゅう)し続けないと生きていけないシステムらしく、格差は今後も拡大する一方で、その解決策は今のところ見出されていないとのことのようです。

資本主義は、「中心」と「周辺」から構成され、「周辺」つまり、いわゆるフロンティアを広げることによって「中心」が利潤率を高め、資本の自己増殖を推進していくシステム

「アフリカのグローバリジェーション」が叫ばれている現在、地理的な市場拡大は最終局面に入っている。もう地理的なフロンティアは残っていない

 また、金融資本市場という「電子・金融空間」のなかでも時間を切り刻み、一億分の一秒の単位で投資しなければ利潤をあげることができない。先進国の政策金利はおおむねゼロ、10年国債の利回りも超低金利。

つまり、「地理的・物的空間(実物投資空間)」からも「電子・金融空間」からも利潤をあげることができなくなっていることは、資本主義を資本が自己増殖するプロセスと捉えれば、資本主義が終わりに近づきつつあることがわかる。

 

 

上記カッコ内は、「資本主義の終焉と歴史の危機」水野和夫著(集英社新書 2014年3月19日発行)の「はじめに-資本主義が死ぬとき」からの抜粋です。この本はさすがに大ベストセラーとなっただけに、今の世界経済情勢を理解するにおいて非常に説得力のある本と受け止められました。

 

この本は題名のとおり「資本主義の終焉」がメインテーマとなっていますが、私は地方衰退の根底にある「格差問題」が生じる要因はなにかという視点から読んでみました。この本では、「蒐集」を「中心/周辺」もしくは「中心/地方」という分割のもとで、富を中心に収集させるシステムとしています。以下カッコ内の引用文が長くなりますが、それをもとに考えていきたいと思います。

 

1 お金の変質が格差の要因

「金融・電子空間」元年は、1971年。ニクソンショックでドルが金と切り離され、ペーパーマネーになった。いかりを外されたドルは、自由に伸び縮みし、バブルが起きやすくなった。1995年あたりから国際資本が国境を自由に超えはじめ、アメリカ主導の金融自由化が推し進められて、この空間で利潤を極大化させていった。

 

 しかし、これは中間層を豊かにすることなく、むしろ格差を拡大させた。この金融市場の拡大を後押ししたのが、新自由主義だったから。政府よりも市場の方が正しい資本配分ができるという市場原理主義の考え方で資本配分を市場に任せれば、労働分配率を下げ、資本側のリターンを増やすので、富む者がより富み、貧しい者がより貧しくなっていくのが当然

 

 

私は経済の専門家ではありません。しかし、専門的知識はなくてもそもそも経済とは、人間と人間、人間と自然との間のやり取りであるという観点から、経済を生理・生態学的な視点から解釈しても、そう間違はないのではないかと勝手に思っております。

 

 お金とは本来、モノやサービスを売ったり買ったりとやり取りするときの約束状(最近では紙切れですらなくパソコン画面上の単なる数字の羅列)だと理解しています。だからモノやサービスが存在しない世界においてはお金には何の価値もないのは誰にも理解できます。逆に言えば、「お金」とはモノやサービスの存在量と一定の比率関係にあるはずです。

 

 お金は人間の血液のようなもので、実物経済といえる骨や肉の活動に必要な酸素や栄養を運ぶ役割を果たしているとよく例えられます。しかし、血のそのものには体を動かす機能はないのであくまで人間活動の主役にはなり得ない存在と思います。「血の気が多い」人はいますが「血の量が多い」と自慢する人はあまり聞きません。人間の血の重量は体重の約1/13とされており、骨髄の中にある血液製造細胞がうまくバランスをとっているのでしょう。

 

 一方、今の世界経済では、実物(実体)経済の規模とお金の量(金融経済規模)との比率を見ると以下のようになっています。

 

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1980年には実体経済対金融経済の比率は1:1.09に過ぎませんでした。

両者はほぼ同じ規模の存在だったのです。ところが、その後金融経済が急激な膨張を見せ始めます。1990年には約2倍に、2000年代には約3.5倍に、現在では10倍以上と言われています。

(FXWorks実体経済と金融経済@市場に与える影響力2015.09.20 より引用)

 

いやーとんでもないことが起こったのですね。体重の10倍にも血液が増えれば「こぶとり爺さん」どころか、スターウオーズに出てくる「ジャバ・ザ・ハット」です。

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どう見ても不健康そのものの醜い生き物としか言えません。なお、その性格は「強欲にして冷酷、大胆にして野蛮ではあるが、自分に利益をもたらす相手には比較的寛大である」とのことです。まさに〇〇経済を象徴していますね。

 

 「ドルが金と切り離され、ペーパーマネーになった」ことで、お金の箍(たが:金属や竹で出来た輪)がはずれ、このような生き物が生まれたのでしょうが、これにより主従逆転が起こり、金融経済が実体経済に大きな影響を与えるようになったと言われています。まさに、「しっぽが犬を振り回す」経済となったのです。これでは、金融経済でボタン一押しで大儲けする一部の資本家と、実体経済で額に汗して働くことでしか収入を得られない多くの国民との間で格差が拡大したのも当然と言えます。

 

2  マネー創出のメカニズムの変化が格差の要因

1995年に銀行業務と証券業務の兼業を認められたことで、マネー創出のメカニズムを根本から変えてしまった。それまでのマネーは銀行の信用創造機能によってつくられ、その時の主役は労働者であり、商業銀行。ところが、「金融市場空間」でマネーを作ろうとすれば、主役は商業銀行ではなく投資銀行。こうして、貯蓄行為を行う家計は「地理的・物的空間」から主役の座を降り、その座を「電子・金融空間」において巨額の資金をボタンひとつで、国境を越えて自由に動かすことのできる資本家に譲り渡した

 

前から疑問に思っていた「どうして銀行の金利はこんなに低くなったのか」の原因が少し分かったような気がしました。

生態系は大きく見れば入力と出力が一致する循環系でできています。お金とは実体経済におけるモノやサービスを交換するための手段なので、本来お金も供給サイドと需要サイドの間で循環するはずです。その需要サイドの大きな部分は国民(労働者)の消費。その国民のお金(家計)が銀行を通じ供給サイドに必要な資本の一部となり、その見返りが金利として還元され次の需要の一部となると思います。

 

ところが、実体経済と離れた「電子・金融空間」で勝手にお金を創造し始めた資本家が「これからは、金が金を生む玉手箱ができたので自分で直接調達します」となったらどうなるでしょう。

 

本来国民が金利から得られていた収入が投資家に遮断されたのですから、供給サイドの中でお金が循環増大するだけなので、格差は拡大するのは当然です。なお、日銀は、超低金利になった1990年から2005年までの国民が本来手にするはずの利息収入の減少による家計の損失を331兆円と推計(2007年)しています。

 

実体経済と関係なくお金が増えれば、インフレになるはずですが、現実はデフレ。これは、増えたお金が需要サイドに回っていないことがその要因ではないでしょうか。例えば、日銀が、金融緩和をして世の中のお金を増やしても、インフレターゲットを達成できないのもそれが要因かも。

 

3 「儲けは資本家へ、損失は国民へ」が格差の要因

 

実物経済の利潤低下がもたらす低成長の尻ぬぐいを「電子・金融空間」の創出によって乗り越えようとしても、結局バブルの生成と崩壊を繰り返すだけ。クリントン政権時のローレンス・サマーズ財務長官が指摘した「3年に一度バブルは生成し崩壊する」になった。バブルの生成で富が1%の人に集中。一方、崩壊時には国家が公的資金を注入し、巨大金融機関を救済。その負担は中間層に向けられ、彼らが貧困層に転落する

 

説明不要ですね。「大貧民ゲーム」そのものであり、これでは格差が拡大しないはずがありません。

 

4 グローバル化で資本と雇用者の共存関係が終わったのが格差の要因

 

「地理的空間・物理的空間」で利潤をあげることができた1974年までは、資本の自己増殖(利益成長)と雇用者報酬の向上とが軌を一にし、資本と雇用者は共存関係にあった。しかし、グローバリジェーションが加速したことで、雇用者と資本家は切り離され、資本家だけに利益が集中した。グローバリジェーションの帰結とは中間層を没落させる成長。金融ビックバン、労働規制緩和、TPPがそれにあたる

 

 資本家は外国に工場を移転しても困らないが、雇用者は失業する。前編でふれた、フランスにおける国内企業の中・東欧国流出による国内経済の空洞化だけでなく、さらにその中・東欧国からの労働者流入によってフランス人の職が奪われる「二重の雇用空洞化」がもたらす賃金の低下による格差拡大もこれに当たるでしょう。雇用者と資本家を切り離すTPPの強行採決も辞さずという我が国の政治情勢の下では「地方創生」や「中間層の再生」などあり得ないということでしょうか。

 

5 新興国の発展が格差の要因

 

グローバリジェーションとは、「中心」と「周辺」を結びつけるイデオロギーであり、「中心」と「周辺」を組みかえる作業でもある。資本主義は「周辺」の存在が不可欠なので、途上国が新興国に転じれば新たな「周辺」をつくる必要があり、それがアメリカではサブプライム・ローン問題であり、日本では非正規社員

 

この「中心」と「周辺」の組みかえ要因説には正直驚きました。「日本はアジアの成長を取り込んでいかなければならない」とはよく聞く言葉です。周辺国が豊かになれば自分の国も豊かになる。そう思っていました。日本の高度経済成長も、内需拡大のほか、欧米先進国との同時経済成長がそれをもたらしたとどこかの本で読んだことがあります。

 

しかし、グローバリジェーションの時代にあっては、アジアが経済的に豊かになるほど、日本国内に新たな「周辺」をつくる必要性が高まり、ますます格差が拡大するというのです。これは常識の逆です。もしこれが本当なら、地方はもちろん都会における雇用者も含め、今後とも「周辺」化されることで、資本により徹底的に蒐集される運命にありそうです。もしかするとそのための策略が、非正規社員増大化に続く「(資本家のための)一億総活躍社会」であり「(資本家のための)女性社会参画」なのかもしれません。

 

6 資本に国家が隷属したのが格差の要因

 

「地理的・物的空間(実物投資空間)」で利潤をあげることができない先進国の資本は、「電子・金融空間」を創出し、そこで稼ぎ出した過剰資本を新興国市場に向けた。これにより、それまでの国家と資本の利益が一致していた資本主義が維持できなくなり、資本が国家を超越し、資本に国家が隷属する資本主義へと変貌した。

 

全く同感します。TPPに関する以下の写真をご覧ください。

 

2012年の総選挙で自民党はTPP反対を掲げていた。

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(ネット「togetter」より引用)

 

その4年後には

 

・安倍首相は国会での質問に対し「私自身は、TPP断固反対と言ったことは一回も、ただの一回もございませんから。まるで私が言ったかの如くのですね発言は慎んでいただきたい」

・自民党福井照議員がTPP「強行採決」発言で特別委理事辞任へ

 

その一方でこんなこともありました。

 

TPP「協議開始」を表明、「平成の開国」めざす=菅首相

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11月13日、菅首相は、APEC最高経営責任者サミット(CEO)であいさつし、TPPの交渉参加に向けて「関係国との協議を開始する」と表明(2010年 ロイター/Jason Reedより引用)

 

その6年後には

 

・民進党代表選において

玉木雄一郎氏「TPP交渉には反対だ」 

蓮舫氏「日本だけが進める環境にない」 

前原誠司氏「今のまま押し通すのは反対」

 

本当に悲しくなってしまう写真です。

日本の政党とは、与党になればだれも資本には逆らえないようです。政権与党と野党第1党がこのざまでは、国会議論など茶番としか受け止められません。

どちらのアメリカ大統領候補が勝ってもTPPに反対と言っている今こそ「TPPから日本も降りる」のチャンスだったのに・・・

二階に引きずりあげられて(交渉では99対1という完敗の目にあわされて)、そのうえ梯子を外され、「アメリカ様それはあんまりだー」と泣きべそかきたいところをぐっとこらえ、上を見上げて笑いながら通る通行人に向かって、聞かれもしないのに「俺は自分であがったのだ―、俺を見習いみんなもあがってこい!」とやけくそ状態で叫んでいるように思えて仕方ありません。

今頃マイケル・フロマンUSTR代表は、日本のTPP国会の様子を見て、腹の皮がよじれるほど笑い転げているのではないでしょうか。もう既存の政治勢力では資本に対峙できないのでしょうか。新しい政治勢力が必要とつくづく思います。

 

 

7 貧富の二極化が一国の中で現れ始めたのが格差の要因

グローバリジェーションで豊かな国と貧しい国という二極化が、国境を越えて国家の中に現れることになった。今までは2割の先進国が8割の途上国を貧しくさせたままで発展してきたため、先進国では国民全員が一定の豊かさを享受することができた。しかし、今は資本がやすやすと国境を超えるため貧富の二極化が一国の中で現れる。グローバリジェーションとは南北で仕切られていた格差を北側と南側にそれぞれ再配置するプロセスといえる。これから、近代化を推し進めていく新興国の場合、経済成長と国内での二分化が同時に進行していくことになる。そこが、これまでの先進国の近代化と大きく異なる点。

 

これによると、かつての日本の高度経済成長期に国民全員が豊かになれたのは、途上国を貧しくさせたままであったから可能であったということです。何か複雑な思いがします。

また、これを読んでアメリカの大統領候補のいずれもがTPPに反対している理由についても納得がいきました。私は、不思議でしかたがありませんでした。TPP交渉でアメリカが日本に譲ったのは「25年後に2.5%の自動車関税を下げる」というスズメの涙ほどのものである一方、日本からはたんまりと譲歩を引き出した大勝利なのに、どうしてそれに反対するのかと。アメリカこそグローバリジェーションで大儲けした本家本元ではないかと。

 

そこで、少し調べたところ、アメリカ国民はTPPの本質を見抜いていたのです。

(Forbes Japan 2016/07/21より引用)

労働組合やNGO、NPOがTPPを批判しており、例えば、米NPO「パブリック・シチズン」は、TPPについて「最終文書の内容は予想より悪い。これにより、民間企業の利益を代表する500人の米国政府の貿易アドバイザーの要求は満たされるが、公の利益は損なわれる」

としています。

 

このため、大統領候補のほとんどが以下の通りTPPに反対せざるを得なかったのです。

(骰子の眼 2016-03-04 より引用)

ヒラリー・クリントン:TPP反対(賛成から転向)

・雇用を創出し、賃金を上げ、安全保障を促進する協定になっていない。

・中国や日本などのアジア諸国は、通貨の価値を下げることで意図的に商品を安くしてきた。私はこうした不正行為と闘う。厳しい監視や関税など効果的な措置を取る必要がある。

 

バーニー・サンダース:TPP反対

TPPは、アメリカの大企業と製薬業界、そしてウォール街のために用意されたものだ

・アメリカの労働者に、時給56セントのベトナムの労働者と競争して欲しいとは思わない。

・NAFTA(北米自由貿易協定)やCAFTA(中米自由貿易協定)、PNTR(対中正常通商法案)などが発効されてから、数百万人の労働者が失業している。アメリカが製品を買ってほしいなら、この国で製造する必要がある。

・大統領になったとしても、この破滅を招くような貿易協定に署名しない。

 

ドナルド・トランプ:TPP反対

・中国、日本、メキシコ、ベトナムおよびインドに対し、自国通貨を下落させ米国からの輸入品を排除することで、米国から「略奪している」と非難。TPPには署名せず、北米自由貿易協定(NAFTA)に関してはメキシコ、カナダと再交渉を目指す。

・TPP署名せずメキシコ国境に壁建設

 

テッド・クルーズ:TPP反対(賛成から転向)

・2015年夏にはTPP関連法案に賛成票を投じていたが、世論が反TPPに傾いたのにともない反対派に転じ、陣営は2月に「TPPはルビオとオバマの貿易協定」というページを開設した。

 

アメリカ国民は、TPPとは1%の者の利益のためであり、TPP交渉を巡る国と国との勝ち負けなどがどうであれ、自分たちにはデメリットしかない、「TPPは、貧富の二極化をアメリカ国内に持ち込むもの」に気が付いているから反対しているのでしょう。イギリスのEU脱退も遅ればせながらイギリス国民がそれに気が付いたからではないでしょうか。なお、大統領選挙前には反対しても、当選後には日本の政治家のように「TPP大賛成」に転換する可能性は十分あると思います。特にヒラリー候補においては間違いなく大ありでしょう。

 

8 自由主義とは金持ち保護主義であったことが格差の要因

ウオーラーステインは「近代世界システムⅣ」で「自由貿易は、じっさい、もうひとつの保護主義でしかなかった。つまり、それは、その時点で経済効率に勝っていた国のための保護主義だった」「自由主義は、最弱の者と自由に競争でき、抗争の主役でなく犠牲者であるにすぎないか、弱い大衆を搾取できる完璧な力を、最強の者に与えたかったのである」としている。

 

自由貿易とは経済効率国保護主義とはうまくいったものです。例えれば、ボクシングのすべての階級にヘビー級のボクサーが参戦できる自由主義ということでしょう。もっと端的に言えば、自由主義とは強者が弱者から富を奪うことを合法化する制度と言ってもよいでしょう。例の新自由主義者がよく使う「努力するものが報われる社会」というお題目の実態は「他人を貧しくすることで自分だけが金持ちになる努力が報われる社会」です。これでは泥棒やスリが喜ぶ社会です。泥棒が自由にのさばるような社会では、泥棒以外はみんな貧しくなる格差社会となるのは当然ですね。

 

 以上「資本主義の終焉と歴史の危機」という本から格差が拡大する要因を8項目あげました。この本は、その表題のとおり、資本主義は「周辺」からの蒐集で成り立っており、その「周辺」が消滅することにおいて終わりを迎えるということがメインテーマですが、その中の格差に係る記述部分を取り出しただけでも、こんなにうんざりするほどありました。

 

これでは「格差」は拡大こそすれ是正することもないということです。旧ソ連邦の崩壊で社会主義が失敗に終わり、現代社会における経済システムとして資本主義以外にあり得ないとすれば、多くの国民は今後貧しくなる一方の生活を受忍しなければならないのでしょうか。著者の水野和夫氏も「この先どのようなシステムを作るべきなのかは私にもわかりません」としております。

 

資本主義が生まれて400年、先進諸国に繁栄をもたらし、今も発展途上国の経済成長に貢献しているのは事実です。しかし、それはたまたま資本主義が持つ根本的な病(あくなき蒐集を続けないと死に至る)が発症するまでのことだったのでしょうか。マルクスが言った「資本主義は持続性のない自滅的なシステム」も同じことです。

 

「自滅するまで自己増殖を続ける資本主義」とは、「宿主が死に至るまで増殖を続けるがん細胞」に似ています。ネットでがん細胞の説明を見ると以下のようです。注は私の挿入です。

(がん情報サービス 細胞ががん化する仕組み より引用)

がんは、普通の細胞から発生した異常な細胞のかたまりです。正常な細胞は、体や周囲の状態に応じて、ふえたり、ふえることをやめたりします。一方、がん細胞は、体からの命令を無視してふえ続けます(注:自由化、規制緩和)。勝手にふえるので、周囲の大切な組織が壊れたり(注:国内での格差拡大)、本来がんのかたまりがあるはずがない組織で増殖(注:グローバル化)したりします。

 

私は、「資本」は経済活動に不可欠のものと思います。これは正常細胞です。しかし、これに「主義」が付くと、制御機構が失われ「がん化」してしまうような気がします。その結果、正常組織が摂取しようとする栄養を取ってしまい、体を衰弱させ、最後は自分も死に至るのです。まったく今の経済情勢にそっくりです。

 

よって、格差拡大を是正するためには、資本が主義化しないような制御システムを導入すればよいということではないでしょうか。「簡単に言うな!それができれば苦労はしない」という声が聞こえてきそうですが、その制御システムについて後編で考えていきたいと思います。

 

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