改正後の漁業法等の規定事項案に対する修正意見その④(海区漁場計画)

4-1 海区漁場計画
案文

海区漁場計画
(1)都道府県知事は、その管轄に属する海面について、五年ごとに、海区漁場計画を定めるものとする。ただし、管轄に属する海面を有しない都道府県知事にあっては、この限りでない。
(2)海区漁場計画においては、海区ごとに 、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 当該海区に設定する漁業権について、次に掲げる事項
イ 漁場の位置及び区域
ロ 漁業の種類
ハ 漁業時期
ニ 存続期間
ホ 区画漁業権については、個別漁業権(団体漁業権以外の漁業権をいう。)又は団体漁業権の別
へ 団体漁業権については関係地区(自然的及び社会経済的条件により当該漁場が属すると認められる地区をいう。)
ト イからへまでに掲げるもののほか、漁業権の設定に関し必要な事項
二 当該海区に設定する保全沿岸漁場について、次に掲げる事項
イ 漁場の位置及び区域
ロ 保全活動の種類
ハ イ及びロに掲げるもののほか、保全沿岸漁場の設定に関し必要な事項

4-1-1 修正
 区画漁業権のうち「個別漁業権(団体漁業権以外の漁業権をいう。)」を「入会漁業権」に修正

(理由)
 そもそも区画漁業権に経営者免許漁業権(個別漁業権)が設けられた理由は、非組合員による入漁権による漁場行使を念頭においたものであり、「個別漁業権」なる名称は通称にすぎず、これまでも漁業法においてそのような法律用語は使用されていない。また、規制改革推進会議水産WGの議論においてすら、区画漁業権における漁協免許と個別免許のあり方及びそのメリット・デメリットについて全く議論がされていない。よって、現行法の通り「個別漁業権」なる用語は不要であり、「入会漁業権」が適切である。
また、世界の学説でも限られた公共水面は、利害関係者による自主管理により行使させるのが最も適切とされており、現に組合管理漁業権として適切に管理されている。よって、個別漁業権を新たに設ける必要性は、営利を目的とする一部企業にとってそれが都合がよいという理由のみであり、そのような制度改正は、国民全体の利益に反するため必要がない

4-1-2 追加
区画漁業、定置漁業についての、その関係地区を追加

(理由)
現行漁業法第11条第1項では、以下のように規制されている。

第十一条第1項 
都道府県知事は、その管轄に属する水面につき、漁業上の総合利用を図り、漁業生産力を維持発展させるためには漁業権の内容たる漁業の免許をする必要があり、かつ、当該漁業の免許をしても漁業調整その他公益に支障を及ぼさないと認めるときは、当該漁業の免許について、海区漁業調整委員会の意見をきき、漁業種類、漁場の位置及び区域、漁業時期その他免許の内容たるべき事項、免許予定日、申請期間並びに定置漁業及び区画漁業についてはその地元地区(自然的及び社会経済的条件により当該漁業の漁場が属すると認められる地区をいう。)、共同漁業についてはその関係地区を定めなければならない

これと比較すると、案文では、地区制限は、区画漁業のうち団体漁業権及び団体漁業権たる共同漁業のみにしか規定されていない。これの意味することは、例えば三重県答志島周辺に設定された「区画漁業のうち個別漁業権」及び「定置漁業」を行使する個人又は法人の住所が、東京都であってもかまわないということである。ということは、地区制限がなければ水協法において定められた組合員資格の住所要件を満たせず、組合員になれない。これを逆に言えば、区画漁業のうち個別漁業権及び定置漁業権の行使者は、遠方に住む非組合員であってもかまわないことを国が推奨していることになる。この組合員を積極的に減少させる法律改正について、全漁連会長は「革新的改革、ありがとうございます」と言っているのであるから、まさに背任罪そのものである。

これまでも真珠養殖業や定置漁業は経営者免許漁業権として位置づけられていたが、地区制限があったことから、組合員として組合の下にそのトラブルの解決が図られた。今後は非組合員でないだけでなくその漁業者が地元に住んでいない遊漁者のように時々現れるだけでもよいということになる。これでは地先海面における各種漁業権漁業間のトラブルの解決が極めて困難になることが避けられない。さらにこれは漁業調整面だけでなく、津波など災害発生などのときにその所有する漁業施設や船舶の避難や固定作業が迅速に行われず、そのことで他の漁業者にも被害を与えかねないものとなることから、これは地元に住む漁業者にとって到底容認できない制限の解除であろう。

さらに、これは漁業の現場にいればすぐにわかることであるが、その地域に住所がなくて遠くから通うような人間に漁業そのものがまともにできるのかという本質的疑問である。例えば組合員であれば年間90日以上操業しないと正組合員資格が得られず、漁業権行使規則に基づく漁業もできないが、これら住所要件を外された漁業者は組合員でない(なる資格がない)ので、その縛りもなくなり、いったい何日操業するのであろうか。これでは、単に権利を保有するだけの目的で漁業権を取得することを推奨するようなものである。このような者が漁業の成長産業化に貢献するとは到底あり得ない。遠くに住む漁業権の権利保有者(網元)と、現地でその権利を借りて漁業を営む者(小作人)という戦前の封建的な漁業体制への復帰を目論むとんでもない改悪である。

4-1-3 削除
漁業法の体系に適応しない保全沿岸漁場に関する案文を削除

(理由)
この新登場の「保全沿岸漁場に関する規定」の本体は、別条において規定されているものであるが、いったい何が目的で、法律に定める必要性についての説明が全くない。陸上の経済活動等が主要因で漁場が汚染されているのを、これまで漁業者が自主的に(ボランティアで)きれいにしてきた環境保全活動を指すのであれば、これは漁業法の目的(漁業生産活動のための海面利用と資源管理に関する約束事を定めるもの)とは全く次元の異なる問題になる。

漁業法は民法(私法の一般法,すなわち,市民の日常的生活関係を規律しつつ,私法の一般的・基礎的部分をなすもの)のうちの漁業生産活動に係る特別法として位置づけられているが、環境保全活動は「私人間の利害関係を規律する」問題ではなく、より広範な国民全体に係る自然環境保護という公共性の強い政策の体系下で行われるものと考えられる。よって、漁業法とこの「保全沿岸漁場に関する規定」の考え方を一体的に規定することは、非常に違和感がある。例えばこれをそのまま陸上の経済活動に適応するとすれば、会社法(会社の設立、組織、運営、管理などについて定めた法律)において、会社の建物の周辺道路における社員による空き缶拾い活動を、会社の定款に記載することを義務付けるようなもので滑稽としかいえない。

よって、仮にこの「保全沿岸漁場に関する規定」について法律化が必要としても、それは例えば「沿岸海面環境保全法」という別の法律の体系により、その沿岸漁場の環境悪化(埋め立て含む)の原因者である陸域の産業活動に係る企業等の環境保全活動に係る責務が規定され、そのうえで沿岸海面を生産活動に利用している被害者である漁業者(漁協)における環境保全活動が規定されるべきである。そうしなければ、海の汚染の原因者で加害者である経済界は何の義務も負わず、漁業法改正により漁業権の付与の条件に、被害者である漁業者のみにその後始末を押し付けるとんでもない規定となり、わかりやすく言えば「責任転嫁」の規定となる

修正案

海区漁場計画
(1)略
(2)海区漁場計画においては、海区ごとに 、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 当該海区に設定する漁業権について、次に掲げる事項
イ~ニ 略 
ホ 区画漁業権については、団体漁業権又は入漁権の別
へ 定置漁業権、区画漁業権については関係地区(自然的及び社会経済的条件により当該漁場が属すると認められる地区をいう。)
ト 略
二 削除

 

4-3 海区漁場計画の作成の基準
案文

都道府県知事は、海区に係る海面全体を最大限に活用するため、漁業権が存しない海面をその漁場の区域とする新たな漁業権を設定するように努めるものとする。

4-3-1 追加及び削除
 漁業権が存しない海面として、世界第6位の面積を有する日本周辺の排他的経済水域こそが最も重要なところ、農林水産大臣に領海外の「沖合海域漁場計画」の策定を義務付ける。なお、漁船漁業との調整問題が不可避な優良漁場が存在する領海内における新たな漁業権の設定の努力義務については削除する

(理由)
(1)国自らが率先して取り組むべき課題 
国が施行する特定漁港漁場整備事業のうち、漁港漁場整備法第4条第1項第2号に掲げる事業として「フロンティア漁場整備事業」がある。これは同条第2項第1号において漁場整備事業に係る国と都道府県の分担水域が定められ、排他的経済水域は国、領海内は都道府県となっている。よって、これにならい、国が口先だけで都道府県に指示するのではなく、漁業権において自らも分担すべきである。
 また、規制改革推進会議の水産ワーキング・グループにおける「今期の主な審議事項(平成 29 年9月 20 日 水産ワーキング・グループ 座長 野坂 美穂)」において「世界第6位の排他的経済水域(EEZ)を有効に活用し持続可能で成長力ある漁業を実現する」とあったことを踏まえると、その漁業権が存していない広大なEEZの活用は重要な政策課題であり、農林水産大臣が自ら手本となり新たな「フロンティア漁業権漁場」を率先して設定するように努めるべきであるから。

(2)領海内は知事がその水域の漁業特性に即し総合的見地から漁業のあり方を判断すべき問題。
領海内は知事許可漁船漁業にとっての優良漁場が存在することから、あえて漁業権を設定していないところが多くあり、その海面を排他的に使用する漁業権の新設は、漁船漁業の操業の支障となり調整問題の発生が避けられない。よって「モリカケ水産」の漁業権を拡大することの努力義務を一方的に課すことは、中立公正であるべき行政の指針としては極めて不適切である。また領海の面積はEEZのそれと比較すれば1/10に過ぎないことから、国による「沖合海域漁場計画」が策定されることになれば、「海面全体を最大限に活用」の目的は十分達成される。よって、都道府県知事に対する努力義務は削除すべきである。

(修正案)

農林水産大臣は、排他的経済水域を最大限に活用するため、漁業権が存しない領海外の海面において、「沖合海域漁場計画」を作成し、同海面における新たな漁業権を設定するように努めるものとする。なお、この場合の作成の手続については、領海内の漁業権に係る都道府県知事による手続に準じる。

 

4-4 農林水産大臣の助言
案文

 農林水産大臣は、4-(4)の検討の結果を踏まえて、都道府県の区域を超えた広域的な見地から、我が国の漁業生産力の発展を図るために必要があると認めるときには、都道府県知事に対し、海区漁場計画の案を修正すべき旨の助言その他海区漁場計画に関して必要な助言をすることができる。

4-4-1 削除
 地方分権推進に反する規定であるため。

(理由)
地方分権推進は「地方公共団体の自主性及び自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図るため、国と地方の役割分担を明確にし、住民に身近な行政をできる限り身近な地方公共団体において処理することが基本」との考え方により行われ、その結果、沿岸漁業管理が自治事務になったものである。また現実においても「都道府県の区域を超えた広域的な見地」からの大臣による助言は、県境を越え回遊する資源の管理という立場からはあり得るとしても、都道府県地先海域において明確に地理的に区分される漁業権においては「都道府県の区域を超えた広域的な見地」からの課題は存在しない。
よって、「我が国の漁業生産力の発展」は、大臣と知事がそれぞれ分担した漁業管理を適切に行うことにより国全体として達成されるものであり、それを再び地方の自主性及び自立性を奪う国による介入権を強める「助言」に係る規定は、地方の漁業生産力の発展を損なうことになる。なお、この規定は現行漁業法にはなかった規定であり、その意図は「モリカケ水産」への利益供与のために知事に圧力を加える手段として利用されることは明白で、「余計なお世話」どころではない、極めて危険な規定でもあることから削除すべきである。

4-5 農林水産大臣の指示
(案文)

農林水産大臣は、次の各号のいずれかに該当するときには、都道府県知事に対し、海区漁場計画を変更すべき旨の指示その他海区漁場計画に関して必要な指示をすることができる。
一 前条の規定により助言をした事項について、我が国の漁業生産力の発展を図るため特に指示の必要があると認めるとき。
二 都道府県の区域を超えた広域的な見地から、漁業調整その他の公益のために特に必要があると認めるとき。

4-5-1 一部削除
 一については、地方分権に反するので削除

(理由)
上記4-4-1において説明したとおり、「我が国の漁業生産力の発展を図るため」には、大臣と知事との漁業管理の分担を明確にし、大臣が知事の権限に介入(指示)できないようすることが必要であると、地方分権推進において整理された。よって、その介入権を再び復活させることは地方分権の精神に反し、我が国の漁業生産力の発展を妨げることになるので削除。

4-5-2 修正
二については現行法の規定に修正する

(理由)
二に該当する現行法での条文は、

6 農林水産大臣は、都道府県の区域を超えた広域的な見地から、水産動植物の繁殖保護を図り、漁業権又は入漁権の行使を適切にし、漁場の使用に関する紛争の防止又は解決を図り、その他漁業調整のために特に必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、第一項又は第二項の規定により免許の内容たるべき事項、免許予定日、申請期間及び地元地区若しくは関係地区を定め、又はこれを変更すべきことを指示することができる。

となっており、大臣が知事に対し指示できる事項について、案文のようなあいまいな規定で際限なくその範囲を広げることにないようにならないように、規定されこちらの方が優れているため。

 

 

(追記) 最も危惧していた団体漁業権のなかに個別漁業権が認められるのか否かについて

水産庁の説明会に、私は合計4回出席しましたが、そのたびごとに以下の質問と要望をしました。

①現行法では、特定区画漁業権(組合管理漁業権)に基づき養殖を営む組合員の一部の者が、「自分は経営者免許区画漁業権で免許を受けて、組合の定める漁業権行使規則に基づかず、養殖を営みたい」ということは認められないが、改正漁業法では認められるのかどうか。

②宮城県水産特区のように組合管理漁業権の一角に経営者免許漁業権が割り込むことを認めると、優良漁場を巡る紛争を防止するための漁場の一体的管理ができない。よって、改正漁業法において、海区漁場計画作成の段階で、当該区画漁業権に係る漁業者の2/3以上の賛成をもって「団体漁業権」としての免許を受けたいとの要請があった場合、「個別漁業権」として免許を受けたい漁業者がいたとしてもそれは認められないように規定すべきである。

その結果どうなったのか、それが以下の条文です。

( 海区漁場計画の要件等 )
第六十三条 海区漁場計画は、 次に掲げる要件に該当するものでなければならない。
一 それぞれの漁業権が、 海区に係る海面の総合的な利用を推進するとともに、 漁業調整その他公益に支障を及ぼさないように設定されていること。
二 海区漁場計画の作成の時において適切かつ有効に活用されている漁業権( 次号において「 活用漁業権 」という。 )があるときは、 前条第二項第一号イからハまでに掲げる事項が当該漁業権と実質的に同一と認められる漁業権( 次号において「 同一漁業権 」という。 )が設定されていること。
三 前号の場合において活用漁業権が団体漁業権であるときは、 同一漁業権が団体漁業権として設定されていること
四 前号の場合のほか、 漁場の活用の現況及び次条第二項の検討の結果に照らし、 団体漁業権として区画漁業権を設定することが、 海区における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合には、 団体漁業権として区画漁業権が設定されていること
五 前条第二項第一号ニについて、 第七十五条第一項の期間より短い期間を定めるに当たっては、 漁業調整のため必要な範囲内であること。
六 それぞれの保全沿岸漁場が、 海区に設定される漁業権の内容たる漁業に係る漁場の使用と調和しつつ、水産動植物の生育環境の保全及び改善が適切に実施されるように設定されていること。

( 海区漁場計画の作成の手続 )
第六十四条 都道府県知事は、 海区漁場計画の案を作成しようとするときは、 農林水産省令で定めるところにより、 当該海区において漁業を営む者、 漁業を営もうとする者その他の利害関係人の意見を聴かなければならない。
2 都道府県知事は、 前項の規定により聴いた意見について検討を加え、 その結果を公表しなければならない。
3 都道府県知事は、 前項の検討の結果を踏まえて海区漁場計画の案を作成しなければならない。

以上の条文に基づき、私の要望に対しどういう結果になったかですが、残念ながら相変わらずどうにでも解釈できる規定でしかなく、要望がかなえられたとは到底言えないものになっています。

(1)行政による恣意的な判断により漁業権を取り消すことができる。
「適切かつ有効に活用されている漁業権=活用漁業権」という行政による恣意的な判断が法律で認められることになれば、そこに「モリカケ水産」が第64条に基づき参入しようとしたときに、邪魔な既存の漁業権は、「活用漁業権ではない」とされることになります。これに対し、漁業者が「しっかり活用している」と裁判に訴えても、客観的な基準がない以上、裁判官は行政庁の処分の違法性を問えず敗訴となるのは確実とおもいます。おそらく、現実としては「モリカケ水産」が手を挙げるかどうかで、どうにでもなるという不安を常に漁業者は抱えていかねばならないことになります。

(2)いちおう団体漁業権は団体漁業権として継続できるようになっている。
63条第3項で、「活用漁業権が団体漁業権であるときは、 同一漁業権が団体漁業権として設定されていること」とあり、「活用漁業権」という恣意的な判断基準を満たした?ときには、その関係漁業者の多数による要請を確認せずとも、そのまま団体漁業権として設定することになっています。少しは安心?できそうにもうかがえます。

(3)極めて悪質な基準が追加され、最後に「団体漁業権」として認めない新規定を設けた。
 そうは簡単に問屋が卸してくれません。わかりやすい事例をあげます。加計学園による獣医学部の新設において、競合相手の京都産業大学を振るい落とすために用いた汚い手法が、「広域的に獣医師系学部が存在しない地域に限り獣医学部の新設を可能」とする法改正の実施でした。これは始めから隠された結論がありながらも、それがいかに公正な基準に基づき「なんらやましいところがなくそうなった」かのごとく見せるための「全く不公正な公正らしき基準」を追加する方法でした。

 そこで、63条第4号の規定にある

「前号の場合のほか、 漁場の活用の現況及び次条第二項の検討の結果に照らし、 団体漁業権として区画漁業権を設定することが、 海区における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合には、 団体漁業権として区画漁業権が設定されていること。」

は、まさに加計学園に用いた極めて悪質な手法と全く同じです。

 というのは、
「前号の場合のほか」の「前号の場合」とは「活用漁業権として認められれば団体漁業権として設定する」です。つまり、活用漁業権であればそのまま団体漁業権として認めて何ら問題がないはずです。そのように水産庁は何度も繰り返し、説明会で説明してきました。しかし、これでは「モリカケ水産」が宮城県水産特区会社のように「自社は組合に関係なく好き勝手に自由に養殖をやりたい」と申請してきたときに困ることになります。

 そこで、例え活用漁業権の条件を満たしていても、「モリカケ水産」のために個別漁業権を団体漁業権の中に設定する抜け道を用意しておかなければなりません。そこで、「海区における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合」という条件を追加したのでしょう。
しかし、ちょっと考えただけでも以下の疑問が生じます。

なぜ「活用漁業権」の条件を満たしただけでは、不足なのでしょうか
「最も資する」とはいったい何と何を比べたたうえでの、「最も」なのでしょうか。団体漁業権の対象者は唯一の組合であり、比較すべき対象はいないはずです
団体漁業権には「最も資する」という条件を付けながら、好き勝手に自分だけが漁場を使えれば良い個別漁業権であれば、「最も資する」ものでなくてもよいとするという理由は何でしょうか

 正直に言ってこの規定はハチャメチャです。しかし、この規定で何をしたいのかだいたい想像がつきます。条文をそのまま読むのではなく逆に読むのです。それは、「モリカケ水産」が「海区における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合」に、好き勝手放題に漁場を使うことができる「個別漁業権」を与え、残りを団体漁業権とするためのものです。それを宮城県水産特区の事例をあげて説明しましょう。

村井嘉浩宮城県知事は、その後不祥事を起こした上に、赤字経営に至った宮城県水産特区会社を、個別漁業権として免許するにあたり「次の日本の水産業のモデルとなる」として称賛しました。その根拠は「復興推進計画の目標」に掲げられた「民間企業の技術・ノウハウ等を活かし,カキ養殖生産から加工・販売まで一貫した6次産業化等の取組を行う」からでした。

まさに、これこそが「海区における漁業生産力の発展に最も資する」取組なのです。よって、「モリカケ水産」が同じように大手加工販売会社と提携し「自社による養殖では、付加価値の高い製品を生産できる、すなわち、漁業生産力の発展に最も資するのは自社であり団体漁業権の漁業者ではない」といってきたらどうなりますか。まさに、63条第4号の規定にとっては「それこそ待っていました!」ということになり、「残念ですが、活用漁業権のハードルは超えましたが、漁業生産力の発展に最も資する、のハードルは超えられませんでした」となるわけです。

ということで、私が一番危惧している団体漁業権の中に個別漁業権が設定される可能性があるのかなにのかについての結論は「63条第4号の規定に基づけばあり得る」となり、水産庁のずる賢さにはほとほと呆れます。63条第4号は削除しなければなりません。

それにしても私は与党の国家議員は、天才や神童ぞろいと思わざるを得ません。この膨大でわかりにくい改正法案を理解して、さっさと短時間の審議で通過させる能力があるのですから。でも1年後になって「適切かつ有効に人生を活用していない国民は、答志島に島流しに処す」という条文がそっと入れられていたことに気が付くかもしれませんね。誰も中身がわからないのに成立してしまう、こんな危ない法律が存在してよいのでしょうか。

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