他地区カキ流用は違法性はないが不適切? 宮城県水産特区会社(前編)

いきなりですが「違法性はないが不適切」と聞いて思い当たることは・・・

そうです、舛添要一前東京都知事です。

政治資金流用疑惑で辞職した舛添要一前東京都知事(「AP/アフロ」より)

 

前東京都知事の舛添要一氏が政治資金の使途『クレヨンしんちゃん』などで厳しい追及を受けた際、舛添氏の言うところの「第三者」の調査結果で、弁護士が連発した言葉が「違法性はないが不適切」でした。その狙いは「違法性がなければ、罪には問えないですよね?」であり、これで幕引きしようとしたのが舛添氏のシナリオだったとのこと。でも「そうは問屋(都民)が卸さなかった」ので、辞任に追い込まれました。

 

 ところが、最近またこの言葉を聞くことになりました。そうです。平成29年3月17日付け「河北新報」 http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201703/20170317_13026.htmlにて世の明るみに出た宮城県水産特区の「桃浦かき生産者合同会社」(以下「特区会社」)の他地区カキ流用問題についての村井嘉浩宮城県知事の記者会見での発言です。それでは、「違法性はない」が何回出てきたのか数えてみましょう

         (宮城県庁HPより転載)

 

 

(以下県庁HPより要約抜粋)

宮城県知事記者会見(平成29年3月21日)

■村井知事

(3月)17日の報道を拝見しまして、直ちに県の農林水産部と環境生活部、保健所の職員も含めまして6名で現地に赴き、桃浦(かき生産者)合同会社で事実確認を行いました。その結果、去年の10月から現在までの今年度分につきましては、法律に違反するような事項は確認されておりません

■村井知事

(略)もし荻浜湾以外のものが含まれていて、そしてそれを荻浜湾で採取されたということを書き、表面に桃浦のカキという表示をされて売っていたのならば、これは法令違反になりますので、しっかりと厳しく対応することになるだろうと思います。

■村井知事

われわれは行政ですのでやはり事実関係をしっかりと確認した上で、法令に違反しているのかどうかということを前提に、しっかりとしたチェックをして、もし問題があるならば厳しく対応する。(以下略)

■村井知事

(略)民間の企業でございまして、桃浦のカキというのはブランド名で、そのブランド名を使ってきちんと表示されて、それをそのような形で販売していたということが法令違反なのかどうかというのは、チェックさせていただきたいと思っております。

◆Q

法令違反ではないとしても、(略)そもそも特区制度の趣旨に今回の一連のことは外れていると思うが、いかがか。

■村井知事

(略)桃浦の合同会社は一民間企業でございますから、他の地区のものを、宮城県産のものを仕入れて、宮城県産として加工用として桃浦のブランドのカキと分けて出荷していたとするならば、これは法令違反にはならないのではないかと思っています。これは今年度も行われているようでありますけれども、今年度の分については法令違反には当たらないだろうと判断したということでございます。

◆Q

法令違反でないとしても、今回のことを知事はどのように受け止めているか。

■村井知事

現在まだ調査中でして、今年度分については法令違反ではないということですが、過去の年については分かりません。(以下略)

 

宮城県知事記者会見(平成29年3月27日)

◆Q

先ほど問題がある、問題がないと言っていたが、知事自身、問題がある、問題がないという基準をどのように考えているのか、改めて伺う。

■村井知事

私は法令上、法令違反があったのかないのかという、それ1点に尽きます。

◆Q

それさえクリアしていれば問題がないということか。

■村井知事

はい、行政としては問題ないということになると思います。

 

宮城県知事記者会見(平成29年4月10日)

◆Q

 先週調査結果が出て、(略)法令違反はないという調査結果だったが、知事の所感をあらためて伺う。

■村井知事

 3月17日の報道を受けまして、県として桃浦かき生産合同会社に赴くなどいたしまして事実関係の確認を進めてまいりました。その結果、法律に違反する事実は認められませんでした。(以下略)

 

 

以上ざっと10回「違法性はない」という趣旨の発言が出てきました。まさに、村井知事の会見では、舛添さんと同じく「違法でなければ問題ないですよね」というシナリオが丸見えだったと言えましょう。

 

さすがに、調査結果について記者会見を行った県庁の幹部は「法的違反は確認できないと説明した一方、産地ブランドに対する意識の欠如を指摘」(平成29年4月5日付け河北新報)として、「不適切」を付け加えたようです。

 

たしかに、今も舛添さんが逮捕されたというニュースは聞いていません。ではなぜ「違法性はないが不適切」でも舛添さんは辞めざるを得なかったのでしょうか

 

<違法性はないが不適切で済む問題ではないこと>

 

このことを、平成28年6月17日付けビジネスジャーナルに、公認会計士・ブライドワンズコンサルタント代表の金子智朗氏の「残念な人」舛添都知事が連発した「違法性はないが不適切」、「その深い意味とは」? という記事がネットに掲載されていました。

そこで、金子氏は以下のように言っています。

         適法性と適正性の違い

 

 適法性とは、法令等のルールに対する準拠性をいう。これは主に法律の世界の話である。専門家の領域としては、主に弁護士が専門とする分野といえる。

たとえば、人を殺すと罰せられるのは、刑法に「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」と定められているからだ。また、会社の役員が株主代表訴訟により多額の損害賠償責任を負うことがあるのは、会社法に「役員等は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と定められているからだ。

それに対して適正性は、実態を伴っているかを問題にする。場合によっては、妥当性というある種の価値判断が入ることもある。適法性がルールに照らした形式的判断であるのに対し、適正性は実質的判断といってもよい。

会計が主として問題にするのは、こちらのほうである。たとえば、公認会計士が会計監査で問題にするのは、決算書という会計情報が企業の実態をちゃんと映し出しているかどうかということだ。したがって、適法であっても適正でないことはいくらでもあり得る。というより、会計監査では適法性が問題になることはあまりない。問題になるのはほとんどが適正性だ。

たとえば、東芝は期末近くに協力会社に大量に販売したものを翌期に買い戻すことによって多額の利益を計上していたことが不適切とされたわけだが、そこで問題視されたのは、恒常的に協力会社から買い戻していたという事実である。買い戻しが恒常的だったということは当初から買い戻すことが予定されていたはずで、そうであるならばそこには販売の実態はなかったということになる。東芝の場合、明確な会計基準違反があったわけではないので、違法とはいえない。だから、東芝の件は「不適切会計」とはいわれても「違法会計」とはいわれないのである。

 

つまり、この世は「違法性がなければ済む」という社会ではないということ。そこには実態が伴われているかという妥当性に係る実質的判断をもとにした「適正性」が併せて備わっていなければならないということだと思います。

 

ましてや、今回の不祥事は、その辺にいくらでもあるカキ出荷業者の一つがたまたま起こしたことではありません。村井知事は、記者会見で執拗に「一民間企業」と強調していましたが、その特区会社とは

 

・震災からの復興に苦しむ漁民の猛反対を押し切ってまで強行設立された特別の会社であること。

・村井知事自身が自ら述べているように「特区でできた会社で全国から注目を浴びており、次の日本の水産業のモデルとなる」特別の会社であること。

・5億円という多額の税金が投入された特別の会社であること。

 

などから、「適法性」は言わずもがな「適正性」においても、厳しくその責任が追及されなければならない「特別の会社」と言わざるを得ません。

 

このまま、村井知事が「私は法令上、法令違反があったのかないのかという、それ1点に尽きます」などと責任逃れをしようとするなら、宮城県漁業者と特区会社との軋轢・対立は一層深まり、消費者に与えた不信感はぬぐえず、まして多額の県費を投入した宮城県民の県政への信頼を回復できないことは明らかであると考えられます。

 

また、特区会社については、ここで抜本的出直しを図らない限り「桃浦カキ」というブランドが「違法性はないが不適切なカキ」=「ますぞえカキ」と揶揄されかねないことを本気で心配します。そうなれば、特区会社の近い将来には「〇〇」の2文字が待ち構えているでしょう。これは村井知事にも一生ついて回る汚点となるでしょう。

 

それでは、特区会社のどこが不適切なのか次回後編で具体的に指摘したいと思います。

 

 

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