水産政策改革案に物申す(その③) -言語道断! 愚の骨頂!-

9 団体漁業権の主体や漁場管理の実施者としての位置付けについて

 (質問9-1)

「①漁協の事業として(公的)漁場管理業務を行えることを法定する。」とあるが、一般的に言われる法律機能の命令、禁止、授権のうち、この業務を法定することはどの機能に該当するのか。

(質問9-2)

これら活動は、漁業者が生産の場である海の環境や漁業秩序を守るためにあくまで自発的(ボランティア的に)に行ってきたものであるが、それをいまさら法定化するということは、これは本来個々人として行うべきで、漁協を活動主体としてやってはいけなかったということか。

(質問9-3)

仮に、公的漁場管理が水産業協同組合法第11条(事業の種類)において法定化されるということになれば、一般国民から見れば新たな責務(決して権利ではない)が漁協に追加されたとして受け止められ、今後、海の環境汚染問題などが発生すると「なぜ漁協は法律で定められた藻場の保全活動、赤潮監視、油濁汚染の除去の活動を怠ったのか」と批判されかねないことになる。自主的に行ってきた社会的奉仕活動を法定化することは、一見漁協にとって良いことのように見えるが、むしろ漁協にとってデメリットになりかねない恐れが強いともいえる。水産庁の見解をお聞きしたい。(例えば、自発的に路上のごみ拾いをしていた人の住む家の玄関に市役所の余計なおせっかいで「ごみ拾いの家」と書かれるようなもの。事情を知らない人が、路上にごみがあると「なぜ拾わないのか」とその看板を見て文句を言いに来るかも)

(質問9-4)

「藻場・干潟の保全」「密漁や赤潮の監視」「油濁汚染の除去」の原因をたどれば、その地域の漁業者がそれを引き起こしたというよりも、その多くは陸域の他産業や外部の者が原因者であることがほとんど。よって、これらの管理活動は、その原因者が一義的に責任を負うべきものであると考えられ、まずは陸上の工場などの汚染原因者において「公的漁場管理」の責務が法定化されるべきなのに、なぜ被害者の立場である漁協が先に法定化しなければならないのかの理由を説明されたい。

(質問9-5)

今回の改革案では、漁協にとって区画漁業権管理業務が廃止されると同時に、新たに公的漁場管理業務が法定化されることになった。つまり、漁協にとって身近な業務である組合管理区画漁業権に対する管理能力がないと水産庁は認定したのに、どうして漁協の業務でなかったより公共性の高い公的漁場管理業務を新たに担う能力が漁協にあると認定したかである。これは完全な自己矛盾であると思うが、水産庁の見解を伺いたい。

 

(質問9-6)

「(漁協が)団体漁業権の主体や(公的)漁場管理に要する費用の一部を漁業者から徴収する場合には、漁業権行使規則、漁場管理規程を定め、都道府県の認可を受けることとする。」とあるが、今回の改革で漁協は区画漁業権の管理権限をはく奪されており、かつ水協法第11条(事業の種類)に(公的)漁場管理が追加されたとしても、もともとその事業の選択は任意で義務ではないので、組合定款の事業の種類において記載せず、(公的)漁場管理に係る業務に関し都道府県からの委任依頼があったとしても漁協はそれを拒否できると理解してよいか

(質問9-7)

漁協が、組合管理区画漁業権を消滅させられたことを理由に、(公的)漁場管理を行わないときには、当然ながら知事から直接免許を受けた個別免許漁業者がその義務を負うことになるが、それはどの法律でどのように法定化するのか示されたい。

(質問9-8)

仮に10人の組合員がいて、9人が団体漁業権に加入し、1人が個別免許漁業者のままの場合、漁協は9人に係る公的漁場管理業務には責務を有しても、知事から直接免許される個別免許漁業者1人は、自らその業務を行うべきであり、その個別免許漁業者が組合員であったとしてもその業務の代行について漁協は拒否できると理解してよいか。もちろん、員外者からの要請も当然拒否できると理解してよいか。

(質問9-9)

今回の水産政策改革は、JA改革と同じくJF潰しがその目的にあると思われる。組合管理区画漁業権を知事による個別漁業者免許に移行させるのも、漁業者を漁協につなぎとめていた漁業権という求心力の源をはく奪するのもそのためであり、その目的は確実に達成されつつある。さらに、JAにつづきJFにも購買事業や販売事業の利用は組合員の自由意志に任せよとの圧力が今後水産庁や公正取引委員会から高まることは確実なので、今回の改革により「JFの衰退産業化」が急速に進むことは避けられない

これまでJFが自発的に実施してきた公的漁場管理業務は、そもそも収益を上げるような事業ではなかったものの、経済事業の収益を充てることでそれが実施できたが今回の改革によりその余裕がなくなる。

以上から、今後のJFは相当高額な経費(例えばその公的漁場管理業務に係る職員の年間給与の大部分)をその短期間の公的漁場管理業務に係る経費として組合員から徴収するか、公的漁場管理業務そのものを返上しないとやっていけなくなるが、そのような場合はその業務を都道府県又は個別免許漁業者が引き継ぐと考えてよいか。

(質問9-10)

「漁場管理業務に関し、漁協のメンバー以外から、費用を徴収する場合はその使途に関する収支状況を明確化するとともに、情報開示を行うこととする」とあるが、そのメンバー以外(以下、「員外者」)が、その海面で行う生産活動規模(飼育尾数、投餌による環境負荷量、出荷金額など)に応じた適切な経費を負担しているかどうか、またその負担の程度が組合員とのバランスで公平になっているかどうかをチェックしなければならないことから、その員外者に係る生産活動の詳細と業務報告書を漁協に情報開示することが不可欠となるが、それはどこで法定化するのか説明ありたい。

(質問9-11)

 今回の改革は、漁協による海の管理を否定し、知事の管理のもと企業の参入を図り、「漁業の成長産業化」を図ろうとするものと受け止められ、そのために漁協が企業活動を妨げないような規制は多く見られる。しかし、それでは、利益のみに着目し不祥事もいとわず、地元漁村社会への貢献度が低い宮城県水産特区のような企業の参入を防止することができないので、今後知事から直接免許を受けて、養殖業に参入する一部上場会社(その実質的子会社を含む)に対し、漁業版CSR(企業の社会的責任)の基準(例えば突然の撤退に備え、地元への悪影響を緩和するため1年分の水揚げ金額に相当する預託金の義務付けなど)を法定し、それに違反した時には免許を取り消すという厳しい対応をとらなければ「強欲企業栄えて漁村滅びる」となり「漁業の成長産業化」が達成できないところ、水産庁の見解を伺いたい。

 

10 漁協の組織・事業体制の強化

(質問10-1)

「漁協の目的として、漁業者の所得向上を法律に明記する」とあるが、「漁業者の所得向上」を新たに法律に明記しなければならなくなった理由を、漁業者の所得に強い影響を及ぼす漁協の事業との因果関係と、その事業の近年の業績変化のデータをもとに説明ありたい

(質問10-2)

この場合の「漁業者」を組合員とすれば、その組合員により構成されている漁協が「組合員の所得向上」を願っていないはずがなく、おそらく漁協役員のほとんどがこの改正に「何が言いたいのか」と首をかしげるか、または、「バカにするな」と怒るかのいずれかであろう。仮にそういう現実があるとすれば、それは定款に基づき理事の執行責任を追及すれればこと足りること。これは法律の問題ではなく、運用の問題であり、このような「言わずもがな」のことを新たに法律に明記する必要はないと考えられるが、水産庁の見解を伺いたい。

(質問10-3)

これは、平成27年のJA改革で「準組合員の事業利用制限」をJAに課し、その経営に大打撃を与えようとした目的で法律に明記した「いわくつき」の記述であるとも聞くが、今回のJF改革にも同じ狙いがあるのかどうか、説明ありたい。

(質問10-4)

漁協の収益構造からして「漁業者の所得向上」を図ることは簡単であり、販売事業の手数料率や購買事業でのマージン率を引き下げれば、その日から漁業者の所得向上は達成されるが、そうすると漁協経営が悪化する。つまり、この規定は漁協経営を犠牲にしてでも漁業者の所得を優先せよという意味かどうか説明ありたい。

(質問10-5)

「役員に販売のプロ等を入れることを法律に明記」とあるが、「役員に〇〇のプロ等を入れる」の○○に該当するものとして、「販売」以外に今後何を想定しているか、説明されたい。

(質問10-6)

例えば、販売より資源の減少がより大きな問題となっている漁協であれば、「資源管理のプロ」を役員に入れる必要性が高いときにでも、販売のプロを入れなければならない理由はどこにあるのか。また、販売も資源も問題はないが、後継者不足が最大の問題となっている漁協は、「後継者対策のプロ」を役員に入れる必要性が高いにもかかわらず、販売のプロを入れなければならない理由はどこにあるのか。なぜ、わざわざ販売という特定分野の限り法定化するのか、むしろ「漁協の抱える重要課題の解決に資するプロを役員に入れる」と法定すれば、将来その都度の法律改正の必要性がなく簡便ではないか

(質問10-7)

販売事業の強化が漁協の課題としても、そのために役員に販売のプロを入れるということは、実際の理事会の運営実態に照らせば、違和感を感じざるを得ない。理事は総会で議決された定款や事業計画等を遵守し組合員に代わり日常の業務を適切に監視・執行することを義務付けられており、理事会にあげられてくる協議事項の量も質も近年増大する一方である。また理事の多くは現役の漁業者でもあり多忙のため、限られた時間内での理事会で「販売事業の強化はどうあるべきか」などを悠長に議論している暇はない。よって、その必要がある場合には、そのための外部の専門家(プロ)も含めた販売担当職員が主体となった検討チームを理事会の下に別途立ち上げ、そこを中心として取組方針を検討させ、理事会でそれを承認する方が、より専門性が高く実行性も伴った効率的な議論ができる。よって役員にプロを入れることで販売事業が強化されると考えるのはあまりにも短絡過ぎであり、仮にその必要性があれば、理事員外者定員数の枠内で対処すればよいのであり、なにゆえわざわざ法律で明記する必要性があるのか説明ありたい。

(質問10-8)

 役員に販売のプロをいれるという改革は、漁協の現実を踏まえて議論した結果なのか、それとも平成27年のJA改革にある「理事に販売のプロを入れる」の単なる横並びなのか、説明ありたい。

(質問10-9)

「信用事業を行う信漁連等に対して、全漁連監査に代えて、公認会計士監査を導入する。」とあるが、公認会計士は会計監査の能力は高くても水産に関し全くのど素人であるため、業務監査の能力はゼロである。これでは、公認会計士による監査に漁業関係者は不安を抱き安心できないことから、せめてその公認会計士には、水産業協同組合監査士になるための資格試験のうち「監査」「会計学」「簿記」は免除しても、「法規」「協同組合論」の試験に合格することを、義務付ける必要があるのではないか。

(質問10-10)

公認会計士監査を導入したJAによると、その高額な監査経費の負担が経営を圧迫していると聞く。これでは、健康診断の検査料が高すぎてまともな食事がとれず、栄養失調で健康を害してしまうという本末転倒な笑い話である。よって、漁業の分野においてはこの轍を踏まないように「公認会計士監査経費は、全漁連監査経費に同額とする」と上限を法定化すべきではないか。

 

11 海区漁業調整員会について

(質問11)

 「委員の選出方法を見直す」とあるが、これは農業委員会で行われた一連の改革にならい、公選制の廃止、知事による選任制への移行などであるとすれば、次のような重大な問題が引き起こされる可能性がある。海区漁業調整委員会は、農業委員会はもちろんほかの行政委員会にもない「準立法機関」としての機能を有している。それが委員会指示権限である。罪刑法定主義において、人を罰することができるのは、選挙で選ばれた議員により作られた法律、条令などに基づく必要がある。そのようななかで、委員会指示権とは途中で大臣又は知事による指示命令という手続きを要するものの、人に罰を与えることができる(1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)ものである。それが認められている理由はその委員が選挙で選出されており、いちおう民主的手続きを踏まえているから。それが知事選任委員のみとなれば、客観性を失う恣意的な人選となり罪刑法定主義に違反する、逆に言えば「委員会指示権」を喪失しかねないことになると思われるが、この点についての水産庁の見解を伺いたい。

 

1 comment for “水産政策改革案に物申す(その③) -言語道断! 愚の骨頂!-

  1. LightHouse
    2018年6月23日 at 4:49 PM

    いつもブログ、水産経済新聞での連載を興味深く読ませていただいています。
    改革案の違和感を覚えていた部分に的確な批判をされていて、溜飲が下がった思いです。
    あの奇妙な案を受け入れられない人は正直言って多いと思います。
    佐藤さんの意見を広めるために、是非また新聞での集中的な連載や本の出版を検討していただけないでしょうか。
    品格も論文もないけれど影響力ばかりある人たちを諫めるカウンターが必要なのです。
    水産に関わる一人として応援しております。

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