改正後の漁業法等の規定事項案に対する修正意見その②(海区漁業調整委員会)

海区漁業調整委員会(以下「海区委」)の公選制をなくし知事による任命制への移行については、その理由として
①選挙の実施率が低い。
②すでに他の行政委員会も任命制に移行し、農業委員会もそうなった。残るは海区委だけ。
③選挙管理委員会事務局の職員が面倒くさいと言っている。

があげられています。

では、これに習い国会議員選挙について
①投票率が50%にまで低下。
②小選挙区制により有権者数の1/4の得票率で3/4の議席を占めるに至り、「死に票」が半分にもなり民意を反映していない。
③何度選挙をしても不祥事を起こした議員や芸能・スポーツ界出身のタレント候補が当選するだけで選挙結果がマンネリ化している。
④やたら解散総選挙が繰り返され、選挙管理委員会事務局の職員が面倒くさいといっている。
を理由に、選挙をやめ県議会議員による推薦名簿に基づき知事が国会議員を任命する方式に移行するべきと主張をする者が出てきたらどうでしょう。

だれも絶対賛同しませんよね。なぜでしょうか。それは上にあげた4点は、運用上の問題だからです。つまり、その運用に問題があり改善が必要なことは事実であったとしても、それをもってその制度を廃止する理由にはならないからです。仮に、その制度を廃止できるとしたら、制度が設けられたその根源にまでさかのぼり、それをなくしても問題が起こらないことが、現在の政治・社会・経済の諸情勢に照らし、客観的に立証できた場合のみであると思います。

よって、海区委の公選制をなくしても、戦前のような少数の網元資本家が海の利権を独占する封建的な格差の大きい漁村社会に逆戻りしないという確証が得られた場合のみに許されることではないかと思います。しかし、そのような検証は一切行われていません。むしろ逆に戦前への回帰がいよいよ強まっているのです。

何度も繰り返し指摘してきましたが、今回の改革の目的は、資源管理でも成長産業化でもありません。多数の漁民から構成された漁協の管理下にある公共資本の漁場や資源を組合管理漁業権の廃止やTAC拡大などで知事の管轄下に移行させること。そうして漁業者からそれを取り上げ外部資本に引き渡すこと。それを個別経営者免許やIQで分割すること。そうしていずれそれに私的所有権を設定し市場での取引を可能にすること。以上のとおり外資も含めた資本家・企業の儲けのための制度改革です。

さらに、警戒すべきは現政権の体質です。森友・加計学園スキャンダルに象徴されるように、行政を捻じ曲げ、「嘘、隠蔽、ねつ造」してでもお友達への利益供与を行うという状況にあります。よって、今後参入予定の企業「モリカケ水産」への特別配慮のため、一連の行政手続きに係わる海区委が知事の意にかなった委員により構成される必要性があるのはごく当然のことです。公共資本である海をお友達企業の私物化するという、いわば「公共財産泥棒」に海区委を加担させるのが今回の改革の目的とも言えます。完全に間違っています。

また、これはすでに指摘したことですが、罪刑法定主義との関係です。海区委は、農業委員会はもちろんほかの行政委員会にもない「準立法機関」としての機能を有しています。それが委員会指示権限です。罪刑法定主義において、人を罰することができるのは、選挙で選ばれた議員により作られた法律、条例などに基づく必要があります。そのようななかで、委員会指示権とは途中で大臣又は知事による指示命令という手続きを要するものの、人に罰を与えることができる(1年以下の懲役若しくは50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料)ものです。それが認められている理由はその委員が選挙で選出されており、いちおう民主的手続きを踏まえているからです。それが知事選任委員のみとなれば、客観性を失う恣意的な人選となり罪刑法定主義に反します。今後は委員会指示違反で捕まった漁業者は、知事が勝手に選んだお友達委員会が決めた委員会指示に従う必要はないと裁判で主張するでしょう。というか、それ以前に企業の儲けのために漁業者の反対を押し切って導入した任命制の委員会に対する漁業者の反発から、委員会指示そのものの権威が失墜するでしょう。海は秩序を失い紛争が激化することは間違いありません。

よってこの海区委の改革に係る法案は
(修正案1)全て削除し、現行制度をそのまま維持する。
べきだと思います。

 さらに、百歩譲ったとしても、全国では現在も8海区が選挙を実施しており、他の海区が選挙をしていないという理由で、その海区から選挙制を取り上げてよいというのは全く筋が通りません。よって、
(修正案2)現行制度と新たな任命制度の二つの方式を併存させ、地域のその時々の事情を踏まえ、知事が海区委の意見を聞いて選択できる方式にする。

 さらに、任命制では、自薦応募者が多数出てきて、定員をオーバーした時に、その中から知事が「この人が適任」と決めるとさらりと書いていますが、そんなこと客観的基準があるわけでもなくどうしても恣意性が伴いますので、簡単に決められるわけがありません。任命されなかった応募者は、必ずその不当性を訴え訴訟が頻発するでしょう。なぜなら、海区委の議論が自分たちの漁場紛争の解決への重要なカギを握るからであり、それが不利になるような委員構成については、絶対に異議を申し立てます。それだけ海区委の権限は漁業者の生死に係わるからです。

 それから、この任命制において絶対的に間違っているところがあります。それが、「知事が議会の同意を得て、任命する」です。農業委員会のやり方をそのまままねただけでしょうが、そうはいきません。というのは、農業委員会はそれぞれ市町村の単位で設置され、そこでの議会選挙区は区分けしない一本方式です。つまり、農業者は曲がりなりにも自分たちに選挙権が与えられた議員に任命の是非を委ねる方式となります。

ところが、県議会議員選挙は、選挙区が区割りされています。三重県で言えば、17選挙区のうち完全に海なし選挙区が5あります。この5選挙区の議員は自分の選挙区でもなく、ましてその海区委の漁業関係委員の被選出権は沿海地区に限定されているのに、いったい何を根拠に委員任命の同意の是非を判断するのでしょうか。というより、逆に漁業者に言わせれば、海の人間に選ぶ権利が与えられていない山の議員になんで海の委員会の任命の是非に加わる権利が与えられるのか。日本の法律なのに隣の韓国の国会議員の承認を必要とするようなものであり、絶対におかしい。そんな方式で任命された委員で構成された海区委の決定などに従う理由はないという主張には十分根拠があると思います。

以上を踏まえ、ぎりぎり千歩、万歩譲ったとして、任命制度において以下の修正が必要です。
(修正案3)
・団体推薦と自薦応募にかかる漁業関係候補者が、その委員定数枠を上回った場合は、その定数枠内に収まるよう現行制度と同様の方法による予備選挙を行うことを規定する。
・議会同意に係る議員は、海面を有する選挙区の議員に限定する。

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