地方分権の基本理念に基づく改訂漁業法の運用条例の制定に向けて

平成30年12月8日の未明、まさに真珠湾攻撃のごとく改訂漁業法が可決成立しました。よりにもよってこの日は私の誕生日。本当に素晴らしいプレゼントをいただきました。そこで、なにかお返しをしないとなりません。なにがよいかといろいろ考えましたが、やはり国が一番喜びそうなのが都道府県条例です。

 私は、「月刊漁業と漁協」(漁協経営センター出版部)の平成30年11月号に「水産政策改革との長期戦に備えて ー戦い続ける限り必ず元に戻せるー」を投稿し、その最後の部分で以下を書きました。

種子法は国会ではほとんど議論もされずに廃止されたが、ここで予期しなかったことが起こった。 なんと、種子供給の不安定化や価格高騰が起こるのではないかという農家や消費者の不安から、その法律が廃止された平成30年4月1日の同日に、 新潟・埼玉・兵庫県が廃止された種子法と同様の内容の条例を施行したのである。さらにこの動き が他県も出てきているという。つまり、これに習えば当改革に従い漁業法が改訂されるが、その改 訂に合わせ、都道府県が現行漁業法の仕組みの通りに、自治事務である沿岸漁業・養殖業の管理運用を継続するための「地方分権の精神に基づく漁業法の適切な運用に関する条例」のようなものを制定すればよいのである。

そこで今回は、その都道府県条例について考えてみたいと思います。漁業法改訂は終わりではなく、戦いの始まりであり、まだまだ戦える余地が残っている。戦場を地方議会の場に移し、最後まであきらめずに頑張ろう、という気持ちになっていただければ幸いです。

1 地方分権の基本理念とは
 地方分権とは、地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年7月17日)(通称:地方分権一括法)の成立により、それまでの「国が命令し地方が従う」という行政枠組みから「国と地方の対等な関係」へと移行しました。なお、今は地方分権改革推進法(平成18年12月15日)に従い、さらに分権化が促進されていますが、そこには何が書かれているのか、その概要を簡単に以下にまとめてみました。

〇地方分権改革推進法 法律第百十一号(平一八・一二・一五)より
以下概要
(目的)第1条
国民がゆとりと豊かさを実感し、安心して暮らすことのできる社会を実現するため、地方分権改革の推進について、基本理念並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにする。
(基本理念)第2条
国民福祉の増進に向かって、
・国と地方の分担役割を明確する。(理念1)
・地方の自主性及び自立性を高める。(理念2)
・地方が自らの判断と責任において行政を運営する。(理念3)
個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図る。(理念4)
ことを基本として行われるものとする
(国の施策・関与)第5条
国は
・国家存立にかかわる事務
・全国的に統一して定めることが望ましい事務
・全国的な視点に立って行わなければならない施策など
を重点的に担い、
住民に身近な行政はできる限り地方にゆだねることを基本として、地方への権限の移譲を推進。
・地方自治法第二百四十五条に規定する地方に対する国の関与(注)の整理及び合理化の措置を講ずる。
・この措置を講ずるに当たっては、地方の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。
(注:関与の種類 イ 助言又は勧告 ロ 資料の提出の要求 ハ 是正の要求 ニ 同意 ホ 許可、認可又は承認 ヘ 指示 ト 代執行)
(参考:地方自治法における国の関与の関連規定)
地方自治法第245条の3
国の地方への関与は、その目的を達成するために必要な最小限度のものとするとともに、地方の自主性及び自立性に配慮しなければならない。

皆さんこれを見て何か感じませんか。私は、これら条文を見て改訂前の漁業法(以下「前法」)の精神と非常に通じるところが多いことに驚いたのです。「住民に身近な行政はできる限り地方にゆだねる」などは、原則知事免許個別漁業権に移行されてしまった「組合による漁業権の自主的管理」そのものではありませんか。

また、改訂後漁業法(以下「後法」)では、海区漁場計画に国の関与(わかりやすく言えば「企業を押し込もうとする余計な口出し」)が新たに設けられましたが、これはここにある「国の関与の整理及び合理化の措置を講ずる」に完全に逆方向のもので遺憾極まりないことです。地方に住む私たちは、このような地方分権の理念に逆行する漁業法改訂におとなしく従ってはならないと強く感じざるを得ませんでした。

2 自治事務と法定受託事務について
 もう少しくわしく、地方分権の経過について見ていきます。平成11年の地方分権一括法により、それまでの地方における機関委任事務が廃止され、国の直轄執行事務以外は自治事務と法定受託事務とに振り分けられました。それまでの機関委任事務とは法令に基いて国から委任され、「国の機関」として処理する事務であり、このため当該事務に関しては地方公共団体の条例制定権が及ばず、地方議会の関与も制限されていました。そうして、新たに設けられた自治事務と法定受託事務の位置づけ等は以下の通りです。

(総務省HPより)

 この時に漁業権漁業は自治事務、知事許可漁業は法定受託事務とされました。上の図でいうと漁業権漁業が、左側の自治事務のうち「法律・政令により事務処理が義務付けられるもの」に該当し、知事許可漁業が右側の法定受託事務に該当します。このことから、漁業権漁業については「原則として、国の関与は是正要求まで」ということで、地方の自立性、自主性等が尊重されなければならないものとなったのです。

 なお、法定受託事務は国の関与が「代執行」まで認められているように、強い国の関与権限が残っていますが、以下の地方分権一括法附則第250条において、これにおいても地方分権を推進する方向での見直しがされることになっています。

(検討)
第二百五十条 新地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務については、できる限り新たに設けることのないようにするとともに、新地方自治法別表第一に掲げるもの及び新地方自治法に基づく政令に示すものについては、地方分権を推進する観点から検討を加え、適宜、適切な見直しを行うものとする。

 

3 条例制定権について
 地方が個性豊かで活力に満ちた地域社会を実現するための漁業権漁業及び知事許可漁業の運用ルールを定めようとする場合は、そのための条例を定めなければなりません。その権限の根拠は、
〇憲法94条「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と、
〇地方自治法第14条1項「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定することができる。」に
基づきます。

なお、地方自治法の第2条第2項の事務とは、「普通地方公共団体は、地域における事務及びその他の事務で法律又はこれに基づく政令により処理することとされるもの。」なっており、漁業権漁業及び知事許可漁業の事務は、後者の事務に該当することから条例を制定することができます

ただし、法定受託事務である知事許可漁業については、国の関与が強くある結果、条例を制定できる余地はそれほど大きくないといわれていますが、以下のように自治事務に近い非本来的法定受託事務という考え方もあり、まさに知事許可漁業こそがそれに近いものととらえ、次の4以下の論考においては、条例の制定において漁業権漁業と知事許可漁業については特段それを区分しないことにしました。

地方公共団体の事務であるから、憲法の規定に照らしても、条例を制定することが可能である。ただ、法定受託事務については、国の関与が強くある結果、条例制定できる余地はそれほど大きくないといわれる。しかし、そうした理解は、妥当ではない。法定受託事務であっても、たとえば、国政選挙のように、地方公共団体が独自の政策裁量を働かせる余地が小さいものもあれば、自治事務に近い性格を持つために、その余地が大きいものもある。前者を、本来的法定受託事務、後者を、非本来的法定受託事務という。産業廃棄物処理施設の設置許可事務は、法定受託事務であるが、振り分けの経緯をみると、その整理は、暫定的なものであったことがわかる。また、機関委任事務制度のもとで立地をめぐる紛争が多発していたのは、まさに、事務の性格そのものに由来するからであった。したがって、法定受託事務であるという理由で、条例の対応を排除するのは、適切ではない。自治事務とされた産業廃棄物処理計画と許可処分を条例のなかでリンクさせて、地域的事情を踏まえた産業廃棄物処理行政が展開されるべきである。(横浜国立大学 北村喜宣 公共政策 2000)

 

4 法律と条例の矛盾抵触について
(1)法律先占論の消極的な役割
 そうはいっても、条例は、憲法では「法律の範囲内で」、地方自治法では「法令に反しない限りにおいて」制定されることから、条例は効力の面で法律・命令に劣り法律に抵触する条例は無効となります。しかし、これを厳格に貫くと、すでに法律が規定している事項には条例で定めることはできない(これを「法律先占論」という)ことになり、過度に条例制定権を制限することになります。

 そこで、1960年代の公害規制の際に問題(地域によってはその汚染度が異なり、深刻な地方では国が法律で定める基準では住民の健康が守れない)となり、
①法律よりも厳しい基準を定める「上乗せ条例」
②法律が規制していないものを規制する「横出し条例」
など、地方の実態に応じ、法律で定めたこと以上の規制を条例で上乗せする必要性が生じ、その適法性における議論において、法律先占論は消極的な役割を果たした(早稲田大学法学部 教授 戸波江二 専門憲法)とのことです。

(2)徳島市公安条例事件最高裁判決による条例の適法性判断3基準
法律と条例との関係における適法性を判断するのものに、最高裁判所の判例に基づく3基準というものがあります。これは、徳島市公安条例事件(道路における集団行進について、道路交通法における交通秩序維持に止まらず、地方公共の安寧と秩序の維持を目的とした上乗せ規制を課した条例の適法性について争われたもの)に関する最高裁判決(昭和50年9月10日)であり、その判例の該当部分を以下に引用します。

徳島市公安条例事件最高裁判決(昭和50年9月10日)

条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾牴触があるかどうかによつてこれを決しなければならない
基準1
ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右規定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうる。
基準2
特定事項についてこれを規律する国の法令と条例とが併存する場合でも、後者が前者とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によつて前者の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない
基準3
両者が同一の目的に出たものであつても、国の法令が必ずしもその規定によつて全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるときは、国の法令と条例との間にはなんらの矛盾牴触はなく、条例が国の法令に違反する問題は生じえない

わかりやすく解釈すれば
基準1は、法令が「これ以上の規制は行ってはならず、放置せよ」という趣旨の場合は、上乗せ条例はNO
基準2は、法令とは異なる別の目的で、法令目的を阻害しない横出し条例はOK
基準3は、法令が全国一律規制ではなく、地方実情による規制を容認している場合は、地方実情上乗せ条例はOK
ということになるでしょう。

なお、なぜ国が地方に「そんな条例をつくるなどまかりならん」とストップをかけないのでしょうか。それは、地方の条例制定権は憲法で定められた地方議会の権限であり、国がそれに待ったを直接かける権限がないからです。よって、その条例により不利益を被った企業などが裁判に訴えその結果として、始めてその適法性が判断されるということになるのです。逆に言えば条例は、司法の場でそれが違法と結論が出るまでは、地方議会が定めた条例として尊重されるということです。

5 漁業法の運用に関する条例制定における地方の基本理念
 
 前置きの制度の説明が長くなりましたが、いよいよ本題に入ります。自治事務である漁業権漁業等の事務の適切な運用のためには、地方はなにを心掛けなければならないのでしょうか。それは、上記1の地方分権改革推進法のほか地方自治法などに規定された以下の6理念ではないかと思います。
(1)地方分権改革推進法における基本理念
理念1:国と地方の分担役割を明確する。
理念2:地方の自主性及び自立性を高める。
理念3:地方が自らの判断と責任において行政を運営する。
理念4:個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現を図る。
(2)地方自治法における基本理念
理念5:地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保
理念6:住民の福祉の増進

(参考)
地方自治法第1条
この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。
地方自治法第第1条の2 
地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。

 それにしても、どうして地方自治の理念とは前法の理念にピッタリなのでしょうか。今回前法の1条から削除された「民主化」という言葉が、地方自治法の1条に明確に位置づけられているのには驚きました。そこに共通するものは、自治を尊重するという民主主義の原点ではないでしょうか。国の直轄執行事務である大臣許可漁業では、反民主化を成し遂げた安倍内閣独裁化漁業法の下で、参入企業の儲けのために邁進しても問題ないでしょうが、地方はそうはいきません。漁業法の前に、地方自治関連法律に基づく6理念を遵守することが義務付けられているのですから。よって、地方には反民主化された改訂漁業法の運用において、6理念が守られるような漁業法運用のための条例を定める義務があると思います。

6 改訂漁業法の問題点、対応条例案、法律との矛盾抵触について
(1)総論
 今回の改訂の問題点は、大きく3点に分類できると思います。よって、それが地方自治のどういう理念に反するのか、またそれを是正するための条例が適法性3基準に照らしどうなのかを以下に簡単にまとめました。

問題点①漁業者・海区委による自主管理体制の弱体化(知事への権力集中)
漁業法目的からの「民主化」等の削除、組合管理漁業権を原則知事管理漁業権化、海区委の知事任命制などの改訂内容は、地方の理念2「自主性及び自立性を高める」5「民主的にして能率的な行政」などに反するものであることから、地方は理念に基づいた運用を図るための条例を制定しなければなりません。
(法律との矛盾抵触)
国は民主化や自主管理などを禁止すべきという放置の趣旨からの改訂でないとしていることから、基準1に抵触せず問題ないと思います。

問題点②免許基準等の曖昧化(知事による恣意的運用を可能に)
新たな優先順位である「適切かつ有効」「最も寄与する」など曖昧な基準では、知事による恣意的な運用が可能であり、理念5「民主的にして能率的な行政の確保」に反することから、客観的な基準による運用を図るための条例の制定が必要です。
(法律との矛盾抵触)
国は改訂の理由を今までのように全国一律に規定するのではなく、地域の実情に応じ判断すべきとしていることから、基準3により問題はないと思われます。

問題点③特定資源管理方法の押し付け(資源の私的資本化)
現実の資源変動に合致しない特定の資源管理方法(TAC数量管理)や資金力のある企業に有利なIQ制度などの国による地方への押し付けは、理念3「地方が自らの判断と責任において行政を運営」4「個性豊かで活力に満ちた地域社会」6「住民の福祉の増進」に反することから、自治事務及び法定受託事務の対象となる漁業が漁獲する資源については、可能な限り地域の実情に適合した資源管理手法を用いられるよう条例で定める必要があります。
(法律との矛盾抵触)
国が担うべき全国的な(特に国際管理下にある)魚種のTAC管理について、地方がどこまで独自の管理(例えばそれを努力量に換算して行うなど)を条例で制定できるかは難しい点があります。一方、IQについては、先獲り競争の一つの是正手段にすぎず、集団管理操業などでそれを抑制できる地域の実情に応じ、適用しないという条例は基準3により問題ないと思われます。

(2)各論
必要となる条例案を考えてみました。以下の条例案文は制定すべき条例のごく一部です。各都道府県庁において検討される場合のたたき台になれば幸いです。以下、後法の問題点、対応条例案、法律との矛盾抵触の順です。

後法第一条(目的)
 前法の目的にあった「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用」や「漁業の民主化を図る」などの規定が削除され地域漁業者による自主的な資源・漁場の管理に係る権利が大きく後退。またその反面知事の権限が大幅に拡大されてしまった。
上記の改訂は、
理念5:地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保
等に明らかに反しており、これを是正するためには、以下のような条例を規定する必要がある。
(対応条例案)

(目的)
この条例は、地方分権改革推進法及び地方自治法に基づき、自治事務である沿岸漁船漁業及び養殖業の漁業権免許事務等において、
・民主的にして能率的な行政の確保を図ること
・住民の福祉の増進を図ること
・自主性及び自立性が十分に発揮されること
等を基本理念とした漁業法の運用を図ることにより、本県漁業の維持発展を図ることを目的とする

(法律との矛盾抵触)
前法から「漁業の民主化」等の規定を削除した理由については、それがすでに定着したというのが国の理由であることから、民主化を否定しておらず、地方が地域の実情に照らし再び反民主化時代に逆戻りしないように、それを入念的に条例で規定しても最高裁判決の基準3に照らし、問題は生じない。

後法第8条第1項( 資源管理の基本原則 )
環境要因に大きく影響される現実の資源変動にほとんど適応しないMSYモデルにより算出された漁獲可能量(以下「TAC」)では適切な管理ができないにも関わらずこれを基本としている。
 特定の資源管理手法を一方的に強制するこの改訂は
理念2:地方の自主性及び自立性を高める。
理念3:地方が自らの判断と責任において行政を運営する。
に反するものであり、以下のような条例を規定する必要がある。
(対応条例案)

(資源管理の基本原則)
1 資源管理においては、対象資源の変動特性及びそれを漁獲する漁業の漁法等の特性を踏まえ、それに適応した資源管理手法として、漁獲努力量管理、漁獲可能量管理又はその併用のいずれを用いるのが適切か、科学的及び地域社会経済的な根拠をもとに決定する。
2 最大持続生産量を実現することができる水準に資源水準を維持し、又は回復させることを基本とする漁獲可能量管理を用いる場合においては、その資源管理の科学的根拠となる親子関係が密度効果により成立することが明確に科学的に立証されている資源にのみ限定することとする。
3 対象資源に親子関係が見られず、資源変動が漁獲よりも環境による影響を大きく受ており、かつ、その科学的な資源変動予想が困難な資源については、漁獲可能量管理によらず、資源変動があっても目標とする漁獲割合に調整が可能な漁獲努力量管理を用いることとする。
4 成長乱獲の防止に当たっては、小型魚の漁獲抑制が可能な漁具等による漁獲努力量管理を用いることとする。

(法律との矛盾抵触)
法律が漁獲量以外の資源管理手法は認めないというものであれば、違法になるがそのような規定になっておらず、法律の一部においては漁獲量を漁獲努力量に換算して用いることができるとも解釈できるところがあるので、基準1と3に照らしても問題ない。

後法第61条(知事の環境保全努力)
知事の沿岸域の環境保全・管理への努力規定が新設されたが、その汚染原因者の活動を規制する法律を主として所管するのは国であり、まず国の努力規定が定められるべきであるがそれがないにも関わらず知事のみに努力規定を課すのは不適切。
この国による知事への一方的な努力義務の押し付けは、
理念1 国と地方の分担役割を明確する。
に照らし大いに問題がある。よって以下のような条例を規定する必要がある。
(対応条例案)

知事は、改訂漁業法第61条に規定する「水産動植物の生育環境の保全及び改善」については、国が所管する法律におけるその目的の達成のための活動を見極め、国と県との役割分担を考慮してその内容を定めるものとする。

(法律との矛盾抵触)
これは国が地方に一方的に義務を押し付けるものであり、地方分権そのものが崩壊しかねない。よって、条例適法性判断3基準とはさらに次元が上の、漁業法と地方分権改革推進法・地方自治法との法律間での矛盾抵触問題でないかと思われる。

後法第66条 ( 農林水産大臣の指示 )
大臣が知事に対し、自治事務である海区漁場計画を変更すべき旨をすることができるという、地方分権から見ると極めて重大な問題のある条項。特に今回新設された「我が国の漁業生産力の発展を図るため特に必要があると認めるとき。」というあいまいな規定を根拠に指示できると言うのは、強引な参入を求める企業が国に働きかけ理念3「地方が自らの判断と責任において行政を運営」6「住民の福祉の増進」に反し地方に圧力をかけるための手段に用いられることは明白であり、厳格な対応が必要。
(対応条例案)

知事は、改訂漁業法第66条に基づく指示については、その内容が地方分権改革推進法第5条及び地方自治法第245条の3に照らし国が担うべき施策であるかどうか、またその指示が、地方の自主性及び自立性を侵すものではないか等を慎重に精査し、必要に応じ地方自治法250条の13の規定に基づき、国の関与に関する審査の申出を行うこととする。

(法律との矛盾抵触)
これはすでに法律において規定されていることを入念的に規定し、それに基づく手続きの知事への義務付けを行っただけであり、法律との矛盾はない。

後法第71条(免許をしない場合)
現在規定されている4不適格要件に問題はないが、2要件を追加する条例を制定する。
(条例案)

改訂後漁業法第71条の各号に掲げる免許をしない場合の規定に以下の者を追加する。
五 企業の社会的責任の理念に欠けている者
六 実質上外国人により支配され、その雇用者の多くが外国人である者

(法律との矛盾抵触)
五の目的は、参入企業が地域漁村社会と共存共栄できるか否かは、極めて重要な観点であり、CSRに欠けた者には免許しないことが適切であるため。これは漁業法が積極的に放置すべきものとしているとは受け止められないので、基準1に抵触せず、基準3に合致しており問題ないと考えられる。
六の目的は、これらの者の参入は、地域漁村社会に大きな不安を与えることから、これを防止する防犯・治安維持という漁業法の目的以外の目的によるものであり、基準2に基づき問題ないと思われる。さらに、漁業法が地域経済に貢献することが期待できないこれら者にも免許を与えるために放置すべきとしているとも考えられないため基準1にも抵触せず、問題ないと考えられる。

後法第73条第2項 (免許をすべき者の決定)
 優先順位が廃止され新規免許においては、「漁業生産の増大並びにこれを通じた漁業所得の向上及び就業機会の確保その他の地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者」とされたが、このようなあいまいな規定では競願時において恣意的な判断が避けられない。
(対応条例案)

改訂漁業法第七十三条第2項の2号における免許すべき者に係る考慮要件は、地元への貢献度がその基本となっていることから、その申請者に地元の漁業者が含まれている比率、人数等をもとに、以下の優先順位に基づき「最も寄与すると認められる者」とする。
 定置漁業権 個別区画漁業権 ともに
①漁協(自営)
②地元漁民世帯の7割以上を含む法人
③地元漁民の7人以上で構成される法人
④上記以外の者

(法律との矛盾抵触)
 国が優先順位を廃止した理由は「全国一律に規定すべきではない」ということであることから、地方が地域の判断で優先順位を復活しても基準3に照らし何ら問題ない。さらに、「順位の高い者が申請してきた場合に、現在の漁業権者が免許を受けられない恐れがある」という理由については、そのような地方実情がなければ地方が「その恐れはない」と判断して問題はない。

後法第62項第1項
(削除された「漁場計画を立てるように海区委からの知事への意見」の復活)
後法第72条
(削除された「免許についての適格性における海区委の権限」を復活)
後法第92条
( 削除された「適格性の喪失等による漁業権の取消し等における海区委の権限」を復活)
漁業法改訂により漁業の目的から「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用」や「漁業の民主化を図る」などの規定が削除され、それに伴う海区委の権限のはく奪
は、
理念2:地方の自主性及び自立性を高める。
理念3:地方が自らの判断と責任において行政を運営する。
理念5:地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保
に反するものでありこれらを条例で復活する必要がある。
(対応条例案)

それぞれ削除された海区委の権限に関する条項を条例で復活し、知事の恣意的な権限の行使を抑制する。(詳細条例案略)

(法律との矛盾抵触)
国が改訂前漁業法にあった「漁業者による漁業調整機構の運用」等を削除した理由には、海区委の権限を積極的に削減しなければならない理由はない。よって、それを復活しても基準1に抵触せず問題はない。

後法第138条(委員の任命 )
 海区委の公選制が廃止され、知事の任命制に移行した。これは
理念5:地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保
に真っ向から反するもの。
(対応条例案)

知事は、改訂漁業法第139条で募集した委員候補者が、漁業者又は漁業従事者から選出される委員の定数を上回った場合は、選挙をしなければならない。

(法律との矛盾抵触)
国は、選挙制度を積極的に廃止しなければならない理由はあげていないことから、復活しても基準1に抵触せず問題はない。

 

(極めて重要な参照事項) 

       種子法廃止に伴う条例制定等に学ぼう

1 種子法廃止に伴う県条例の制定について
 種子法はコメ、麦、大豆の主要農産物の育種、種子の生産・普及を国の管理のもとに都道府県に義務付けた法律でありましたが、規制改革推進会議の農業WGの素人ばかりの委員の意見において「民間参入の邪魔になる法律を廃止せよ」となり、わずか衆参12時間の審議でその廃止が平成29年4月に可決成立したのです。漁業法改訂と同じ構図ですね。
 そしてすでに冒頭に書きましたが、その法律が廃止された平成30年4月1日の同日に、 新潟・埼玉・兵庫県が廃止された種子法と同様の内容の条例を施行し、北海道、山形、長野、富山の4道県が制定に向けて動いており、地域性を加味するなどの工夫もみられる(平成30年11月現在)とのことです。

なお、最新の情報は、日本農業新聞平成31年1月25日農業新聞社説を参照ください。

この条例は法律そのものが廃止されたので、条例と法律との矛盾抵触問題はなかったと思われます。しかし、アメリカの圧力によって外国種子企業の参入を勧めようとするのが、国の売国的政策ですので、これに逆行する郷土愛的条例に対しては、国としては、「アメリア種子企業様のためには、いかなる規制も上乗せしてはならず、放置せよ」という本音をおおぴらに言えないでしょうが、内心適法性判断基準1に抵触すると考えているかもしれません。

2 種子法復活に向けた地方議会からの国に対する意見書提出

 主要農作物種子法は平成30年4月1日、廃止となりましたが、ことの重大性から道府県、市町村議会では種子生産・供給に万全の対策を求める意見書の採択・提出が相次いでいるとのこと。平成30年4月12日現在で2県、26市、20町、14村の合計62自治体で意見書提出が行われ、国や県に新たな法律、あるいは対策を求める声が高まっているとのこと。

3 種子法を巡る地方議会の行動を学び、漁業法改訂に適用するとすれば

(1)市町村議会から県議会、知事に対する条例制定のための意見書提出
(内容)
改訂漁業法のうち、地方自治法に基づく自治事務である沿岸漁船漁業及び養殖業等の管理については、地方分権の基本理念に基づいた運用を可能とする条例を制定すること。

(2)市町村議会及び県議会から国会及び政府に対する意見書の提出
(内容)
今般可決成立した改訂漁業法は、地方の漁業関係者及び行政の意見を全く聞かず策定されたものであり、また、その法律案は膨大な量の内容であったにもかかわらず、国会で十分慎重な審議が行われたと言えない。よって、その施行を急がず、あらためて逐条ごとに漁業関係者の意見を聞き、その修正について国会において再審議すること。

種子法復活条例に学び、以上のような行動が漁業の分野でも、全国各地の沿海市町村や都道府県の議会で生じてくることを期待したいと思います。それにしても、またもやの不祥事。国の基幹統計で不適切な処理が見つかったとのことです。モリカケ問題もそうですが、全然やむことのない不祥事で、もうこの中央政府はどうにもなりませんね。地方が頑張るしかありません。

 

(おまけ)

 次々と立ち上がり、「我々の意見は反映されたのか」「民主的でない!」と語気を強めた。

これは、漁業法改訂の水産庁説明会での様子かと思いきや、「民主的でない」 島根県知事選、自民県議が大量反旗 という見出しの朝日新聞デジタル版2019/01/29 16:30配信の記事でした。これも中央に対する地方の反発の現れのひとつでしょうか。

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