会長様 いくら何でもそれはないでしょ

「尖閣など中国にくれてしまえ!」とは平成28年の都知事選に立候補し落選した鳥越俊太郎氏の過去の発言とか。思想信条の自由が保障された日本において、個人の資格で何を言おうがかまいません。だれも相手にしないだけです。しかし、仮に「尖閣を中国に渡すことに賛成ですか反対ですか」というアンケートに、公人たる日本国政府の総理が「賛成」と回答したらどうでしょうか。こんな利敵行為をする人物に総理の資格はないと、国民は直ちにその者を総理の座から引きずりおろすでしょう。

しかし、水産政策改革を巡る動きにおいて、これに近いことが起こっていることを、私はある雑誌で知り衝撃を受けました。全国の漁業関係者はこのことを知っているのだろうか。いくらなんでもこれは許せないと思い、何があったのかこのブログで紹介することにしました。

それは、香川海区漁業調整委員会会長で、全国海区漁業調整委員会連合会副会長でもある濱本俊策氏が、「漁業と漁協」8月号(漁協経営センター出版部)に寄稿された「水産政策の改革に対する反論=海区委員の公選制の廃止に関して」に書かれていたことでした。

そこには、平成30年6月25日に、全国海区漁業調整委員会連合会が、中央省庁へ規制改革にかかる特別の要望書を手渡したことと、以下の4項目の要望事項が紹介されていました。

<要望事項>
1 委員の選出方法や委員構成の見直しについては、これまでも漁業者自らが選出した委員を主体として円滑な委員会運営が確保されているため、現時点において見直す必要性はない。漁業法の目的である、「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構」を堅持すること。
2 漁業権の免許等において、海区漁業調整委員会が担っている役割を堅持すること。
3 免許の優先順位の廃止については、既存の漁業権者が優先して免許を受けるための「水域を適切かつ有効に利用している場合」の判断基準を明確に示すこと。あわせて、免許の競願がある場合に、優先順位に代わる判断基準を明確にすること。
4 今後、漁業法の改正にあたっては、事前にその内容を各海区漁業調整委員会に説明し、意見集約を丁寧に行うこと。

それは、水産庁が水産政策改革において示した「海区漁業調整委員会については、適切な資源管理等を行うため、委員の選出方法を見直すとともに、資源管理や漁業経営に精通した有識者・漁業者を中心とする柔軟な委員構成とする。」に対し、「現時点において見直す必要性はない」と改革案に真っ向から反対する内容でした。

私が驚いたのは、その要望事項を取りまとめるにあたって、事前に会員である全国の海区漁業調整委員会(以下「海区委」)と意見をすり合わせるために行ったアンケート結果でした。私は、海区委の公選制は、漁業法第一条「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用によって水面を総合的に利用し」を担保するために絶対的に欠かせない制度であると思っていることから、その見直しには当然ながら全部「反対」との結果が寄せられると思っていましたが、そこには以下の通り、19都道府県のうちなぜか1県が反対しなかったと書かれていたのです。

(要望事項を取りまとめるに)先立って同事務局が全国の海区委の事務局に対し、規制改革案に対するアンケート調査を行ったところ、多数の意見や苦言、疑問点が寄せられている。特に、海区委の公選制の見直しに関しては、回答のあった19都道府県のうち18都道府県が反対意見であった。

そこで私はピーンときました。漁業者及び漁業従事者を主体とする海と資源の利用にかかる調整機構を破壊し、知事の権限を強化し、知事が直接企業に漁場の区画を免許し、漁獲枠も割り当てる水産庁改革案に唯一賛成するとすれば、あのM県に違いないと。

ところが、その先を読み続けていくと、予想外の記述があったのです。

そうしたなかで山陰地方のある県から、「公選制度の廃止もやむなし。もし公選制を存続させる場合は、選挙権登録の透明化(選挙人資格の基準の厳格化)を図ること。」との意見があったとのこと。公選制の廃止と、選挙人資格の基準の問題は全く別物である。選挙人名簿は市町の選挙管理委員会が毎年9月1日現在で調査し搭載するもので、名簿の出所は漁協である。不透明であれば、それは漁協自らが律すべきことで、県や県漁連が適切に指導すべき事柄である。一体何をもってこんな人ごとのような意見になるのか、特別な事情があるのか、それともただ単に国の案に追随しただけなのか。違和感がありすこぶる奇異に感じるので、何らかの機会に是非ご教示願おうと思っている

なんと、その1県とはM県ではなかったのです。(M県の海区委様、誠に失礼しました。衷心よりお詫び申し上げます。)

山陰の県と言えば二つしかない。しかし、まさか、沿岸漁民により組織された漁協を孫会員とするあの中央漁業団体の会長の出身県のS県ではないだろうなと。19県中18県が反対しているのを、唯一賛成する「裏切り的行為」は、その立場上からも絶対にないと思ったのです。しかし、どうしても気になったので、あれこれ手を尽くしてそのアンケート結果を入手しました。それは実に貴重な資料でした。日ごろの都道府県の海区委の活動実績に基づき、水産庁の改革案の問題点を厳しく指摘する非常に内容のある回答や意見ばかりでした。ぜひとも公開して欲しい、内輪に留めおくのはもったいない、と思わざるを得ない資料でした。

そうしてわかりました。なんと、驚くべきことにそれはS県だったのです。

どうして中央漁業団体の会長さんは、漁業者を裏切る利敵行為を行ったのでしょうか。それは、その中央漁業団体の会長さん自身がS県の海区委の会長でもあったので、水産庁改革案に賛成したのだと思います。これまで漁業現場の漁業者が何も知らないのに、何か取引でもしたのか、始めから水産庁の改革案を「受け入れる」発言を繰り返してきた会長さんの行動からすれば、至極当然であるとも言えるでしょう。

この寄稿文のなかで濱本俊策氏は「特別な事情があるのか、それともただ単に国の案に追随しただけなのか。違和感がありすこぶる奇異に感じるので、何らかの機会に是非ご教示願おうと思っている。」と極めて控えめにその行動を批判されていますが、その中央漁業団体の会員である漁連と孫会員となる二つの漁協の役員を務めている私の立場から率直に以下を言わせていただきます。

「尖閣など中国にくれてしまえ!」と同様に「海区委の公選制など規制改革にくれてしまえ!」と発言する方は、我々の組織のトップとしては、ふさわしくありませんので、一日も早くほかの理事にそのポストをお譲りいただけることを心からお願い申し上げます。

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