開けましたら、もう負けてました (涙) -水産政策改革発表の前に何があったのか-

このブログ「水産政策改革案に物申す(その②)」の質問7-29で水産庁と全漁連への質問として、概要以下の内容を記載しました。

(質問7-29の概要)

①水産庁と全漁連は今回の改革案を「漁業権の入札制度が避けられた。共同漁業権制度が守られた。」と自画自賛しているという。

②だれがどこでいつ「漁業権の入札制度の導入」を水産庁や全漁連に迫ったのか。

③優先順位と漁協管理区画漁業権の廃止が漁業権競争入札回避とのバーター取引に使われたのか。

④共同漁業権が守られたとは、だれが何を根拠にそう判断したのか。

ところが、先日このブログの投稿欄に上記質問の②に関し以下のようなメール(私の方で要約しております)が寄せられました

(以下メール内容:斜字)

・私の持ってる情報をお知らせします。

・平成30年2月に全漁連の役員が、当県漁連に改革の取り組みの考え方(A4で2枚)をもって説明しましたが(全国行脚の一環)、その時にもう一枚、「中央ではこんなことを言う、わかっていない連中がいる。」と言って出してきたのが、以下の文面の紙切れ(議事録の一部)です。

国家戦略特区ワーキンググループ ヒアリング(議事要旨)

(開催要領)

1           日時 平成26年8月19日(火)11:28~12:32

2           場所 永田町合同庁舎7階特別会議室

○八田座長 では、入札にかければ一番高く入られるのではないですか。入札でやればいいのではないでしょうか。もちろん自然の保全というのはすごく大切だから、そこの規制はきちんとかけないといけないし、監督もやらなければいけないですね。

○菅家課長 入札というのは、何の入札ですか。

○八田座長 漁業権。

○菅家課長 漁業権の入札をどういう能力ではかるということですか。

○八田座長 入札です。だから、お金を払った人がその権利をもらえる。

○菅家課長 つまり、金をたくさん持っていればうまく経営する能力があるということですか。

○八田座長 持っているのではなくて、うまく経営できるからそれだけ払うことができると。

○菅家課長 まだ参入はしていないわけですから、養殖業を営む者としてうまくここで経営できるかどうかというのは未知数の話ではないですか。

○八田座長 ほかのところで経営している人たちは、入札しないでしょう。要するに、漁業組合が非常に非能率的であるならばそういうところが勝つし、物すごく漁業組合が能率的ならば漁業組合が勝つかもしれない。だから、そういう入札制度にして、こんな優先権などというのをやめたほうが元来は合理的なのだろうと思います。

・以上ですが、要は、全漁連は水産庁から過去の議論であるのに、今回「入札制はかわしたから」、とかいわれて騙されているのに、それをご丁寧に主な漁連へ説明して回ってる。

・水産庁にうまく使われたこともわかっていない。だから入札制をかわしたかわしたと言って回っているのです。

・もちろん上の4行はカットしていつの議事録かわからないようにしてました。(〇八田から始まるものでした)現物コピーもあります。

・水産庁も全漁連も手柄のように入札制や共同漁業権のことを言ってますが、何のことはない。昔の議論を都合よく使ってるだけです。

全漁連もJA中央会が解体されたので、騒ぐと抵抗勢力とみなされて同じようになるぞと水産庁に脅されたものだから、初めから改革案を受け入れてしまっています

中央が動かないから末端の漁業者もどうしようもない状況でしょう。末代まで禍根を残す現状を、どんな手を使っても変えなければなりません。頑張りましょう

 

なるほど。そういうことがあったのですね。情報提供くださった方、誠にありがとうございました。一緒に頑張りましょう。

 

ところで、上記のメールの最後から二つ目の文章「全漁連は脅されて初めから改革案を受け入れてしまった」の結論から遡って考えると、その後の対応には

①改革案は大幅な変化であるが、これを受入れないともっと大変なことが起こったと思わせる。(だから苦渋の選択)

②現場の不安は今後の丁寧ぶった説明で取り除かれると思わせる。

③だから改革案は、漁業者にとって良いものになると思わせる。

④次は予算だと鼻づらの人参に目を向けさせ、しのごの言わずに改革案を受入れた方が身のためだと思わせる。

4つの騙しのシナリオが必要となるのも頷けます。

 

1 全漁連会長の発言を改めて追ってみる

 

ということで、改革案公表時等の全漁連会長の発言◎を改めて追っていくとその意図がよくわかってきます。発言の後の矢印以降は私の意見です。

(なお、以下の発言内容は出席者のメモと新聞記事をもとにしています。)

平成30年5月24日 自民党水産部会・水産総合調査会合同会議(メモ)

全漁連会長

◎優先順位の法定化の廃止、特定区画漁業権の見直しが案として出されたが、大幅な変化。

・優先順位も組合管理漁業権もなくなりますとさらりと言ってのけるこの感覚が全く理解できない。すでに結論ありきで、立場上抵抗できないためか。

・「これがそのまま通れば、もう商売やめなければならないかも」とまで言った漁師がいた。大幅どころか壊滅的変化にもかかわらず。

◎浜の混乱がないよう懸念される事項については、議員の先生方で協議して欲しい。

・会長にとって浜の混乱はまるで他人事。議員の先生方も全漁連に丸投げされてこれは大変。

◎漁業者は今回の改革案について期待と不安感を持っている。

・いったいこの改革案のどこに期待されるものがあるのか、まったく理解不能。期待している漁業者がいればぜひ会ってみたい。

◎斎藤大臣の強い決意に安心しているが、漁業者にとって革新的な政策を作ってほしい。

・大臣の強い決意とはどちらに向いている決意か。まさか提案した大臣がそれをつぶす決意などあり得ないので、当然優先順位と組合管理区画漁業権の廃止に向けた強い決意である。会長がその決意に安心しているという発言は、現場漁業者に申し開きのできない、重大な背任行為である、と言われてもやむを得ない

◎全漁連は他の連合会と話し合いをして対応を任された。水産改革は苦渋の決断だが、これが漁業者にとってよい改革であると固く信じる。

・改革の中身は沿岸養殖業者にとって死活的問題であり、会員の利害に係わる重大事項について、理事会又は会長に白紙的委任を取り付けたとすれば、それは理事会に与えられた権限を逸脱した定款違反の疑いすらある。最重要事項であるのに、議決の取り方自体にも疑義があるであろう。

・「苦渋の決断」「固く信じる」など具体的な中身のない言葉は騙しのシナリオ通り。

 

平成30年5月30日 自民党水産部会・水産総合調査会合同会議(メモ)

全漁連会長

◎重い決断であるが、今回の改革について浜が良くなるという決意で改革を受入れる。

・「重い決断」の中身が全く伝わってこない。何を守るために改革案を受入れたのか、わが身だけでないのか。その具体的中身を説明する義務がある。

「改革を受入れる」など誰の了解を与えて発言したのか。この時には水産庁の説明会も開かれておらず、現場漁業者をあまりにも軽視しバカにした発言である。この発言ゆえか、6月21日に東京で開催された説明会では、水産庁からは「すでに全漁連会長が受けいれたことを、何をいまさらガタガタ言うのか」的に、誠意をもって回答しようという姿勢が感じられなかったのも会長のため。せめて大日本水産会会長のように「水産関係者の納得の上で、進めてもらいたい。決定の前に業界に説明してもらい、業界の納得を得てから何事も進めてもらいたい(5月24日)」「水産関係者が納得したうえで改革を進めたい(5月30日)」に留めるべきであったと残念でならない。

 

2 全漁連総会での会長と農水大臣の発言を追ってみる

 

平成30年6月21日に開催された全漁連総会での会長と大臣の発言にも、ともに作り上げたシナリオ通りに進めるという意思が感じられたので、以下に指摘します。

平成30年6月21日全漁連総会(同年6月22日付け水産経済新聞より)

全漁連会長

◎水域を有効かつ的確に利用している漁業者の優先利用を法文などにしっかり明記してもらいたい。

・今の世代は良くても次の世代の地元漁業者を外部参入者と同じ扱いにするような優先順位の撤廃など、現場漁業者は絶対に受け入れられない。にもかかわらず、勝手にそれを受け入たかのような先走り発言は行うべきでない。

◎共同漁業権は、今まで通り漁協の権利とすること、沖合養殖設置の場合に漁船漁業者の権利を損なわないことを安倍総理に強く要請した。

・共同漁業権は議論の対象になっておらず、全漁連の手柄にはならない。免許切替の5年後に向け、また組合管理区画漁業権のように知事管理へ移行する可能性が高い。沖合養殖漁場の新設もこれから都道府県の意見を聴取という段階なのに、勝手に先走りし、その後当然の漁業調整など、いちいち会長が安倍首相に言うことか。どこまで自分の手柄のように吹聴すれば気が済むのか。(この人は従来から何かにつけて政治的行動や発言が多すぎる。)会長として言うべきことは「漁業者から海と資源を取り上げて企業に渡すことに絶対反対!」という漁業現場の生の声でないのか!

農水大臣

◎改革を行うことにより必ず漁業者の生活が良くなる重い決意で改革の方針を示した。今後の法案づくりなどで丁寧な説明と調整をしていくとともに、予算獲得に全力を尽くす。

・既定路線断行のための騙しのシナリオ②③④に見事に沿った中身の伴わない発言である。

◎不安を抱えている漁業者もいるだろうが、まずは身構えず行うべき改革をしっかりやろう。そのことでやってよかった、実の上がる改革になるようにしたい。

・「まずは身構えず行うべき改革をしっかりやろう」は、考えさせるとボロが出るときの典型的な騙しのテクニック。今回の改革に身構えない者はド素人だけで、真の漁業者とは言えません。海と資源を企業に取り上げられる改革で「やってよかった」となるわけがない。もちろんこの場合の漁業者が企業であればその通り。主語を明確にしてもらわないと沿岸漁民が自分のことかと誤解してしまいます。

 

3 本当に「漁業権の入札制」は実現性のある脅威だったのだろうか

 

水産庁と全漁連が、改革案受け入れやむなしのストーリー作りに使った「漁業権の入札制」は本当に政策として打ち出されるようなものだったのでしょうか。冒頭にあげた情報を提供していただいた方のメールをはじめに見たときに、それは今回の規制改革推進会議水産WGの議論と並行して「裏でこんな話があったのだ」と思いました。しかし、なんとそれは4年も前の話だったのです。

 

その話の議事録を見て驚きました。それこそ「泣く子も黙る」ではなく「泣く子も疑う」あの疑惑の塊、加計学園獣医学部新設に関する国家戦略特区諮問会議ではありませんか。しかも相手は八田達夫氏です。有名です。知らない人はいないでしょう。曇りだらけのあの審議を「私どもの決定のプロセスには一点の曇りもございません。一般の政策決定よりはるかに透明度の高いプロセスです」と強弁した「規制改革日本晴れ男」と言われるあの方です。加計学園の関係者が出席した会議の議事録から彼らの名前を消させたあの人です。

 

ぜひ、皆さんもそこで漁業権の話がされた時の議事録https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/h260819gijiyoshi02_2.pdf

をお読みになられるようにお勧めします。面白いです。国家戦略特区ワーキンググループ座長八田達夫氏と委員原英史氏の「無知ぶり」と「無茶ぶり」には頭がくらくらする思いで、その一方で、当時の水産庁企画課長の菅家秀人氏の堂々とした対応ぶりが秀逸です。

 

私がこれを読んで、驚いた八田氏らの発言を以下に抜粋しておきます。奇想天外で面白かったです。

 

①新規企業も漁協の組合員になれるの。知らなかったなー。

②宮城県水産特区の合同会社は漁協の組合員で、組合管理漁業権で免許を受けられる資格があったの。知らなかったなー。なぜそうしなかったの?(お前が聞くな!)

③個別免許と漁協免許の差には、漁業権使用料を払わなくてもよいメリットがあるのがわかった。(企画課長から、その使用料は漁協が漁場管理コストに充てることから、その分自分に負担が発生するので同じです)わかりました。

④特定区画漁業権のみを漁協から切り離すとしたら、原価計算をきちんとやっているかどうか・・・(どうも八田氏は漁場利用料を不動産賃貸業のようにとらえているのか、質問の意味が読み取れない)

養殖と漁業の区別がついていない(ここが最高に面白い)

(八田氏)

養殖も混雑して水質が悪くなってきたというが、むしろ水面の管理よりも漁獲量の管理をやる方がいいのでは。

(企画課長)

資源管理のお話でしょうか。漁業権の話ではなく。

(八田氏)

もちろん、漁業権の目的です。それが結局水面管理にしてしまうと、資源の管理の観点からかえって望ましくないようなことも起きる。

・・・・・ ?????

もうこの先はやめておきます。それにしても菅家企画課長は偉い。この連中を相手に切れないのですから。私だと「コノヤロー」と殴り掛かっていたでしょう。

⑥漁場利用調整が大変という話を聞いて、八田氏は「地域の権利を全部持った企業だったら、調整はいらないですね。」と一言。あのねー。そもそも漁場の独り占めができないから問題だといっているのに、もうこんな人と話すのはいやー。

 

あとは、みなさんご自身で読んで楽しんでください。

 

最後に話をもとに戻します。つまり、「漁業権の入札」に関し、公的な場で議論がされた記録が残っているのはこの笑い話だけです。これが本当に脅威となったとは全く感じられません。「漁業権の入札制度を回避するため」という主張は、完全な作り話と言えるでしょう。

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