他地区カキ流用は違法性はないが不適切? 宮城県水産特区会社(後編)

 今回の特区会社による他地区カキ流用問題について、いろいろな不適切さがあげられています。その中にはほとんど真っ黒で「違法」に限りなく近い「不適切」も含まれていると思います。そこで、限られた資料と情報からですが、私が考えてこれは不適切と思わざるを得ない点を以下に指摘しておきたいと思います。

 

1 復興推進計画(地域と事業内容)に反する行為ではないか

 

特区会社の行う事業範囲を規定する原点は、東日本大震災復興特別区域法(以下「特区法」)第十四条で、

当該事業を行うことを通じて当該地元地区の復興の円滑かつ迅速な推進を図るのにふさわしい者に特定区画漁業権の内容たる区画漁業(同法第六条第四項 に規定する区画漁業をいう。)の免許をする

 

とあり、その当該事業の内容は「復興推進計画」(以下「計画」)において定められ、内閣総理大臣の認定を受けることとなっています。では、その認定を受けた計画において何が定められているのでしょうか。特に他地区(侍浜)カキ流用が、認定計画の内容と整合性が取れているのかどうかの観点から疑問点をあげます

 

(1)地区の縛りにおいて侍浜は除外されている

復興推進計画の区域

(1)特定区画漁業権免許事業に係る区域

宮城県石巻市桃浦地区

(2)区域の現状

石巻市桃浦地区は,カキ養殖が盛んであり,震災前は年間約200トン,約257百万円の水揚げ(H22年)があった。カキ養殖は,震災前160名いた地域住民のうち約60名のカキ剥き作業の雇用を生み出すなど,地域の経済活動の中心となっていた。

 

不祥事発覚後、県庁は「桃浦カキ」というブランドは、荻浜湾という侍浜も含む大きな海域内で生産されたカキであれば使用しても問題ないとしているようです。しかし、特区の認定を受けたカキ養殖の漁場は、「桃浦」という漁業集落の漁業者が占有していた漁場であり、海面上では隣接していない「侍浜」の組合員が利用していた地先漁場(隣の隣)とは別物です。

それどころか、旧来からの「桃浦」の地先にあるカキ漁場すべてが特区認定されたわけではありません。「桃浦」には、特区会社に参加しなかったカキ養殖を営む地元漁業者もおり、「桃浦」の地先のカキ漁場は二分(漁業者らも分断)されてしまっています。

つまり、特区認定の漁場は、あくまで、もともとの「桃浦」の地先のカキ漁場のうち、特区会社に参加しない地元漁業者が使わないとした漁場のようです。

 

 

(2)事業内容において他地域カキの流用はあり得ない

2 復興推進計画の目標

(1)目標

民間企業の技術・ノウハウ等を活かし,カキ養殖生産から加工・販売まで一貫した取組を行うために設立された桃浦かき生産者合同会社(以下「桃浦LLC」という。)による6次産業化等の取組を通じ,(以下略)

             計画に添付された資料(別添2)

         桃浦かき生産者合同会社の概要

1 法人概要

石巻市桃浦地区(県漁協石巻地区支所管内)の15人の漁業者が、カキ養殖生産から加工販売までの一貫した取り組みを行い、沿岸養殖業における6次産業化と(以下略)

(佐藤注)当資料の(2)売上計画(5年間分の数量・金額)においても、震災前の生産量(平成22年度)をもとに将来の売上目標を立てており、他地区カキの流用はどこにも示されていない。 

 

100人がこの計画書を読んで100人とも他地区のカキを流用することが「カキ養殖生産から加工・販売まで一貫した取組」に含まれるとは到底考えないでしょう。他地域のカキを使用すると生産と加工・流通が分離し、一貫していないことは誰の目にも明らかです。

 

ところが、村井知事は、平成29年3月21日の記者会見で

「その点についてもよく確認しなければいけないんですけれども、桃浦のカキ以外は使わないといったようなことを文書等で交わしたものは、今のところ私は見ておりません従って、誰がどのようにそのような約束をしたのか分かりません(以下略)」

と言いました。

 

あきれて開いた口がふさがりません。いくらなんでも村井知事さん、それはないでしょ。

「あなたが国に申請した計画書の中に明確に書いているではありませんか!」

「あなた自身がそう約束したではありませんか!」

 

この村井知事の発言は、以下にあげた事実からも社会一般の受け止め方に真っ向から反するものと言わざるを得ません。

 

〇私たちは、水産業復興特区を活用して、国が推奨する6次産業化を目指します。会社が漁業権を持ち生産・加工・販売を一体化させる新しい養殖漁業を構築して(以下略)(桃浦かき生産者合同会社HP会社案内代表社員あいさつ)

 

〇「民間の活力が入り、生産と加工販売が一体になれば、発展に寄与する」。根本匠復興相はこの日記者会見でそう話した。(平成25年4月24日付朝日新聞)

 

〇大山さんは「浜を残すには、単なる復旧ではだめ。消費者の動向を見極め、生産、加工、流通まで一貫して手掛けないといけない」と新たな船出を決意した。(平成24年9月13日付読売新聞)

 

〇県側は、生産から加工、販売を会社組織が一貫して手掛けることにより、漁業者の収入が安定化する-といった効果を期待している。(平成25年4月11日付読売新聞)

 

〇特区を適用する「桃浦かき生産者合同会社」は、(略)カキの養殖から加工・販売までを手掛ける。(平成25年4月11日付日本経済新聞)

 

〇販売まで一手に担うLLCのカキは、水揚げ翌日には店頭に並ぶので新鮮だ。漁協を通す共同販売(共販)だと、3、4日はかかる。養殖から販売まで一貫して行う「6次産業化」を民間参入で実現し、漁業の近代化を図るのが特区の狙いだ。(平成25年4月14日付毎日新聞)

 

〇漁協を通さずにヨークベニマルなど大手流通業に卸すルートを確立しつつある。東京や札幌の水産卸と連携し、桃浦産カキを仕入れてもらう。生産から加工、流通まで一体化し、経営を安定させる。(平成25年4月19日付日本経済新聞)

 

〇桃浦LLCが収益性の高い新たなビジネスモデルを作っていくためには,特区の適用により自ら漁業権を取得し、安定的な生産基盤を確保した上で,生産から加工・流通・販売における6次産業化に取り組んでいくことが必要(平成24年4月8日付け宮城県漁業協同組合からの「県当局の見解を求める事項について」への県の回答書8)

 

〇特に販売支援は当社の得意分野でございます。中間流通の立場から合同会社の6次産業化いわゆる 生産,加工,販売の一体化を強力に推進していくという覚悟でございます。(平成25年4月4日特区地域協議会議事録における仙台水産島貫会長発言)

 

 ちょっと調べただけでもこれだけありました。特区会社はその設立根拠となった復興推進計画で約束したことに反する行為を行ったことは明確です。

よって、特区会社は特区法第9条により認定の取消しとなるべきであると考えます。

 

(認定の取消し)

第九条  内閣総理大臣は、認定復興推進計画が第四条第九項各号のいずれかに適合しなくなったと認めるときは、その認定を取り消すことができる。この場合において、内閣総理大臣は、あらかじめ関係行政機関の長にその旨を通知しなければならない。

2  関係行政機関の長は、内閣総理大臣に対し、前項の規定による認定の取消しに関し必要と認める意見を申し出ることができる。

3  第四条第十一項の規定は、第一項の規定による認定復興推進計画の認定の取消しについて準用する。

 

第四条第九項各号

9  内閣総理大臣は、申請があった復興推進計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をするものとする。

一  復興特別区域基本方針に適合するものであること。

二  当該復興推進計画の実施が当該復興推進計画の区域における復興の円滑かつ迅速な推進と当該復興推進計画の区域の活力の再生に寄与するものであると認められること。

三  円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること。

 

なお、今回はじめて知ったのですが、特区会社の社員(=出資者)となった漁業者のほとんどが桃浦の集落から離れているようです。桃浦にある特区会社の社宅には数人の若い雇用者が暮らしているようですが、社員のほとんどが桃浦の集落に戻らず、住まいを構えた市街地から通っているようです。そのうえ桃浦の中で一番若かった40代の社員が特区会社を2年前に退社し普通の漁師をしているとか。今回のことも退社の要因の一つだったのでしょうか。

朝日新聞をはじめ大手新聞社が震災後一貫して「水産特区はバラ色」のように礼賛していますが、本当に桃浦集落の復興に貢献しているといえるのでしょうか。特区法第14条においては「当該地元地区の復興を図る」とあります。これではよそから通ってくる人が桃浦の漁場を使っているだけのように見えます

これが、東日本大震災復興基本法の基本理念にある「一人一人の人間が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにすることを旨として行われる復興のための施策の推進」なのでしょうか。6次産業化も結構でしょう。しかし、なによりも元のように桃浦に住めるようにすること。これこそが「豊かな人生を送ることができる」ための復興ではないかと思わざるを得ません。

 

2 だれが、他地区カキ流用を主導したのかが明らかにされていない

 

 舛添さんもそうだった。

政治資金の使途で厳しい追及を受けた際、

・喫茶店の1万8000円の領収書(初めはコーヒー代、後日サンドイッチ代に、店側は30人分の注文なら作るのに2時間かかるので覚えているはずと否定)

・書道用の中国服(書道家は、「袖に墨がつきそうで」と書きづらい服と言っていいと思うと全否定)

・クレオンしんちゃん購入(秘書や会計責任者に任せていた)

などど、明らかに嘘とわかる言い訳を並べ立てたことが、さらに墓穴を掘ることになったと思います。

 

 特区会社においても同じことが言えると思います。以下今回の不祥事に関する特区会社の説明(同社HP、新聞報道など)の中から、最大の疑問点「誰が主導したか」を考えていきたいと思います。

 

本件を最初に報道した平成29年3月17日の河北新報によれば、

・合同会社の大山勝幸代表社員は16日、「以前は需要期に自前のカキが足りなくなると、仙台水産の関係者が共同販売のカキを仕入れて出していた」と説明。「良くないことで、今シーズンはやっていない」と述べた。

・元社員も、2014年の年末に県漁協の共同販売に使われる専用のたるに入ったむき身のカキが、たびたび会社に運ばれてきたと説明。「産地が書かれたラベルをはがしてカキをたるから出して出荷していた。本来なら自分たちで養殖したカキを出荷するはずなのに、おかしいと思った」と明かした。

 

一方、同じ記事の中で

仙台水産の島貫文好会長は取材に「他地区のカキを桃浦産として出荷したことは100%あり得ないと思っている。全国的に注目される会社がブランドに傷を付けるようなことはしない」と強調

とあります。

一体どちらが嘘をついているのでしょうか。なお、この報道後に特区会社のHPに「桃浦かきをご愛顧いただいている皆様へ(平成29年4月8日)」という文書が掲載されていますが、そこには

平成27年10月になると私達自らがブランド意識を持つようになり、仙台水産(※3)の指導もあり、自社で生産したカキ以外は「桃浦かき」としないことを決定し(以下略)

とあります。

完全に仙台水産はシロで、むしろやめるように指導した側、特区会社が勝手にやったと言わんばかりです。このような説明で世間が納得すると思っているのでしょうか。私には、舛添さんの説明と同じように聞こえます。

 

もともと自営漁業者である大山勝幸代表社員が、民間企業の加工・販売に関する技術・ノウハウを活用するために経営参加した仙台水産に何の相談もせず、その子会社から他地区のカキを仕入れるなどを考え付くとは到底考えられません。

 

しかも、宮城県議会の中嶋議員によれば、特区会社の自前の加工場が完成し、本格出荷が始まった平成26年10月から12月において、すでに侍浜産カキの流用が行われ、そのために2種類の容器(採取海域が「荻浜(桃浦)」と「荻浜」の2種類)が使用されており、このことは県庁も認めたとのことです。

これは、侍浜産カキの流用が最初の段階から計画的に行われていたことを裏付けるものではないでしょうか。とすれば、

やむを得なく突発的に始めたのではなく、もともと特区会社を始めたときから注文に対して自家生産のカキ(むき身)が足りなければ、漁協共販から他地区のカキ(むき身)を買ってパッキングすれば良いという、特区制度に胡坐をかいた儲け優先主義の考え方があったのではないかと疑わざるを得ない悪質性がうかがえます。

漁協共販をさんざん批判してきていながら、共販所に出荷されてくるカキをこっそり仕入れて「桃浦カキ」として出荷するコンプライアンスの欠片もないことを一体誰が考えたのでしょうか。

 

特区会社のある従業員のブログには、自分の手を経て出荷したカキをスーパーの売り場にまで行って確認してきたときの様子が載っていました。特区会社の15個のカキマークからして、15人の社員(=会社設立のために出資した漁業者)にも自分たちで作ったカキを出荷するんだという強い自負心があったと思います。今回のことに社員は「裏切られた」という感情を抱いていると思います。

 

私は、自分さえ儲かればよいという水産特区制度には大反対です。しかし、特区会社で働く一人一人の漁業者まで批判することはしたくありません。悪名高き「ショックドクトリン」の日本版である水産特区制度を主導した規制改革会議・内閣府とそれに乗っかった村井知事、そうしてもう一人「他地区カキの流用を指示した儲け優先主義者」だけは許せません。

 

大山勝幸代表社員は、本当に責任をとって辞めなければならなかったのでしょうか。だからどうしても「他地区カキ流用」を指示した人間を突き止めるべきだと思います。

 

宮城県庁職員よ! 圧力に屈せずしっかり調べて真相を明らかにせよ!

 

 

 

 

 

 

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