改正後の漁業法等の規定事項案に対する修正意見その③(漁業許可制度)

3-1 農林水産大臣による漁業の許可

◎3-1-(1)
(案文)

船舶により行う漁業であって農林水産省令で定めるものを営もうとする者は、船舶ごとに、農林水産大臣の許可を受けなければならない。

3-1-1 記述変更
 「農林水産省令」を「政令」に修正する。
(理由)
平成11年の地方分権推進法により、沿岸漁業(養殖業及び漁船漁業)の管理は、それまでの法定受託事務から、都道府県の自治事務に移行された。その趣旨は以下の地方分権推進法第2条及び第5条にある通りである。

(地方分権改革の推進に関する基本理念)
第二条 地方分権改革の推進は、国及び地方公共団体が共通の目的である国民福祉の増進に向かって相互に協力する関係にあることを踏まえ、それぞれが分担すべき役割を明確にし、地方公共団体の自主性及び自立性を高めることによって、地方公共団体が自らの判断と責任において行政を運営することを促進し、もって個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図ることを基本として行われるものとする。

 

 (地方分権改革の推進に関する国の施策)
第五条 国は、国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、行政の各分野において地方公共団体との間で適切に役割を分担することとなるよう、地方公共団体への権限の移譲を推進するとともに、地方公共団体に対する事務の処理又はその方法の義務付け及び地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百四十五条に規定する普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与の整理及び合理化その他所要の措置を講ずるものとする。
2 前項に規定する措置を講ずるに当たっては、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。

よって、どの漁業を国又は都道府県が所管するかの役割分担は地方分権の観点から極めて重要な事項であり、当然ながら地方自治を所管する総務省と十分な協議を行いそれを定める必要がある。よって、農林水産省が独自の権限で定めることができる農林水産省令でその役割分担を一方的に定めることは地方分権の精神に真っ向から反しており、現行法においてすら国が所管する指定漁業は政令で定められることになっている。

なお、今回の漁業法等の改正案においては、自治事務化した沿岸漁業に関し、国が参入企業「モリカケ水産」に対する利益供与を図ろうと、国による都道府県への介入権限を再び強化するための改正が随所にみられるところ、地方分権に逆行するこれら改正を徹底して阻止していく必要がある。

◎3-1-(2)
(案文)

前項の農林水産省令は、漁業調整(特定水産資源の再生産の阻害の防止若しくは特定水産資源以外の水産資源の保存及び管理又は漁場の使用に関する紛争の防止のために必要な調整をいう。以下同じ。)のため漁業者及びその使用する船舶について制限措置を講ずる必要があり、かっ、政府間の取決めが存在すること、漁場の区域が広域にわたることその他の政令で定める事由により当該措置を統ーして講ずることが適当であると認められる漁業について定めるものとする。

3-1-(2)-1 記述修正
 「農林水産省令」を「政令」に
(理由)上に同じ

3-1-(2)-2 追加
 地方公共団体の自主性及び自立性が失われないよう国の役割を限定するように入念的に規定する。
(理由)地方分権の精神が後退し、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現が中央政府により妨げられる恐れがないようにするため。

3-1-(2)-3 削除
「その他の政令で定める事由」を削除する。
(理由)国が管理する漁業が、無制限に拡大され「モリカケ水産」の参入対象漁業が拡大することを防止するため、国の管理下に置く漁業の要件を法律で明確にして限定しておく必要があるため。

(修正案文)

3-1-(2)前項の政令は、漁業調整(特定水産資源の再生産の阻害の防止若しくは特定水産資源以外の水産資源の保存及び管理又は漁場の使用に関する紛争の防止のために必要な調整をいう。以下向じ。)のため漁業者及びその使用する船舶について制限措置を講ずる必要があり、かっ、政府間の取決めが存在すること、漁場の区域が広域にわたることを事由に当該措置を統ーして講ずることが適当であると認められる漁業について、都道府県の沿岸漁業に対する管理の自主性及び自立性が妨げられることがないよう必要最小限の範囲で定めるものとする。

3-2 都道府県知事による漁業の許可

◎3-2-(1)及び(2)
案文

(1)大臣許可漁業以外の漁業のうち船舶により行う漁業であって(農林水産省令で定めるもの又はそれ以外の漁業であって)都道府県の規則で定めるものを営もうとする者は、都道府県知事の 許可を受けなければならない。
(2)前項の農林水産省令は、都道府県の区域を超えた広域的な見地から、農林水産大臣が漁業調整のため漁業者又はその使用する船舶について制限措置を講ずる必要があると認める漁業について定めるものとする。

3-2-(1)(2)  削除
(1)の「農林水産省令で定めるもの又はそれ以外の漁業であって」を削除する。さらに(2)も全文削除する。
(理由)
この規定は突如として出てきたもので、完全に「丁寧な説明」の手続きに反する案文である。おそらく、これは、現行漁業法第66条(許可を受けない中型まき網漁業等の禁止)で規制されていたいわゆる「法定知事許可漁業」を削除し、それに代わるものと推察される。しかし、この現行法においてすら国による過剰介入を防止するため、法律で明確に対象漁業種類が限定され、かつ国が規制できる内容も船舶の隻数、合計総トンなどと明確に限定している。この改正案はこの歯止めを外し、「モリカケ水産」のために国が都道府県知事許可漁業に課せられる規制を省令で無制限に拡大しようという意図であると認められ、地方分権の精神にも逆行する極めて不適切な案文である。

また、現行漁業法66条の規定が設けられた経緯は、知事許可漁業においても比較的漁獲圧力が高い業種又は国際的管理下にある魚種を漁獲する業種について、知事がその隻数を一方的に増加させることがないよう全国的な見地から制限するために設けられたものである。しかし、国は今回の新たな資源管理政策において数量管理強化の方向性を打ち出したところであり、さらに次にあるIQ化した漁業においては、隻数もトン数のも自由にするなどという(その是非は別にして)極端な方向性も打ち出している。

とすれば、そもそも知事許可漁業に対し従来以上の制限措置を設けることは根本的に矛盾していることになり、ここにも「モリカケ水産」のために知事許可漁業に対する国の介入権限を強化しようとする意図が露骨に出ている。なお、現行法の66条を直ちに全面的に削除するのが良いかどうかは、都道府県の意見を聞いて慎重に検討する必要があるが、少なくとも国の知事許可漁業に対する介入権限は、地方分権の精神に照らしても、縮小すべきであろう。

3-3 公示等における留意事項
(案文)

農林水産大臣は、漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕を通常伴うと認められる大臣許可漁業について、3 – 14(1)の公示をするに当たっては、当該大臣許可漁業において採捕すると見込まれる水産資源の総量のうち漁獲割当ての対象となる特定水産資源の数量の占める割合が農林水産大臣が定める割合を下回ると認められる場合を除き、船舶の数及び船舶の総トン数その他の船舶の規模に関する制限措置を定めないものとする。

まともに修正意見を言うのもバカバカしいくらい空理空論の極みの案文である。おそらく、国会審議で一つぐらい修正して、野党の格好をつけてやろうという意図で設けられたひっかけの案文ではないかとさえ思われる。でなければ今回の法改正を裏で操る人間の漁業に対する無知と経済学の理論をそのまま現場に適応する教条主義の見事なまでのマッチングが作り上げたお笑い条文として、ぜひこのまま歴史に残しておきたいものである。

しかし、一応真面目に修正意見を言う。
全文削除
(理由)
(1)IQ化論理が1回転して元に戻り完全に破綻している。
 EEZ設定直後の漁業新興国においては、TACさえ設定すれば資源管理ができるので、陸上産業における自由経済理論を前提に、漁業分野への企業参入と経営の自由を保障するため、漁業許可制度に基づく漁船の隻数制限などは一切設けるべきでないという考え方があった。しかし、それでは先獲り競争のための漁船の大型化や増隻によりコストが増大する一方で、水揚げの短期間集中や鮮度劣化等により付加価値が低下し、個別経営はもちろん漁業全体としての生産性も低下させることから、順次IQ化が進んだ。IQ化すれば先取り競争をする必要がなくなるので、経営者は最も少ないコストで最も付加価値の高い時期に漁獲することで、経営の効率化ができることになる。

ここまでがIQ化の理屈である。ところが、今回の改正案はそうなるとなぜか漁船の隻数も規模なども自由にするというのである。IQさえ守られていれば、資源管理上問題がないので、それから先は、経営者が自由に判断するべきことでということであろう。ならばTACさえ守られていれば資源管理上問題がないので、漁船が何隻であろうがどのような規模であろうが、それはそれぞれの経営者の自由に任せればよいのとどこが違うのであろうか。

IQ化の目的は、競争がなくなり今までより小さな漁船でより少ない隻数で漁獲ができコストが低減できる、だったはず。なぜIQ化すれば漁船の隻数を増やしたり、大型化する必要性がどこにあるのであろうか。全く理解できない。要するに、先取り競争を是正するためにIQ化したが、今度は自分のIQを他人のIQより先取りするための競争を激化させ、コストの増大を国が奨励するのである。1回転して元に戻っており論理が完全に破綻している。頭がおかしいとしか思えない。意味があるとすればIQという不評商品の売りつけのためのご褒美効果くらいか。

(2)海の魚は畑の大根と違うので、IQ化しても競争は無くならない
 IQ化しても先獲り競争は無くならなかった。これは、日本の研究者が外国漁業でのIQ導入後の実態を調査して論文として発表している。それはなぜか、日本の漁師ならだれもがわかることであるが、魚は畑の大根のようにいつ行っても同じ場所にいるものではないから。漁場が形成される漁期と場所は限られている。しかも魚群がいつどこに現れるか予想がつかない。さらに、魚の値段はいつも同じではなく、解禁後の初物や正月前の需要期、脂がのった旬の時期などが高い。

よって、IQ化しても個々の漁業者は自分のIQを最も効率的に消化しようと、同じ漁期・同じ漁場・同じ魚価の高い時期を狙って同じ行動をするからである。他人との競争を避けようとすれば、魚のいない時に魚のいない場所で安い魚を獲ってくるしかないのである。よってIQ化すれば競争がなくなり、漁船の隻数や規模の制限が不要となるというのは、典型的な机上の空論で、制限の撤廃は愚の骨頂である。

(3)漁船の耐用年数の期間の資源変動を国は見通せるというのは真っ赤な嘘である
案文には「当該大臣許可漁業において採捕すると見込まれる水産資源の総量のうち漁獲割当ての対象となる特定水産資源の数量の占める割合が農林水産大臣が定める割合を下回ると認められる場合を除き、船舶の数及び船舶の総トン数その他の船舶の規模に関する制限措置を定めないものとする」とある。簡単にいえば、A魚種がIQ化され、その漁獲割合がそれを漁獲する甲漁業の年間の水揚量の〇〇%以下になると大臣が認めないかぎりは、漁船隻数・規模の制限を撤廃しなければならないのである。繰り返し強調するが撤廃は「できる」ではなく原則「しなければならない」のである。

つまり逆に言えば、漁船の税法上の償却年数ではなく、制限撤廃で新造した漁船又は増トンした漁船の実質上の耐用年数約30年間にわたり、国はその漁業においてA魚種が〇〇%以下にならないことを大臣が認めてくれるそうである。これはすごいことである。日本の周辺資源のほとんどは大変動している。しかし今後は、そんなことにならないと大臣が保証してくれるのであるから。一体どのような手法を用いると、漁船の耐用年数の長期期間の資源変動予想を「認める」ことができるというのか。嘘もいい加減にして欲しいである。

いや、もしかするとこの「認める」とは毎年の資源変動の結果生じた漁獲実績をもとに条件に当てはめ、今年は認めるが来年は認めないというものかもしれない。それなら長期資源変動予測が不要なので可能であろう。しかし、規制撤廃で漁船を新造又は増トンした経営者はどうなる。A魚種の資源が減少し始めたら、その漁船を使用できなくなる。当然自己の経営責任で新造したのであるから、国による減船支援の対象にはならない。そうすればその経営者は倒産しかない。しかし、そうやすやすと倒産するわけにはいかないこの制限撤廃は、間違いなく沿岸漁場における違反操業を誘発し、各地で大型漁船と沿岸小型漁船との間の漁業紛争を生じさせることになる。これが沿岸漁業の利益を代表する全漁連会長が称賛する革新的改革の中身なのである。

(4)時々の資源変動に惑わされない漁業経営のための漁船隻数・規模の制限の必要性

私は、昭和63年をピークに減少の一途をたどったマイワシ資源による関係漁業者の倒産を見てきた。それは、北海道の二つの漁業会社で所属船の水揚が100億円を超し、水産加工場も手掛けていた中小漁業者の中でも最大規模の会社であった。私は、その2社が北洋漁業も営んでいたため双方の社長さんとの付き合いもあり、後日その2社が倒産したことを聞いた時には心を痛めた。おそらくそれは、北洋からの撤退と巻き網漁船の漁獲の減少が要因と思った。しかし、詳しく事情を聞いたところ、なんと漁船部門が原因ではなく、マイワシのミール加工場と製品倉庫という陸上加工部門への投資が回収されないうちに、マイワシ資源が減少したことが最大の要因であったことを知った。確かに、マイワシ資源が減少したための水揚高の減少が要因であれば、他のまき網漁業者も同じように倒産したはずであるが、そういう話はあまり聞かなかった。

これは重要なポイントである。いくらマイワシ資源が増加しても、当時の国の漁業許可方針で、漁船の増隻や増トンを認めなかった。だからマイワシ資源が減少に向かっても何とか他の魚種に転換することで生き残れたのである。一方、陸上のミール工場の増設には規制がないので、年々増加するマイワシに対応した経営者の判断で自由に増設できた。そのため、資源が減少し始めたときに、一転してそれが過剰設備と化したのである。

つまり、大変動を繰り返す資源を相手にした漁業経営の安定のためには、その長期的変動を考えたうえでの適切な水準に投資規模を国又は都道府県が制限しておかなければならないという教訓である。今回、それを撤廃しようというのは、自由経済理論そのままを現実の漁業に適用するというまさにど素人が考えそうな愚の骨頂の政策である。

(5)IQ対象魚種以外の魚種への漁獲圧力増大防止のための増トン比率に応じた操業規制の導入が不可欠

仮に、トン数100トンの船を1隻所有していた漁業者が、この制限撤廃で同じトン数の船をもう1隻増隻したとする。そうすると当然混獲又はIQ対象魚種の操業とは異なる漁期にこれらの漁船で漁獲される非IQ魚種への漁獲圧が高まることは避けられない。その非IQ魚種の全体に占める漁獲割合が少ないから問題ないとはならない。なぜなら、その非IQ魚種にとって従来に比較し2倍の漁獲圧になることには変わりがないから。よって、既存の1隻と増隻した1隻の合計された漁獲圧力を半減しなければ、非IQ魚種の乱獲を引き起こすことになる。とすれば、IQ化により自由な漁船規模を選択できるようにしたとしても、非IQ魚種の資源管理の必要性から、増トン比率に応じた操業日数の削減が必要となる。よって、IQ魚種を周年専獲し混獲のない漁業以外におけるこの制限撤廃はそもそも意味がなく、そのような漁業は存在しないので机上の空論である。

-6 許可を受けた者の責務
案文

3-1 (1)の農林水産省令で定める漁業(以下「大臣許可漁業」という。) について同項の許可を受けた者は、資源管理を適切にするために必要な取組を自ら行うとともに、漁業の生産性の向上に努めるものとする。

3-6-1 追加
「資源管理を適切にするために必要な取組」の内容が全く明確ではなく、これではいかなる解釈も可能となり、法律の体をなしていないので、「適切な取り組み」の内容を法律に具体的に追加規定すること。
(理由)
そもそも「適切な資源管理」とはその権限を有する国又は都道府県が具体的に定める責務があり、許可を得た漁業者は当然それに従う義務を負うが、それをいちいち規定する必要はない。しかし、ここで意図することがそれ以外に「資源管理を適切にするために必要な取組」が存在するというなら具体的にそれを規定しなければ、なにを意味しているのか意味不明な条文である。

なお、今回の法律改正の随所にみられる最大の問題点は、その規定の意味するところが抽象的かつ曖昧でいかようにも解釈が可能であること。国民の権利義務を規定する法律とは、誰によってもそのようにしか解釈できないように法律で厳格に規定されるべきであり、国民が選挙で選んだ国会議員が関与できない行政の権限下にある政令や省令に委任するべきものではなく、この点で今回の改正案はその法律に与えられた要件を満たしておらず、法律の体をなしていない。

これには二つの原因があり、その理由は
①漁業のど素人が頭の中で考えた抽象的概念をそのまま法律に書き込んだだけで、全く漁業者との協議を行っていないところ、その意味する具体的内容が詰められていない未熟性によるもので、国会提出が早すぎる。
②立法機関である国会が定めた法律を忠実に執行するのが行政の務めであり、これを国会が監視することで、実際の権力執行機関である行政による権力の乱用を防止することになっている。しかし、今回の政府提案による改正案は、国会が定める法律の内容を意図的に抽象的かつ曖昧にして、その解釈権を可能な限り広く行政に与えさせることで「モリカケ水産」への利益供与が簡単にできるようにしており、すなわち「国会が行政による権力の乱用を防止できない法律」となっている。よって、今回のような中身の不明確な改正法案を認める国会は立法機関としての責務を果たしておらず、国会が行政の僕(しもべ)となりさがり、ここにも政治の劣化「政高・党低」が露骨に現れている

3-6-2 追加
漁業の生産性の向上に努める」の「生産性」の解釈次第では、漁業における雇用を削減することに努めなければならないことになりかねないので、「漁業の生産性」の判断基準を具体的に規定し、法律に追加すること。
(理由)
生産性とは「生産のために投入される労働・資本などの生産要素が生産に貢献する程度。生産量を生産要素の投入量で割った値で表す。(大辞林 第三版)」と定義されている。これでは、規制改革推進会議が理想とする漁業者を削減し、一人当たりの漁獲量を増大させる利益優先のノルウエー型漁業を日本のモデルとすべきと意図していると解釈せざるを得ない。これは漁業に課せられた使命のうち最も重要な地域の雇用を通じての地方創生に真っ向から反していることから、これを「単位資源当たりの雇用創出生産性」と明確に規定すべきである。

(修正案)

3-1 (1)の農林水産省令で定める漁業(以下「大臣許可漁業」という。) について同項の許可を受けた者は、資源管理を適切にするために
・・・・・・・(具体的事例1)
・・・・・・・(具体的事例2)
・・・・・・・(具体的事例3)
などの必要な取組を自ら行うとともに、資源の有効利用と地方創生の観点から単位資源当たりの雇用創出生産性の向上に努めるものとする。

 

3-9 許可又は起業の認可についての適格性
(案文)

許可又は起業の認可について適格性を有する者は、次の各号のいずれにも該当しない者とする。
一漁業又は労働に関する法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者
であること。
二暴カ団員等であること。
三許可を受けようとする船舶が農林水産大臣の定める基準を満たさないこと
四 その申請に係る漁業を適確に営むに足りる生産性を有さず、又は有することが見込まれない者であること。
五 (略)

3-9-1 記述修正
 改正後の漁業法第41条で規定されるこの案文は、現行漁業法第57条に該当するものであるが、その一部が修正されているところ、現行漁業法の記述の通りに再修正すること。
(理由)
現行法では
「四 その申請に係る漁業を営むに足りる資本その他の経理的基礎を有しないこと。」
となっているところそれを
改正法案では
「四 その申請に係る漁業を適確に営むに足りる生産性を有さず、又は有することが見込まれない者であること。」
としている。どこに違いがあるが
①「営むに足りる」に「適確に」が追加された。
②「資本その他の経理的基礎を有しない」が「生産性を有さず」に修正された
の二点である。

(①について)
 現行法では「漁業を営む」ことができれば適格性があったが、改正法ではそれに加え「適確に」営まなければ適格性がないと判断されることになった。現行法では「漁業を営む(現実として漁船が稼働できる)」ことができれば許可されたが、今後は「営む」だけでは足りず、「適確に営む」ものでないと許可しないことになったのである。では、その「適確に」とはどのような基準に基づき判断されるのかが全く規定されておらず、完全に行政の恣意的な運用が可能になっている。わかりやすく言えば「許可担当者の腹一つでその漁業者は生死を決められてしまう」のである。

国民の権利義務を行政の恣意的判断にゆだねるような法律は、憲法で定めた「法の支配」すなわち「人の支配」(つまり権力者の恣意的判断)を排して、理性の法が支配するという概念に反し、財産権の侵害にも相当することから違憲である。よって、改正法案の「適確に」は削除し、現行法の記述通りに再修正すること。

(②について)
 現行法で「漁業を営むに足りる資本その他の経理的基礎を有しない」と規定しているのは、限られた許可隻数において許可を受けた経営者が、漁船を稼働させることができないとなれば、漁業に課せられた国民への使命を果たすことができないため、必要最小限の要件を課したものであると理解される。しかし、改正法では「資本その他の経理的基礎」を有していたとしてもそれでは不十分で「生産性」を有していることが新たに課せられている。

 これはすでに「3-6 許可を受けた者の責務」で触れたが、「生産性」とは規制改革推進会議が理想とする漁業者を削減し一人当たりの漁獲量を増大させる利益優先のノルウエー型漁業のことを意味し、地元の雇用を重要視するために、給与コストが高く利益率(生産性)の低い漁業者はたとえ漁船を稼働できたとしても許可を受けられないことに変更することを意味する。これは漁業法という法律の根幹を揺るがしかねない大きな国の方針転換である。すなわち、漁業に課せられた「五つの使命」
①食糧供給
②雇用
③利益
④地域共同体
⑤生態系・環境
のうち、「③利益」を優先する漁業許可制度に転換しようとするので、これは地方の雇用機会のさらなる縮小につながるものであり、地方創生の観点からも極めて不適切な改正であり、現行法の記述に再修正すべきである。

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