水産政策改革案に物申す(その①)-言語道断! 愚の骨頂!-

平成30年5月24日に開催された自民党の水産部会・水産総合調査会合同会議に、水産庁から「水産政策の改革について(案)」が提出されました。それは驚くべき内容でした。JA改革の時もそうでしたから、漁業の解体を狙ったビーンボール(頭を狙ったデットボール)のようなひどいものが出てくるのではないかと思っていましたが、やはりその通りとなりました。

 

水産庁の改革案には、WGでもほとんど議論されていないものまで書き加えられていました。結論が先にあり、議論を踏まえ積み上げたものではないことが明らかです。特に漁業権の優先順位の廃止は、地元漁業者から漁場を取り上げその生活基盤を崩壊させることにほかならず、「言語道断」としかいえません。もし、これが表舞台で議論されていたなら、既に浜は大騒ぎになっていたことは間違いありません。

 

さらに、漁業現場も個々の漁業者も知らない国の役人が機械的に分割したIQの強制は、もともと自主管理ができない遅れた外国漁業ゆえに必要な制度であり、それをいまさら日本に導入しようとするのは「愚の骨頂」ともいうべきものです。いずれも、「成長産業化」というきれいごとでまぶしてはいますが、漁業団体や漁業者から海と資源を取り上げ企業に渡すという、これまでの規制改革において行われてきた強者が弱者から富を蝟集する施策と同様に、企業優先の一方的改革案が打ち出されたものと思われます。

 

官邸・規制改革からの命令とあれば、その意のままに違法行為もいとわないのが現在の中央省庁です。裁量労働制や加計学園などの規制改革を巡る「嘘、改ざん、隠ぺい」は目を覆うばかりです。岩盤規制改革と一見ご立派な理屈は言ってきましたが、その実はお友達や規制改革委員が役員を務める会社への利益誘導にすぎないものでありました。今回の改革も随所に行政の恣意的な運用を可能とする制度改革がふんだんに盛り込まれています

 

現政権が推進してきた規制改革の本質がついに国民の前に露わになった今、漁業の根本をひっくり返すような政策を打ち出す資格は現政権に全くないと思います。やるとすれば、ぜひ国民の信頼が得られた次期政権で仕切り直すべきであると思います。

 

しかも、おかしなことに、今現在においても当事者である現場の漁業者は、この改革案を全く知らされていません。伝聞ですが中央漁業団体の代表は「水産改革は苦渋の決断だが、これが漁業者にとってよい改革であると堅く信じる」とこれを容認するがごとくの発言をしたといいます。先祖代々引き継がれてきた目の前の漁場や資源が企業に取り上げられ生きる糧を失い、その地を離れなければならなくなるというというのに、現場の漁業者には改革案に対する意見を言う機会すら与えられていないのです。

 

こんなバカな話はありません。現場に身を置き漁協役員としての立場にある私には、この改革案を阻止しなければならないという責務があります。ということで、改革案に対するとりあえずの私の見解を以下に列記します。

 

<改革案の検証における視点>

 

 各論に入るまずその前に、既に何度もこのブログでふれてきたことですが、政策論においては、

A:前提となる事実認識とその評価視点

B:現状を規定する様々な要因の分析

C:政策手段などによるその操作可能性、それに伴う社会的リフレクションとその評価

D:政策選択の制約条件

の4点の視点が必要と指摘(佐竹五郎:元水産庁長官)されています。

 

この点から規制改革における政策論には、重大な欠陥があります。それは、到底公平な基準で選出されたとは言えない偏った委員、専門員の会議構成により、始めから隠された結論が先にあり、それに合うような現状認識を作り上げ、そしてその結論に誘導していくことです。また、その結論がいかなる社会的リフレクションを引き起こすのかも全く議論しない。これは民主主義下における専制政治そのもののです。

 

そこで、改革案に対し反対を唱える前に、これを作成した水産庁に対し、上に掲げた4つの視点から政策の一つづつに質問をして、確認していく作業が必要となります。そうすれば、その回答次第で、その政策がおのずと正しいのか誤りであるのかが客観的に明白になってくるからです。

 

例えば、JA改革では「中央会は単位農協の自由な活動を阻んでいる」という現状認識でありましたが、日本農業新聞のアンケートでは95%の農協組合長が「そう思わない」と答えており、規制改革での議論は現場の認識とは正反対の中で行われていました。仮に、この現場の認識がその議論の場に正しく反映されていたなら、誰の目にもその改革は誤りであることが明白になったということです。

 

このようなことは水産政策の改革でも既に起こっています。では、その質問事項を以下に掲げて行きたいと思います。

 

1 水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化の両立について

(質問1―1)

水産資源は、漁獲の有無にかかわらず大きく変動するという特性がある。とりわけ浮き魚を中心とする我が国周辺資源には、その傾向が大きい。ではこのような資源をどのような手法をもって管理すれば、その変動を抑制し、資源を増やすことができるかという、例えば10年後を見据えた資源動向について具体的見通しを示していただきたい。

(質問1-2)

「成長産業化」の定義を明確にしていただきたい。また、いかなる状況になれば我が国水産業が「成長産業化した」と判断できるのかその基準(漁業者数、一人当たり漁獲金額など)を示されたい。例えば、零細漁業者を減らし一部の大規模漁業者の所得が向上することも「成長産業化」したという定義に当てはまるのかどうか。

(質問1―3)

より適切な資源管理のためには、一般的に漁獲量の削減がよく用いられる手法であるが、当然それに伴い漁獲金額も減少するにもかかわらず、それが漁業の成長産業化と両立するというのはどうしてか。資源管理による「安定産業化」又は「永続産業化」ではなく、あえて「成長産業化」とした理由を示されたい。

 

2 資源管理目標の設定方式の変更について

(質問2-1)

MSY理論は、対象資源において一定の親子関係(再生産関係)と密度効果がみられる場合に成り立つ理論とされているが、我が国周辺主要資源について、親子関係があると立証された資源とそうでない資源をその証拠とともに示されたい。また、これまでの資源変動においてMSY曲線に沿った変動をした資源とそうでない資源をその証拠とともに示されたい。

(質問2-2)

太平洋クロマグロは、現在の産卵親魚量がここ60年間で最低の水準に近いにもかかわらず、加入量が急激に増大し漁業現場に大混乱を起こしている理由を、MSY理論に基づき科学的に説明されたい。

(質問2-3)

2017年に大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)が大西洋クロマグロに対して, 神戸チャートを使うことを取りやめた科学的理由をMSY理論に基づき科学的に説明されたい。

(質問2-4)

WCPFCのメバチの資源評価が「乱獲状態にある」といって漁獲強化を主張していたにもかかわらず、短期間で「資源は健全である」と全く正反対のことを主張するようになった理由をMSY理論に基づき科学的に説明されたい。(この質問は6月9日に一部修正)

(質問2-5)

Bban(過去の資源低水準期における推定最低資源量)又はBlimit(これ未満の親魚量だと、良好な 加入量があまり期待できなくなる資源量)を指標とする現行の資源管理方式は、我が国周辺資源の親子関係が確認されず、むしろ環境変動に大きく影響されるゆえの、現実的対応であると理解される。それにもかかわらずなぜMSYの概念をベースにする方式に変更できるようになったのか、その科学的根拠を明確にされたい。

(質問2-6)

一定の親子関係が見られない資源に、あえてMSYベースの管理方法を適用した場合、資源量と漁獲量の変動はどのようになるかを計算し、従来の方法と比較した結果を魚種ごとに示されたい。(この質問は6月11日に修正)

3 TAC対象魚種の拡大について

(質問3-1)

TACはMSY理論をもとに算出されたABCを基準に定められるが、そのためには一定の親子関係が認められる必要がある。よって、想定しているTAC拡大対象資源についてその親子関係がどのような状況にあるのか具体的に証拠で示されたい

(質問3-2)

TACの対象でありながら、資源が減少している魚種が多くみられるが、その理由を科学的根拠をもとに説明されたい。

(質問3-3)

 TAC対象魚種でないにもかかわらず、良好な状態にある資源は何魚種あるのか示されたい。また、なぜTACの対象でないにもかかわらず資源が良好なのか、科学的根拠をもとにその理由を示されたい。

(質問3-4)

 インプット・コントロール、テクニカル・コントロールのみで、TACの対象でなかったゆえに、資源の悪化につながったことが明らかな魚種があれば、具体的に科学的根拠をもとに示されたい。

 

4 IQの導入について

(質問4-1)

IQを導入すると、漁業者は漁獲変動の激しい漁業実態の中で、その順守のために操業が制限されたり、漁業者間の過不足調整のために余計な事務作業が生じてくるが、それに見合う何か良いことが漁業者に起きるのか、期待しているIQの効果を、抽象論ではなく具体的TAC対象の漁業と魚種を事例にあげ説明されたい。

(質問4-2)

資源管理上、TACの上限が守られればIQがなくとも何ら資源管理効果に差はないが、それで間違いないか。だとすれば、なぜあえてIQを導入しないとならないのか、その理由を資源管理の側面から説明されたい。

(質問4-3)

IQは、先獲り競争の抑制につながるといわれているが、先獲り競争の定義を示されたい。

(質問4-4)

その定義に基づき、現在先獲り競争下にある漁業、漁場、漁期、魚種について、具体的事例を挙げて説明されたい。また、それに該当する漁獲量は全体のどの程度の比率を占めるのか示されたい。

(質問4-5)

IQは、計画的操業などに寄与するというが、それは我が国漁業の特性である同じ資源を漁獲する漁業者による集団的操業下でのインプット・コントロール、テクニカル・コントロールの手法を用いた自主的管理方式でその計画的操業が行われているにもかかわらず、そのような管理手法によらず、IQを導入しなければならない理由がどこにあるのか、具体的に漁業、漁場、漁期、魚種などの資源管理の事例をあげて説明されたい。(なお、新潟で行われたホッコク赤エビへの試験的IQ導入の実施結果をその報告書で見ると、その成果は籠の目合い拡大、漁期の見直し、搭載漁具の数に関する自主取り決めですべて対応できることであり、まったくIQによらずとも達成できる、逆に言えばIQのみでは達成できなかったことが証明されている。)

(質問4-6)

IQの管理にはTACと比較にならないほどの多大の人員と経費を要するが、改革案では「TAC対象としたすべての魚種」について導入するとしており、その水揚げ漁港数、水揚げ漁船隻数、水揚げ回数はどの程度になるかを、魚種ごとに説明されたい。なお、その監視に必要なカバー率、人員(人日)、それに要する経費はどの程度になるか示されたい。

(質問4-7)

IQの監視に要する経費の財源的確保の見通しはどうなっているのか。水産庁の既存予算を削減しその経費に充てるのか。またその経費に見合う効果(ベネフィット)はどのように試算しているのか。その場合の費用対効果(B/C)はどの程度になるかを示されたい。

(質問4-8)

IQの導入において、国が許可者ごとの実績等を考慮して、機械的に漁船別に%によって配分するとなっている(以下「強制IQ」という)が、これまでIQの試験的実施を行ってきた北部太平洋巻き網漁業の事例では、団体内における自主的な配分・融通で円滑なIQの運用管理ができている。そのことを水産庁はどう評価しているのか。また、その団体から強制IQにしてほしいとの要請があったのか。なかったとすれば、この団体管理による自主的IQ管理の良好な結果を無視し、なぜ強制IQ導入につながるのか理解に苦しむところ、その理由を説明されたい。

(質問4-9)

強制IQの導入につきTAC対象漁業の団体又は漁業者の意見は聞いたのか。その導入を希望した漁業団体があればそれを明らかにされたい。団体等の意向を聞いてないとすれば、なぜ聞かないままに、一方的にIQ導入の方針を打ち出したのか。その理由を示されたい。外国ではIQの導入には対象漁業者の同意を必要とする例もあると聞くが、例えば2/3以上の同意を必要とすることを水産庁は考えているのかいないのか。いないとすれば、なぜか。

(質問4-10)

1年間の割り当てを事前に一括配分する強制IQによって、当然漁況・海況の変動により漁船ごとの過不足が生じるが、仮に北部太平洋巻き網漁業での試験的実施において、それを実施していた場合は、年間何回くらいの漁船間の融通のための付け替え申請手続きの回数及びそれに要した労働時間が必要となったか試算値を示されたい。

(質問4-11)

漁業者間のIQの融通は、団体内で自主的に円滑にできるのに、その融通にさえわざわざ国による許可を必要とした理由を示されたい。その不要な許可に係る事務手続きに要する時間により、漁船の操業が制限された場合の経済的損失は国が補償するのかどうか、考え方を示されたい。なお、その当事者間で合意があるにもかかわらずそれを国が許可しない場合の判断基準を具体的に示されたい

(質問4-12)

強制IQは、コモンズの管理における第2の道(公的管理)であるが、ノーベル経済学賞を授与されたオストロム教授は、第3の道(利害関係者による自主的管理)が効果的としている。また、世界的な資源学者であるヒルボーン教授もこれに賛同している。にもかかわらず、あえてこの基本セオリーに逆らうかのような第2の道を政策として選択しようとする理由を示されたい

(質問4-13)

これまでの規制改革の基本理念の一つに「官から民へ(民間でできることは、その権限を官から民に移行させよ)」があったが、その方針転換があったのかどうか示されたい。方針転換がなかったということであれば、その規制改革の基本理念に反することをなぜ今回行おうとするのか、またこの「民から官へ」の逆行を規制改革推進会議が認めたとすれば、その理由はなにかについて示されたい。

(質問4-14)

強制IQを打ち出した背景として、IQを自由に売買しそこで投機的な利益を得ようとするITQ制度(コモンズの管理の第1の道)への移行を望む規制改革派からみると、漁業団体内での円滑なIQの融通(第3の道)が定着しては困るので、その機能を団体から奪い、国による硬直的な配分・融通IQ(第2の道)にさせ、やむなく漁業者がそれよりもましな市場取引(第1の道)に向かわせようとする目論ではないかと強く疑われるが、水産庁はこの疑念を払拭できるとすればその理由を示されたい。

(質問4-15)

改革案には「IQだけでは、資源管理の実効性が十分確保できない場合は、操業期間や体長制限の資源管理措置を適切に組み合わせる」とあるが、これはIQだけで資源管理の実効性が確保でき、操業期間や体長制限の資源管理措置はあくまで補助的なものと水産庁が位置づけていることを強くうかがわせるものである。ついては、そのようなIQだけで資源管理ができるという「IQ万能論」が可能な魚種、漁業種類、漁場を具体的事例をあげて示されたい。

 

5 漁業者の所得向上に資する流通構造の改革について

(質問5-1)

 輸出拡大を視野に入れた政策の第一に掲げているが、政府が掲げる水産物輸出目標額に達しても国内生産額の約1/5であり、またその額は輸入水産物金額の約1/6にしかならない。よって、むしろ流通構造改革の目的は、輸入水産物から我が国国内市場を奪還することに重要とおくべきと思われるが、その政策が打ち出されていない理由は何か

(質問5-2) 

これまでの我が国の水産政策の基本理念であった「国民への水産物の安定供給」にかかる記述が全く見られないが、自国民への食糧安定供給の責務を放棄したのか。ノルウエーやNZのように輸出に係る漁業関係者及び外国人のための流通構造への転換を意味するのか

(質問5-3)

 産地市場の統合や水揚げ漁港の集約化は、小型の漁船で地先を主な操業の場とする沿岸漁業者には、そことの往復に係る時間から逆に漁業そのものを衰退させかねないという側面もあるが、この点の対応をどうするのかを説明されたい。

 

6 生産性の向上に資する漁業許可の見直しについて

(質問6-1)

 「IQの導入などの条件が整った漁業種類については、インプット・コントロール等に関する規制を抜本的に見直し、トン数規制など漁船の大型化を阻害する規制を撤廃する」としているが、IQが導入されたらなぜ漁獲能力を向上させる大型化が認められるのかの理由を示されたい。

(質問6-2)

 IQに期待される資源管理および計画的操業への効果は、集団的操業による相互監視のもとでTACを守り、先獲り競争の防止や計画的操業を行う自主的管理漁業者集団に参加する漁業者においても、同じ効果が得られる。とすれば、当然にこれらの者にも同じように大型化への規制撤廃が認められると解釈してよいか。そうではなく、IQ導入の漁船のみを対象とするなら、極めて不公平な扱いになるが、IQ参加者のみを優遇する理由は何か。IQ導入のための差別的・意図的な利益誘導と理解してよいか。

(質問6-3)

 我が国の漁業において、周年同一魚種のみを漁獲する漁業は極めてまれであり、巻き網漁業や沖底漁業を見ても、ほとんどの漁業においては多種類の魚種を漁獲している実態にある。また専獲性の高いサンマ棒受け漁業においても、その漁期以外においては種々の魚種を漁獲している状況にある。漁獲対象のうちの一つである魚種にIQが導入されれば、その漁船は大型化を認められることになるが、これにより他の魚種に対する漁獲圧を高めることになるのは必至である。(遠洋漁業は別にして)現状でもまき網漁業や沖底漁業などの沖合漁業と沿岸漁業と間での紛争は絶えないが、その沖合漁業漁船が大型化するとなると全国各地で漁業紛争をさらに激化させる大問題となることは避けられない。よって、他の魚種に対する漁獲圧が高まることをどのように防止するのか、具体的な方策を説明されたい。

(質問6-4)

IQが順守されているかどうかは、各種資源管理措置のうちでも最もその監視が困難なものであり、そのIQが資源の減少に伴い厳しいレベルに設定された場合には、TACにとどめていた場合に比較し、遥かに違反が生じる可能性が高まることが容易に予想される。漁業者が望んだわけでもないIQを国が強制しようとするなら、当然国の責任においてそれに必要な人員と予算を確保する必要があるが、どのような有効な対策を講じることができるのか説明されたい。なお、罰則の強化では、かつての北洋漁業においてみられたように「あの船は運が悪かっただけ」で抑止効果にならなかったが、今後はそれが有効であるとするならば、その理由を説明されたい。

(質問6-5)

「資源管理を適切に行わない漁業者」に対し改善勧告・許可の取消しを行うとしているが、これは現行制度でも規則に違反したものに対する措置としてあるが、それとどう違うのか。

適切かどうかの判断基準に何を定めるのか具体的条件などについて説明されたい。

(質問6-6)

「生産性が著しく低い漁業者」に対し改善勧告・許可の取消しを行うとしているが、「生産性が著しく低い漁業者」かどうかの判断基準に何を定めるのか具体的条件などについて説明されたい。

(質問6-7)

生産性が低くても経営を持続させ地域の雇用を支えている漁業者が現場では多くみられるが、その漁業者を減らしその地域をさらに衰退させることになる許可の取消しはどのような考え方がもとになっているのか説明されたい。例えば、レイ・ヒルボーン教授が、2011年に科学雑誌「ネイチャー」で漁業の目的を「食糧供給」「雇用」「利益」「地域共同体」「生態系・環境」の5つに区分したが、生産性の低い漁業者の生活の糧を奪ってもよいとするのは、日本における漁業の目的をNZのように「利益」に置き、地域の「雇用」など考慮しない方向に転換しようとするのが今回の改革の目的と理解してよいか。なお、地方創生という国の政策と「生産性が著しく低い漁業者に対する許可の取消し」との整合性についても説明されたい。

 

7 養殖・沿岸漁業の発展に資する海面利用制度の見直し

(質問7-1)

平成12年の地方分権改革以降、養殖・沿岸漁業の管理は自治事務になり「個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図るために、地域が地域社会の諸条件によりよく適合したものになるようその事務を行う」となった。今回の改革案は、地方分権の方向性をより促進するものか、それとも国の関与を再び強化し、その流れに逆行するものか、説明されたい。

(質問7-2)

自治事務化した養殖・沿岸漁業に関する改革案は、当然その管理主体である都道府県が発議すべきものであるが、いかなる改革案が都道府県から出てきたのか説明されたい。

(質問7-3)

改革案の作成に当たり、当然ながら都道府県にアンケートなどで意見を聞いたと思われるが、その内容がどう改革案に結び付いたのか説明されたい。

(質問7-4)

仮に、管理主体からの発議もなく、その意見も聞かず、水産庁がこの改革案を打ち出すことになったのであれば、そもそもだれの要請に基づきこのテーマを検討することになったのか説明されたい。

(質問7-5)

改革案では、「我が国水域を有効かつ効率的に活用できる仕組みとするため」としているが、有効かつ効率的に活用できているかどうかの判断基準を示されたい。特に、我が国の養殖・沿岸漁業がもつ機能を「食糧供給」「雇用」「利益」「地域共同体」「生態系・環境」の5つの漁業目的に照らし、なにに重点をおいて判断基準を作成するのかについて説明されたい。

(質問7-6)

養殖業への企業参入を促進させようとする改革案は、「食糧供給」「雇用」「利益」「地域共同体」「生態系・環境」のどの機能を向上させようとするものか説明されたい。また、既に企業の養殖魚への参入事例は多くあるが、その結果どの機能がどう向上したか又は向上しなかったのか、むしろ後退したのかなど具体的事例を挙げて説明されたい。例えば、宮城県水産特区に参入した企業の5年間にわたる成果が、これらにどう貢献したのかを周辺地元経営体と比較し明らかにされたい。

(質問7-7)

「可能な場合は、養殖のための新たな区画を設定することが適当と考えられる」としているが、これこそ管理主体が「地域社会の諸条件によりよく適合したものかどうか」で独自に判断すべきものである。にもかかわらず、区画漁業権を新設せよというような一方的な考え方を国が押し付けようとする理由及びそのようなことが地方分権に照らし適切なことかどうかについて改革案の考え方について説明されたい。

(質問7-8)

・「沖合等に養殖のための新たな区画を設定することが適当と考えられる場合は、国が都道府県に指示等を行う」としているが、「沖合等」の定義を明確にされたい。

・仮に、領海外であれば、国における沖合漁礁の直轄事業の事例もあるので、例えば「指定養殖許可漁業」として漁業権制度によらず、国が直接許可を与えればよいのではないか。水産庁の見解を示されたい。

・仮に、領海内であるとすれば、地元都道府県の自治事務に関することなので、都道府県の範囲を超えより広域的に処理すべき事項に限定された国の指示権限を逸脱する違法な「指示」となるのではないか。水産庁の見解を示されたい。

(質問7-9)

「区画漁業権に対して、個別漁業者に付与する」「ただし、区画漁業権については、当該区画を利用する個別漁業者が、その個別漁業者で構成する団体に付与することを要望する場合には、漁業者団体(漁協)に付与する」は、我が国の沿岸域の養殖業の秩序を支えてきた漁業者による自主管理(漁協管理漁業権)を根底から否定するものであるが、このような重大な判断が、いつどこでどのような者によって議論された結果なのか、その詳細を明らかにされたい。

(質問7-10)

その際、現行の組合管理区画漁業権について、どのような評価が行われたのか明らかにされたい。特にこの制度の社会的・経済的側面からの有効性又は不適切性を明らかにされたい。

(質問7-11)

この改革案によって引き起こされる、地域社会における社会的・経済的なリフレクションをどう評価したのか明らかにされたい。また、戦前における明治漁業法の下で個別経営者免許制度が引き起こした深刻な社会的・経済的問題が再び生じることも十分予想されるが、そのことをどう評価したのかも明らかにされたい。

 

以下続く

 

 

 

 

 

 

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