改訂漁業法の運用条例案(たたき台)

お久しぶりです。

聞くところによれば、水産庁は改訂漁業法に基づく政省令を制定するために、与党の部会との間での協議を開始するとのことです。今回の改訂漁業法の目的は、漁業者・漁協から漁場と資源を取り上げ企業に渡し、その企業のみを成長産業化させることです。しかし、改訂漁業法の規定がどうにでも解釈できる非常に曖昧なものであったため、水産庁はもちろん全漁連さえ「大丈夫、大丈夫、サトウが勝手に騒いでいるだけだから心配しないでネ」などと言ってきました。

 しかし、いよいよ「衣の下の鎧」があらわになってきます。JA改革の一環であった「種子法廃止」では国会での付帯決議すら完全に無視した通達が出てきて、これは大変なことになったと初めて気づいたといいます。水産庁や全漁連の言う「大丈夫」を信じてこられた方においては「大坂夏の陣」を迎えた淀君ではありませんが、(改訂漁業法可決成立という)外堀を埋められた段階で勝負がついていたことを痛感させられるでしょう。

 だがあきらめるのはまだ早い。中央での戦いに敗れても地方に戦場を移せば、まだまだ戦う余地は残っています。それは、「自治事務」である沿岸漁船漁業や養殖業などの管理を、地方分権改革推進法や地方自治法の理念に基づき、憲法94条にある「条例」という武器を使い守り続けることです。そこで、今回はその条例案についてより詳しく考えてみました。地方における今後の戦い方の参考になれば幸いです。

 

      改訂後漁業法の問題条項と対応県条例案 
 
(仮称)〇〇県 地方分権の理念に基づく漁業法の運用条例(たたき台)

改訂後漁業法の問題条項 左記に対応した県条例案とその趣旨
(目的)
第一条 この法律は、漁業が国民に対して水産物を供給する使命を有し、かつ、漁業者の秩序ある生産活動がその使命の実現に不可欠であることに鑑み、水産資源の保存及び管理のための措置並びに漁業の許可及び免許に関する制度その他の漁業生産に関する基本的制度を定めることにより、水産資源の持続的な利用を確保するとともに、水面の総合的な利用を図り、もつて漁業生産力を発展させることを目的とする。
(問題点)
改訂前漁業法(以下「前法」)の目的にあった「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用」や「漁業の民主化を図る」などの規定が削除され地域漁業者による自主的な資源・漁場の管理に係る権利が大きく後退した
(目的)
この条例は、地方自治法に基づく自治事務である沿岸漁船漁業及び養殖業の漁業権免許等において、地方自治法第1条に規定された
・民主的にして能率的な行政の確保を図ること
・住民の福祉の増進を図ること
・自主性及び自立性が十分に発揮されること
等を理念とした漁業法の運用を図ることにより、本県漁業の維持発展を図ることを目的とする
(趣旨)
地方自治法にある「民主的」「住民福祉」「自主性」などは前法の目的にあり今回削除されたものに近い理念であることからこれを活かし、条例の制定で改訂後漁業法(以下「後法」)の改悪を是正する運用を図るため

( 資源管理の基本原則 )
第八条第1項
資源管理は、この章の規定により、漁獲可能量による管理を行うことを基本としつつ、稚魚の生育その他の水産資源の再生産が阻害されることを防止するために必要な場合には、次章から第五章までの規定により、漁業時期又は漁具の制限その他の漁獲可能量による管理以外の手法による管理を合わせて行うものとする。

(問題点)
環境要因に大きく影響される現実の資源変動にほとんど適応しないMSYモデルにより算出された漁獲可能量(以下「TAC」)では適切な管理ができないにも関わらずこれを基本としている。

(自治事務おける資源管理の基本原則)
1 水産資源の保存及び管理(以下「資源管理」という。)においては、対象資源の変動特性及びそれを漁獲する漁業の漁法等の特性を踏まえ、それに適応した資源管理手法として、漁獲努力量管理、漁獲可能量管理又はその併用のいずれを用いるのが適切か、科学的及び地域社会経済的な根拠をもとに決定する。
2 最大持続生産量を実現することができる水準に資源水準を維持し、又は回復させることを基本とする漁獲可能量管理を用いる場合においては、その資源管理の科学的根拠となる親子関係が密度効果により成立することが明確に科学的に立証されている資源にのみに限定することとする。
3 対象資源に親子関係が見られず、その変動が漁獲よりも環境による影響を大きく受けており、かつ、その科学的な資源変動予想が困難な資源については、漁獲可能量管理によらず、資源変動があっても目標とする漁獲割合に調整が可能な漁獲努力量管理を用いることとする。
4 加入乱獲の防止に当たっては、小型魚の漁獲抑制が可能な漁具等による漁獲努力量管理を用いることとする。

(趣旨)
20年間のTAC運用の結果を見てもその成果は得られておらず、一方成果があった資源回復計画において用いられた漁獲努力量による資源管理を主体におくことを基本とするため。

第八条第3項 
漁獲量の管理は、それぞれの管理区分において、水産資源を採捕しようとする者に対し、船舶等(船舶その他の漁業の生産活動を行う基本的な単位となる設備をいう。以下同じ。)ごとに当該管理区分に係る漁獲可能量の範囲内で水産資源の採捕をすることができる数量を割り当てること(以下この章及び第四十三条において「漁獲割当て」という。)により行うことを基本とする。

(問題点)
個別割当(IQ)とは、先獲り競争を是正することを目的とするが、日本漁業においては自主的集団操業が可能なことから全く必要のない制度であり、漁業者がその制度の導入を希望したことは一度もない
一方、デメリットとしては、漁獲量の過少申告が自己の利益に直結するため違反を増長し、その取り締りに多大なコストを要する。
また、資源のマネーゲーム化(証券化)であるITQ(譲渡性個別割当)につながる危険性を抱え、公共資本の私的資本化により地域の水産資源が生み出す富の外部流出を招きかねないものとなる。

(自治事務における「漁獲割当て」の導入要件)
1 漁獲量の管理にあたり、当該管理区分において特定水産資源を採捕する者による漁獲量の合計により管理を行うものとする。
2 漁獲量の管理にあたり、それぞれの管理区分において、特定水産資源を採捕しようとする者に対し、船舶等(船舶その他の漁業の生産活動を行う基本的な単位となる設備をいう)ごとに当該管理区分に係る管理漁獲可能量の範囲内で特定水産資源の採捕をすることができる採捕を割り当てる(以下「漁獲割当て」という)場合は、当該管理区分において対象となる漁業者の2/3以上の同意をもとにした申請に基づき行うこととする。
3 漁獲割当てを行う主体は漁業者により組織された団体とするが、その団体から知事に漁獲割当てを行うよう要請があった場合にのみ知事が行うことができるものとする。    
また、この漁獲割当ての調整事務作業に合理的な日数以上の遅延が生じた場合は、そのために要した休漁により生じた損失に対し知事は補償する義務を負う。
4 知事は、漁獲割当が少数の漁業者に集中することを避けるため、必要がある場合は、その上限を条例において定めるものとする。

(趣旨)
IQ制度は、先獲り競争の防止という漁業経営上の都合によるものであることから、行政が一方的に強制するものではなく、その導入の必要性はあくまで漁業者が判断すべきものである。さらに、IQの特定漁業者への集中を防止する制限を設けるため。

( 都道府県知事の要請等 )
第十条 都道府県知事は、農林水産大臣に対し、資源評価が行われていない水産資源について資源評価を行うよう要請をすることができる。
漁獲可能量対象資源の資源特性の公表要請)
1 知事は、大臣に対しTAC管理の対象となっている資源に関し、その根拠となるMSY理論をもとにした再生産モデルにその資源変動実態が適応しているかどうかについて公表するとともに、その結果をもとに毎年TAC対象資源としての適格性について見直すことを要請するものとする。
2 知事は、大臣に対し資源の変動が環境要因により大きく影響を受けている資源について、その環境要因がいかなる海洋又は気象の現象並びに他の水産資源などとの相関によりもたらされているかについて分析し、その変動要因の解明に努めることを要請するものとする。
(趣旨)
TAC管理対象種としての適性について公表し見直すことにより、TACによる不適切な資源管理の拡大を抑制するとともに、資源変動に与える環境要因の解明による適切な資源管理方法につなげるための要請。

( 資源管理の目標 )
第十二条 第1項
前条第二項第二号の資源管理の目標は、資源評価が行われた水産資源について、水産資源ごとに次に掲げる資源量の水準(以下この条及び第十五条第二項において「資源水準」という。)の値を定めるものとする。                                                                                                             一 最大持続生産量(現在及び合理的に予測される将来の自然的条件の下で持続的に採捕することが可能な水産資源の数量の最大値をいう。次号において同じ。)を実現するために維持し、又は回復させるべき目標となる値(同号及び第十五条第二項において「目標管理基準値」という。)
二 資源水準の低下によつて最大持続生産量の実現が著しく困難になることを未
然に防止するため、その値を下回つた場合には資源水準の値を目標管理基準値にまで回復させるための計画を定めることとする値(第十五条第二項第二号において「限界管理基準値」という。)

(問題点)
「目標管理基準値」は安定した高い再生産成功率を前提とした場合にのみ達成できる架空の高い目標であり、現実にはそのような高い再生産成功率は持続しないことからその分漁獲量の削減が必要となり漁業経営を圧迫する管理目標である。

( 自治事務における資源管理の目標 )
1 資源管理の目標は、資源評価が行われた水産資源について、親子関係が明確に存在し、再生産成功率の変動による影響よりも、漁獲量の調整が資源量に対し精度高く有意に影響していることが過去の資源変動から科学的に立証できた水産資源について、資源量を管理目標として定めることとする。

2 水産資源を構成する水産動植物の特性又は資源評価の精度に照らし、環境要因が資源変動に与える影響が大きい資源については前項に掲げる資源量を定めることができないことから、過去の再生産成功率と資源量の関係と現在のそれとの比較から現在あるべき資源水準を定め、その維持又は回復のための漁獲割合を管理目標として定めることとする。

 (趣旨)
環境要因による資源変動が大きい資源については、漁獲量ではなく漁獲割合による管理が適切であるため。

(前法にはあったが、後法から削除された規定)
旧海洋生物資源保存管理法第3条3項
 前項第三号及び第八号に掲げる事項は、最大持続生産量を実現することができる水準に特定海洋生物資源を維持し又は回復させることを目的として、同項第二号に掲げる事項及び他の海洋生物資源との関係等を基礎とし、特定海洋生物資源に係る漁業の経営その他の事情を勘案して定めるものとする

(問題点)
我が国が批准した国連海洋法第61条には、漁獲可能量を決定するにあたり、「経済上の関連要因(沿岸漁業社会の経済上のニーズ)を勘案し」とあり、前法においてはそれに基づき漁業の経営を勘案事項に規定していたが、後法ではそれを削除しており、漁業経営への勘案要件が欠落ている。

(前法の規定復活:自治事務における漁獲可能量を決定するにおいて勘案する事項)
漁獲可能量を定めるにおいて、資源の状況を基礎とし、漁業の経営その他事情を勘案して定めるものとする。

(趣旨)
国連海洋法における規定のほか、FAOの持続的漁業の行動規範や国連の持続的開発目標(SGDs 14.b)では、小規模・伝統的漁業者への特別な配慮の必要性が定められており、特に零細な漁業者が多い自治事務に係る漁業者に対しては単純に資源評価のみに基づく漁獲可能量ではなく、これらの勘案規定は残すべきであるから。

( 漁獲割当管理原簿 )
第二十条  農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲割当管理原簿を作成し、漁獲割当割合及び年次漁獲割当量の設定、移転及び取消しの管理を行うものとする。
2 漁獲割当管理原簿については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成十一年法律第四十二号)の規定は、適用しない。
3 漁獲割当管理原簿に記録されている保有個人情報(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号)第二条第五項に規定する保有個人情報をいう。)については、同法第四章の規定は、適用しない。

(個人情報の保護に関する法律)
第四章個人情報取扱事業者の義務等

(問題点)
本条の規定の意味するところが「非公開」であるとすれば、漁獲割当はあくまで公共財産であり、その情報の非公開は、特定者へのその集中がチェックできないという問題が生じる。またそもそも本情報がその対象漁業者に公開されないと漁業者間の漁獲割当の過不足調整ができない。

(自治事務における漁獲割当管理原簿の閲覧)
1 漁獲割当てを漁業者により組織された団体が行う場合においては、団体は漁獲割当管理原簿を事務所に備え付け、その割り当てを受けた漁業者が閲覧を希望する場合はこれを提示しなければならないものとする。
2 知事が漁獲割当てを行う場合にあっても上記1に同じとする。(左記の規定が公開を意図するものであれば、1のみで可)

(趣旨)
特定漁業者への漁獲割当の集中防止と、円滑な漁業者間の消化率の差による過不足調整のため、漁業者ごとの割当量と消化率に関する情報公開は必須事項であるため。

( 年次漁獲割当量の控除 )
第二十八条 農林水産大臣又は都道府県知事は、漁獲割当割合設定者である年次漁獲割当量設定者が第二十五条第二項の規定に違反してその設定を受けた年次漁獲割当量を超えて特定水産資源を採捕したときは、その超えた部分の数量を基準として農林水産省令で定めるところにより算出する数量を、次の管理年度以降において当該漁獲割当割合設定者に設定する年次漁獲割当量から控除することができる。
(規定見込み事項)
・次の管理年度以降における年次漁獲割当量から控除する算式等

(問題点)
加入資源推定量が誤っていれば、本来漁獲できた漁獲割当量以下の設定となっている可能性があり、それをもとに控除するのは責任の転嫁である。

自治事務における年次漁獲割当量の控除の取り扱い)
知事は、漁獲割当割合設定者が、年次漁獲割当量を超えて特定水産資源を採捕したときの割当量の根拠となった資源変動予測が過少推定であった場合は、本来正しい予測がされていた場合の割当量を上回る分についてのみ、次の管理年度以降において当該漁獲割当割合設定者に設定する年次漁獲割当量から控除

(趣旨)
資源予測精度の未熟さゆえに過少推定された加入資源量に基づく漁獲割当量を前提に控除する数量を算出することは、国の科学的資源評価能力の欠陥により生じた責任を漁業者に不当に課すことになるため。

( 漁獲量等の公表 )
第三十一条 農林水産大臣又は都道府県知事は、大臣管理区分又は知事管理区分における特定水産資源の漁獲量の総量が当該管理区分に係る大臣管理漁獲可能量又は知事管理漁獲可能量(漁獲努力量管理区分にあつては、当該管理区分に係る漁獲努力可能量。次条及び第三十三条において同じ。)を超えるおそれがあると認めるときその他農林水産省令で定めるときは、当該漁獲量の総量その他農林水産省令で定める事項を公表するものとする。
(規定見込み事項)
特定の水域別の漁業種類ごとの漁獲可能量を漁獲努力量に換算するための算定方法等
・管理期間終了時
・管理漁獲可能量に対する割合、当該大臣管理漁獲可能量又は当該都道府県別漁獲可能量に対する割合等

(自治事務における漁獲可能量を漁獲努力量に換算し管理すること)
知事は、特定水産資源ごとの漁獲可能量の本県配分量の管理に当たって、当該資源の変動が環境要因による影響を大きく受けている場合は、後法31条第1項に基づく省令における方法により、その漁獲可能量を漁獲努力量に換算し、それを管理目標として定めることができるものとする。

(趣旨)
環境要因による資源変動が大きい資源については、漁獲量ではなく漁獲割合(漁獲努力量)による管理が適切であるため。

(許可を受けた者の責務 )
第三十七条 前条第一項の農林水産省令で定める漁業(以下「大臣許可漁業」という。)について同項の許可(以下この節(第四十七条を除く。)において単に「許可」という。)を受けた者は、資源管理を適切にするために必要な取組を自ら行うとともに、漁業の生産性の向上に努めるものとする。

(問題点)
「資源管理を適切にするために必要な取組」の規定は、あまりにも抽象過ぎて何を意図するものか明確でない。「生産性」の解釈次第では地域の雇用よりも「少人数者による大量漁獲漁業」といいう利益優先漁業を優先しかねない危険性がある。

(自治事務における許可を受けた者の責務)
1 後法第37条で規定する「資源管理を適切にするために必要な取組を自ら行う」の取組は漁業協同組合又は漁業種類別部会などによる以下の自主的資源管理の取組とする。(例えば、資源管理型漁業の手法である6パターンを例示する)
ア 投入量管理型
イ 漁場管理型
ウ ・・・・・
2 後法第37条で規定する「漁業の生産性の向上に努める」の「漁業の生産性」は、地方自治法の理念に基づき「単位資源当たりの地域雇用創出生産性」とする

(趣旨)
後法におけるあいまいな記述(用語・表現)について、その解釈を地方自治法の理念に沿って明確にするため。

( 許可又は起業の認可についての適格性 )
第四十一条 許可又は起業の認可について適格性を有する者は、次の各号のいずれにも該当しない者とする。
一~五(省略)
六 その申請に係る漁業を適確に営むに足りる生産性を有さず、又は有することが見込まれない者であること。

(問題点)
曖昧な「生産性」の規定だけでは地域の雇用よりも利益を高く上げる「少人数大量漁獲漁業者」が「漁業を的確に営む者」と解釈されかねない。

( 自治事務における許可又は起業の認可についての適格性の判断基準 )
後法第四十一条の6号に規定する「漁業を適確に営むに足りる生産性を有さず、又は有することが見込まれない者」とは、「漁業を営むに足りる資本その他の経理的基礎及び単位資源当たりの地域雇用創出生産性」に基づき判断するものとする。

(趣旨)
前法にあった適格性の要件で十分でありその変更を必要とする立法事実がないこと、及び地方自治法の理念「住民の福祉の増進」に寄与するかどうかの観点から生産性を判断するのが適切であるため。

 

( 公示における留意事項 )
第四十三条 農林水産大臣は、漁獲割当ての対象となる特定水産資源の採捕を通常伴うと認められる大臣許可漁業について、前条第一項の規定による公示をするにあたっては、当該大臣許可漁業において採捕すると見込まれる水産資源の総量のうちに漁獲割当ての対象となる特定水産資源の数量の占める割合が農林水産大臣が定める割合を下回ると認められる場合を除き、船舶の数及び船舶の総トン数その他の船舶の規模に関する制限措置を定めないものとする。

(問題点)
漁船の規制自由化とは、その耐用年数に相当する長期の年月において必ず起こる資源低迷期において過剰漁獲と過剰投資を招くものであり、極めて問題のある規定である。

 

(自治事務における公示における留意事項の取り扱い)
後法第58条で準用する後法43条の規定(船舶の数と規模の制限措置を定めない)については、長期間における資源の変動において避けがたい資源の低迷期において、過剰漁獲と過剰投資を招く危険性が極めて高いこと及び日帰り操業が基本の沿岸漁業における船員の居住環境の改善のための大型化の必要性も低いことから、知事管理漁業においてはこれを適用しない

(趣旨)
避けがたい資源の衰退期をも考慮した長期間における漁船の適正規模を維持することにより、安定した資源管理と漁業経営を確保するため。

 

(保全沿岸漁場)
第60条第8項
 この章において「保全活動」とは、水産動植物の生育環境の保全又は改善その他沿岸漁場の保全のための活動であつて農林水産省令で定めるものをいう。
(規定見込み事項)
赤潮監視、漁場清掃等
第60条第9項
 この章において「保全沿岸漁場」とは、漁業生産力の発展を図るため保全活動の円滑かつ計画的な実施を確保する必要がある沿岸漁場として都道府県知事が定めるものをいう。

(問題点)
例示にあげられている「赤潮監視、漁場清掃」という漁場環境を悪化させている原因は、陸域の産業や国民の生活活動から生じたものであり、漁業者が自主的に(ボランティアで)監視・清掃活動していたものを法律において規定することの目的やそのデメリットについてほとんど説明がされておらず、本条項の意図そのものが不明確

 

(漁業権漁業における沿岸保全漁場の指定)
後法60条第9項の規定のうち、知事による「保全沿岸漁場」の指定については、その漁場の環境悪化の主たる要因が漁業活動以外に由来するものであるところ、その原因者がその漁場保全活動を行う場合において、漁業者の行う漁場保全活動との間で分担・調整が必要となる漁場に限り指定することとする。

(趣旨)
漁業者による赤潮監視、漁場清掃等の活動は、あくまで自主的な取り組みであり、これを法律で漁業関係者に義務付けることはその原因者が負うべき責任の被害者への転嫁となりかねず不適切。よって、「保全沿岸漁場」を設定する場合は、汚染の原因者も参加した保全活動が組織化できる見込みがある漁場に限定すべきであるから。

 第61条
都道府県は、その管轄に属する水面における漁業生産力を発展させるため、水面の総合的な利用を推進するとともに、水産動植物の生育環境の保全及び改善に努めなければならない
(問題点)
後法において知事の沿岸域の環境保全・管理への努力規定が新設されたが、その汚染原因者の活動を規制する法律を主として所管するのは国であり、まず国の努力規定が定められるべきであるがそれがないにも関わらず知事のみに努力規定を課すのは不適切。
 

(沿岸域の生育環境の保全及び改善への努力義務)
 知事は、後法第61条に規定する「水産動植物の生育環境の保全及び改善」については、国が所管する法律におけるその目的の達成のための活動を見極め、国と県との役割分担を考慮してその内容を定めるものとする。
 知事は、過去における海の埋め立て等の開発行為及び陸域からの海洋汚染により、水産資源がそれがなかった場合に比較し、どの程度の資源量の減少となっているかを推定し、毎年公表しなければならない。
(趣旨)
資源悪化は漁業者による乱獲が原因とする一方的な主張に惑わされず、国民が正しくその本質を認識するために、その最大の要因となっている開発行為等による資源への悪影響を広く知らしめることが必要なため。

( 海区漁場計画 )
第62条第2項
 海区漁場計画においては、海区(第百三十六条第一項に規定する海区をいう。以下この款において同じ。)ごとに、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 当該海区に設定する漁業権について、次に掲げる事項
 イ~ニ(略)
区画漁業権については、 個別漁業権( 団体漁業権以外の漁業権をいう。 次節において同じ。 )又は団体漁業権の別

(問題点)
第62条第2項ホ第1号ホの規定が、既に免許されている漁業権の更新において適用される場合は特に問題はないが、これを新規漁業権の免許に当てはめると、海区漁場計画が公示される段階で、既に個別漁業権か団体漁業権かの別が決定していることになる。しかし、あくまで漁場計画が決定し広く公示されてからそれに対する申請が行われ、そこでの審査の結果免許内容にふさわしい漁業者が決定される。
よってその新規漁業権についてもこれを適用するとなると、実質上公示前に免許者が決定していることになり、海区委における手順を踏んだ公平な行政手続きとは言えない。

(同一漁場における団体区画漁業権と個別区画漁業権の取り扱い)

 同一漁場において団体区画漁業権と個別区画漁業権が併存することは、漁場の一体的管理に重大な支障を来すことから、団体漁業権において養殖を営むことができないやむを得ない客観的事情がある場合を除き、個別区画漁業権の免許は行わない
 なお、新規の区画漁業権については、海区漁場計画において個別漁業権又は団体漁業権の別は規定せず、申請を受け付けてその適格性を審査しそれを決定することとする。

(趣旨)
・宮城県水産特区のような漁業権の設定は、地域漁場の一体的な管理を困難にするだけでなく、漁村に感情的対立を生む要因になることから極力これを避ける必要がある。
・また、新規漁業権に関し海区漁場計画の段階で実質上の免許者が決まっているということは「事前談合による免許者の決定であり不祥事の温床」となりかねないので、制度を改める必要がある。

 第62条第2項へ
 団体漁業権については、その関係地区(自然的及び社会経済的条件により漁業権に係る漁場が属すると認められる地区をいう。第七十二条及び第百六条第四項において同じ。)

(問題点)
前法においては全ての漁業権に関係地区制限が課せられていたが、後法では団体漁業権のみとなった。これにより、それ以外の個別区画漁業権者、真珠漁業権者、定置網漁業権者の住所が例えば他県
でも認められることになり、以下のような問題が生じることになった。
①地区外の漁業者は本人が希望しても組合員になれず、組合のもとでの一体的地先海面の管理体制に参加できない
②常に地元に居住しているわけではないので、台風や津波などの緊急時の漁船の固定や避難ができず関係漁業者に被害を及ぼしかねない。
③その漁業権を取得した個人又は会社の社長や役員は他県に住み、現場には作業小屋があるだけという形態となれば、地元自治体はその施設の固定資産税しか徴税できず、所得に対する課税は住所がある他県に持っていかれ地元経済に貢献しないことになる。

(海区漁場計画における関係地区制限の追加)
後法第六十二条第2項ヘにおいて規定されている団体漁業権についての関係地区(自然的社会経済的条件により漁業権が属する漁場と認められる地区)要件は、その他のすべての漁業権においても適用する。

(趣旨)
左記の問題点に加え、関係地区制限の廃止は、単に権利を保有するだけの目的で漁業権を取得することを推奨するようなものこのような者が地域漁業の発展に貢献するとは到底あり得ず、遠くに住む漁業権の権利保有者(網元)と、現地でその権利を借りて漁業を営む者(小作人)という戦前の封建的な漁業体制への復帰を目論む改悪を阻止するため、

第62条 第2項第2号
 当該海区に設定する保全沿岸漁場について、 次に掲げる事項
 イ 漁場の位置及び区域
 ロ 保全活動の種類
 ハ イ及びロに掲げるもののほか、 保全沿岸漁場の設定に関し必要な事項
(海区漁場計画のうちの保全沿岸漁場についての取り扱い )
後法62条第2項第2号において、知事が海区漁場計画で規定する保全沿岸漁場に係る事項については、汚染の原因者も参加した保全活動が組織化できる見込みがある漁場に限定する。

( 海区漁場計画の要件等 )
第63条 第1項
海区漁場計画は、次に掲げる要件に該当するものでなければならない。 
(略)                                             
二 海区漁場計画の作成の時において適切かつ有効に活用されている漁業権(次号において「活用漁業権」という。)があるときは、前条第二項第一号イからハまでに掲げる事項が当該漁業権とおおむね等しいと認められる漁業権(次号において「類似漁業権」という。)が設定されていること。
三 前号の場合において活用漁業権が団体漁業権であるときは、類似漁業権が団体漁業権として設定されていること。
四 前号の場合のほか、漁場の活用の現況及び次条第二項の検討の結果に照らし、団体漁業権として区画漁業権を設定することが、当該区画漁業権に係る漁場における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合には、団体漁業権として区画漁業権が設定されていること。

(問題点)
1 前法における優先順位は極めて客観的な数値等で表される基準が定められたが、後法では「適切かつ有効に活用」という抽象的かつ主観的表現による基準となったことから、行政による恣意的な運用を可能とする法律となった。

2 また、団体漁業権と個別漁業権の優劣の判断が、単に「漁場面積当たりの生産金額」で判断されかねない規定となっている。

(適切かつ有効に活用されている漁業権の判断基準)
後法第63条第1項2号に規定する「適切かつ有効に活用されている漁業権」については以下の基準を満たす場合はこれに適合していると判断する。
ア 知事により認可された漁業権行使規則に従い漁業権を行使しているもの。
イ ただし、漁場の一部が利用されていない場合でも
①漁場の潮通しを良くする目的や輪番で漁場を使用するため利用していない
②資源管理のために漁業活動を制限している
③漁船の修繕や病気やけがなどで出漁していない
など合理的な理由があるもの

(漁業生産力の発展に最も資するの判断基準)
後法第63条第1項3号に規定する「漁場における漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合」の判断基準は以下による。
ア 漁場の面積当たりの地元雇用創出生産性
イ 漁場の面積当たりの利益(所得)のうち地元への還元率
ウ 漁場面積当たりの漁業コスト(生産資材、餌、出荷など)の地元関係業者利用率
エ 当該区画漁業権の設定により排除される関係漁業者との共存への配慮度
オ 事業の永続性への信頼度(経営悪化時における撤退の可能性の有無)

(趣旨)
1 前法でも漁業権免許の更新に当たっては、漁場利用の状況を詳細に調査し、有効に活用されていない場合は免許を更新しないなど、それを漁場計画に反映し、さらに漁業権行使規則の認可においてもその適確な活用について審査してきたところであり、漁業権行使規則に基づいた漁業がおこなわれている場合は新基準に合致すると判断できる。

2 参入企業の生産金額をもって「漁業生産力」と判断するのは国の立場からありうるか
もしれないが、地方自治法の「住民の福祉の増進」からすれば指標となり得ず、あくまでその生産力の発展が地元の発展に寄与する程度で判断するため。

第63条 第2項
都道府県知事は、海区漁場計画の作成に当たつては、海区に係る海面全体を最大限に活用するため、漁業権が存しない海面をその漁場の区域とする新たな漁業権を設定するよう努めるものとする。

 

水産庁「漁業法等の一部を改正する等の法律 Q&A」(平成30年12月14日)より
<新たに漁業権を設定する場合は企業が優先されるのですか。>
1 新たな漁業権を設定する場合は、都道府県が漁業者等の意見を聴いて、地理的な条件や漁業者の数、養殖しようとする対象魚種などを考慮した上で、漁業権を設定することが適当と判断したときに海区漁場計画に記載することになります。
2 この場合、個別漁業権は漁業者又は漁業を営もうとする者に免許されますし、漁協が免許を受けて組合員の間の調整を図りながら漁場を利用した方が漁業生産力の発展に最も資すると認められる場合には、漁場計画を作成する段階において、個別漁業者に免許するのではなく、漁協・漁連に免許する団体漁業権として設定することとなります。
3 したがって、法律上、企業が優先されるという仕組みにはなっていません。(改正漁業法第 63 条第 1 項第 1 号~第 4 号)

(漁業権が存しない海面での新規漁業権の設定基準)
知事は、後法第63条 第2項における新たな漁業権の設定は、その漁場に利害関係を有する地元漁業者等の意見を聞き、漁業調整に支障を及ぼさないことが確認された場合にのみ行うものとする。

(左記のQ&Aの疑問点)
左記の新規漁業権免許に係るQ&Aの内容について、以下のような問題がある。
・後法第63条 第1項第4号が新規区画漁業権免許の取り扱いを規定しているように伺えるが、その際の考慮要件「前号の場合のほか、漁場の活用の現況及び次条第二項の検討の結果に照らし」は、既存の漁業権の活用状況のことであり、それに対し新規免許は当然異なる漁場のことであり、その間になんの考慮すべき関連性があるのか明確でないこと。
・Q&Aの1では、新たな漁業権を設定することが適切と判断した時には、海区漁場計画を定めるとしているが、その計画には
イ 漁場の位置及び区域
ロ 漁業の種類
ハ 漁業時期
ニ 存続期間
ホ 区画漁業権については、 個別漁業権( 団又は団体漁業権の別
ヘ 団体漁業権については、その関係地区
を定めることになる。
・そこで大問題なのは、ホであり区画漁業権を個別漁業権か団体漁業権か決定しておかなければならないことである。そうして団体漁業権とする場合は「漁業生産力の発展に最も資すると認められる」をクリアーする要件を課している。しかし、不思議なことに海区漁場計画の作成段階では、海区委では単に関係漁業者の意見を聞くだけであり、まだ申請は受け付けていない。では、どうして団体漁業権との比較対象となる個別漁業権者の適格要件の審査もしない段階で、個別漁業権で免許すべきと決めることができるのかであろうか。またその者と団体漁業権者の「漁業生産力の発展」における優劣をどのように比較するのかの手続きも法律に規定されていない。
・よって、正式な公示に基づく免許申請を受け付ける前に、個別漁業権か団体漁業権かを決めるということは、非公開の場で特定の個別漁業権者の事前決定がなされていなければ、「個別漁業権又は団体漁業権の別」が定められないことを意味する。これは特定企業を公開の審議を経ず裏取引で優先採択することが可能になっている制度としか言えない。
・この結果、海区漁場計画策定の段階で漁場への参入を目論むある企業が、海区委での意見徴収に出席して県庁との裏取引をした場合、漁場計画に「個別漁業権」が公示されることになる。そこで、これに基づき地元への貢献度が高い良心的な企業が申請しても、既に裏取引によって実質上決まった企業が免許を受けてしまうということである。これでは何のための公示制度か意味がなく、新規区画漁業権に係る公示制度は単なる儀式となってしまう。例えば「試験を行う前に合格者が決まっている」ように真面目な受験者を冒涜する制度である。まさに国家戦略特区で、加計学園に対する獣医学部の認可が事前に決まっており、京都産業大学はより的確性が高かったにもかかわらず単なる当て馬にされた構図と同じとなる。

( 海区漁場計画の作成の手続 )
第六十四条 第1項
都道府県知事は、海区漁場計画の案を作成しようとするときは、農林水産省令で定めるところにより、当該海区において漁業を営む者、漁業を営もうとする者その他の利害関係人の意見を聴かなければならない。
(規定見込み事項)
意見聴取の方法等

(問題点)
1 海区漁場計画作成上の問題点として、
・全く新規の免許
・既存の免許の更新が認められない場合の後の免許
において、公示に基づく申請を受け付ける前に団体漁業権と個別漁業権の別を定めることになっていること。
これは、漁場計画作成過程の関係者の意見徴収段階で実質的に個別漁業権免許者が決められてしまうことを意味し、これは特定企業と県庁・海区委との不透明な癒着関係を招来しかねない制度となっている。

2 「その他利害関係人」の範囲次第では、環境保護団体、エネルギー開発業者など、漁業活動以外の海面利用を巡る自称利害関係者も参加しかねない。

(意見徴収における公開性の確保と交渉記録等の保存の義務)
知事は、後法第64条に基づく意見徴収を行う場合は、必ず海区委の公開の場で行うこととし、それ以外の場における意見徴収は行わない。また、行政・海区委などに対して外部から口利き、働きかけ、要望などがあった場合は、必ずそれを記録し、海区委の公開の場で報告するものとする。

(趣旨)
規制改革の一環としての特区制度は、全面的規制緩和に向けたその試験的試みの段階であるが、皮肉にもこれは規制に守られた中での部分的解除という新たな利権を作り出すものであったことから、加計学園獣医学部に代表されるような裏取引が行われた。新規漁業権の免許も同じ構図であることから、その手続きの公平性・透明性を行政・海区委に義務付ける必要がある。

(意見徴収における社会的企業責任:CSRに係る資料提出の要請)
知事は、後法第64条に基づく意見徴収を行う場合において、新たに漁業を営もうとする者が、県内において漁業を営んだ実績がない企業等の場合、営もうとする地域の社会・経済に及ぼす影響を判断するため、当該企業等が定めるCSRに係る資料の提出を求めることとする。
CSRにおいて定めておくべき事項の例
ア 地域社会に対する利益還元
イ 企業活動の持続性
ウ 積極的地域社会活動参画
など

(趣旨)
参入企業が地域漁村社会と共存共栄できるか否かは、極めて重要な観点であり、地元漁協は受入に当たってCSR(企業の社会的責任)に富んだ企業を選択する必要があることから、それに関する資料の提出を求めるもの。

(意見徴収における外国の資本参加及び外国人雇用を確認するための資料提出の要請)
知事は、後法第64条に基づく意見徴収を行う場合において、新たに漁業を営もうとする者に対し、外国人又は法人の資本参加を受けているかどうか、また外国人を雇用する予定があるかどうかに関する資料の提出を求めることとする。

(趣旨)
現行法では、外国人が出資した日本法人が漁業に参入することを阻止できない。さらに、入管法の改訂により今後9000人もの外国人が漁業・養殖業の分野で受け入れられることになった。このためこの両方の組み合わせによる企業参入は地域漁村社会に大きな不安と与えるとともに、雇用の面でも期待ができず、その企業により生み出された利益や賃金が外国に流出し、まさに地域経済に貢献することも期待できない。よって、そのような企業かどうかの確認のための資料の提出を求める必要がある。

 

第六十四条 第6項
 都道府県知事は、海区漁場計画を作成したときは、当該海区漁場計画の内容その他農林水産省令で定める事項を公表するとともに、漁業の免許予定日及び第百九条の沿岸漁場管理団体の指定予定日並びにこれらの申請期間を公示しなければならない。
(規定見込み事項)
海区漁業調整委員会の意見への回答等
(沿岸漁場管理団体の指定をする場合の要件)
知事は、後法第六十四条 第6項における「沿岸漁場管理団体の指定予定日」は、その沿岸漁場汚染の原因者がその漁場保全活動を行う場合において、漁業者の行う漁場保全活動との間で分担・調整が必要となる漁場に限り指定することとする。
(趣旨)
汚染の原因者の責任について全く明確にすることなく、漁業者に一方的に保全活動責任を課すことを回避するため。

第六十四条 第7項
 前項の免許予定日及び指定予定日は、同項の規定による公示の日から起算して三月を経過した日以後の日としなければならない。

(問題点)
この後法の規定「三月を経過した日以降」は、前法の規定「三箇月前までに」と異なるものであるが、前法にあったこの規定は昭和37年の漁業法改正時に追加されたもので極めて重要。その目的は、これまで漁業権が存在していた区域について、知事が新たな免許を遅らせるなどによって、漁業権に時間的切れ目を生じさせることがないよう知事に行政責任を負わせた規定であり、絶対に削除してはならない規定であった。後法でそれをなくしたのには、諫早干拓がらみで漁業権の権限を弱めることを意図している危険性あり。

免許に切れ目を生じさせないための措置)
知事は、現に漁業権の存する水面についての当該漁業権の存続期間の満了に伴う場合にあつては当該存続期間の満了日の三箇月前までに、その他の場合にあつては免許予定日の三箇月前までに、後法第62項第1項の規定による定めをしなければならない。

(趣旨)
前法の規定をそのまま復活させ、知事に義務付ける必要がある。

(前法にはあったが、後法から削除された右の欄の規定)
(問題点)
前法にあった知事が漁場計画を立てようとしないときに海区委から意見する規定がなくなった。これも諫早干拓がらみを意図している危険性あり。

(漁場計画を立てるように海区委からの知事への意見)
海区委は、知事に対し、後法第62項第1項の規定により免許の内容たるべき事項を定めるべき旨の意見を述べることができる。

(趣旨)
前法の規定の復活により知事に義務付ける。

( 農林水産大臣の助言 )
第六十五条 農林水産大臣は、前条第二項の検討の結果を踏まえて、都道府県の区域を超えた広域的な見地から、我が国の漁業生産力の発展を図るために必要があると認めるときは、都道府県知事に対し、海区漁場計画の案を修正すべき旨の助言その他海区漁場計画に関して必要な助言をすることができる。
(問題点)
前法になかった漁場計画への「余計なお世話」規定であり、地方分権に完全に逆行した国の地方への新たな介入である。

(国の助言への対応)
知事は、後法第六十五条に基づく助言については、その内容が地方自治法第1条、第1条の2及び第245条の3の規定に適合しているかどうかを判断し適切な対応を行う。
(趣旨)
自治事務である漁業権漁業に対しての国の関与は「助言」までは認められているが、その助言が地方自治法の規定に照らし適切なものであるかどうかを確認する義務を知事に負わせるため。

(参考)
地方自治法第1条
この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。

 

地方自治法第第1条の2 
地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。
2 国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。

地方自治法第245条の3 
国は、普通地方公共団体が、その事務の処理に関し、普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与を受け、又は要することとする場合には、その目的を達成するために必要な最小限度のものとするとともに、普通地方公共団体の自主性及び自立性に配慮しなければならない

( 農林水産大臣の指示 )
第六十六条 農林水産大臣は、次の各号のいずれかに該当するときは、都道府県知事に対し、海区漁場計画を変更すべき旨の指示その他海区漁場計画に関して必要な指示をすることができる。
一 前条の規定により助言をした事項について、我が国の漁業生産力の発展を図るため特に必要があると認めるとき。
二 都道府県の区域を超えた広域的な見地から、漁業調整のため特に必要があると認めるとき。
(問題点)
強引な参入を求める企業が国に働きかけ地方に圧力をかけるための手段に用いられることは明白

(国の指示への対応)
知事は、後法第66条に基づく指示については、その内容が地方自治法第1条、第1条の2及び第245条の3の規定に適合しているか、特に地方公共団体の自主性及び自立性を侵すものではないかを厳格に審査し、適切な対応を行うとともに、必要に応じ地方自治法250条の13の規定に基づき、国の関与に関する審査の申出を行うこととする。

(趣旨)
自治事務に対しての国の関与は原則「助言」までであり、その特例として個別法において「指示」が規定できるとされている。よって、国が自治事務に「指示」するのは、地方が法律に明確に違反し、公益性を著しく棄損するような行為を行った場合に限定されるべきものである。特に後法66条第1号「我が国の漁業生産力の発展を図るため」というあいまいな規定に基づき地元の意向を無視し、実質上特定企業に漁業権を与えるべきであるような示唆を含む国の指示は完全に違法であり、それに従わないように厳格な対応を知事に義務けるため。

(免許をしない場合)
第七十一条 次の各号のいずれかに該当する場合は、都道府県知事は、漁業の免許をしてはならない。
一 申請者が次条に規定する適格性を有する者でないとき。
二 海区漁場計画又は内水面漁場計画の内容と異なる申請があつたとき。
三 その申請に係る漁業と同種の漁業を内容とする漁業権の不当な集中に至るおそれ があるとき。
四 免許を受けようとする漁場の敷地が他人の所有に属する場合又は水面が他人の占 有に係る場合において、その所有者又は占有者の同意がないとき。
(免許をしない場合の上乗せ規定)
知事は、後法第71条の各号に掲げる免許をしない場合の規定に以下を追加する。
五 企業の社会的責任の理念に欠けている者
六 実質上外国人により支配され、その雇用者の多くが外国人である者
(趣旨)
1 参入企業が地域漁村社会と共存共栄できるか否かは、極めて重要な観点であり、SCRに欠けた者には免許しないことが適切であるため。
2 地域漁村社会に大きな不安を与えるとともに、地域経済に貢献することが期待できない者には免許しないことが適切であるため。

(免許についての適格性)
第七十二条 個別漁業権の内容たる漁業の免許について適格性を有する者は、次の各号のいずれにも該当しない者とする。
一 漁業又は労働に関する法令を遵守せず、かつ、引き続き遵守することが見込まれない者であること。
二 暴力団員等であること。
三 法人であつて、その役員又は政令で定める使用人のうちに前二号のいずれかに該当する者があるものであること。                                四 暴力団員等

がその事業活動を支配する者であること。
(問題点)
前法にあった海区委による適格性の判断権限とそこに規定されていた「漁村の民主化の阻害」の不適格要件が削除されている。

(前法にあった海区委の権限を復活)
後法第72条における免許についての適格性の判断に当たっては、(前法にあった)以下の規定を追加する。

五 海区委における投票の結果、総委員の三分の二以上によつて漁業若しくは労働に関する法令を遵守する精神を著しく欠き、又は漁村の民主化を阻害すると認められた者であること。
六 海区漁業調整委員会における投票の結果、総委員の三分の二以上によつて、どんな名目によるのであつても、前各号の規定により適格性を有しない者によつて、実質上その申請に係る漁業の経営が支配されるおそれがあると認められた者であること。

(免許についての適格性)
第七十二条第2項
団体漁業権の内容たる漁業の免許について適格性を有する者は、当該団体漁業権の 関係地区の全部又は一部をその地区内に含む漁業協同組合又は漁業協同組合連合会であつて、次の各号に掲げる団体漁業権の種類に応じ、当該各号に定めるものとする。
(問題点)
業種別組合はこれまで前法における但し書きにより団体漁業権の適格性を有しなかったが後法では認められている。
(業種別組合の漁業権の不適格規定の復活)
後法第七十二条第2項に規定する団体漁業権については、水産業協同組合法第十八条第四項の規定により組合員たる資格を有する者を特定の種類の漁業を営む者に限る漁業協同組合及びその漁業協同組合を会員とする漁業協同組合連合会は、適格性を有しない。
(趣旨)
業種別組合は、特定の業種の漁業者により組織されており、その他の漁業種類の漁業者との地先海面の利用調整を的確に行うことが困難であり、すべての漁業種類の漁業者が加入する漁協・連合会が適切であるため。
(免許をすべき者の決定)
第七十三条第2項 
前項の場合において、同一の漁業権について免許の申請が複数あるときは、都道府県知事は、次の各号に掲げる場合に応じ、当該各号に定める者に対して免許をするものとする。
一 漁業権の存続期間の満了に際し、漁場の位置及び区域並びに漁業の種類が当該満了する漁業権(以下この号において「満了漁業権」という。)とおおむね等しいと認められるものとして設定される漁業権について当該満了漁業権を有する者による申請がある場合であつて、その者が当該満了漁業権に係る漁場を適切かつ有効に活用していると認められる場合 当該者
二 前号に掲げる場合以外の場合 免許の内容たる漁業による漁業生産の増大並びにこれを通じた漁業所得の向上及び就業機会の確保その他の地域の水産業の発展に最も寄与すると認められる者
(問題点)
1号(継続免許)についてはこれまでの実態から自動更新でもほとんど問題ないと考えられるが、2号(新規免許)における競願においては、ここにあるようなあいまいな規定では恣意的な判断が避けられない。

新規免許における優先順位の一部復活)
後法第七十三条第2項の2号における免許すべき者に係る考慮要件は、地元への貢献度がその基本となっていることから、その申請者に地元の漁業者が含まれている比率、人数等をもとに、以下の優先順位に基づき「最も寄与すると認められる者」とする。
(前法の規定に基づきより実態に合わせた簡略化した順位とする)
 定置漁業権 個別区画漁業権 真珠漁業権ともに
①漁協(自営)
②地元漁民世帯の7割以上を含む法人
③地元漁民の7人以上で構成される法人
④上記以外の者

(趣旨)
知事による恣意的な判断の余地を可能な限り狭めておく必要があるため。

(後法において削除された規定)
前法16条10項で規定されていた「加入申し込み制度」は、地元漁民を含む法人が、定置漁業権を取得した法人に加入を申し込める規定で、これまでの漁業法における地元共同体管理の根幹となる制度であった。
(地域の実態に応じ復活すべきであれば規定)

(漁業権者の責務)
第七十四条 漁業権を有する者(以下この節及び第百七十条第七項において「漁業権者」 という。)は、当該漁業権に係る漁場を適切かつ有効に活用するよう努めるものとする。
2 団体漁業権を有する漁業協同組合又は漁業協同組合連合会は、当該団体漁業権に係る漁場における漁業生産力を発展させるため、農林水産省令で定めるところにより、組合員(漁業協同組合連合会にあつては、その会員たる漁業協同組合の組合員。以下この項において同じ。)が相互に協力して行う生産の合理化、組合員による生産活動のための法人の設立その他の方法による経営の高度化の促進に関する計画を作成し、定期的に点検を行うとともに、その実現に努めるものとする。
(規定見込み事項)
計画の作成、点検の手続き等

(問題点)
法人化は、地域の漁業特性やその目的に応じた経営改善策の一つの選択肢にすぎないが、それを是として決めつけている。天候により労働条件が大きく左右される沿岸漁業においては、個人経営の法人化は逆に非効率化をもたらすことを考慮していない。

(個別漁業権者にも適用)
後法72条第2項に規定する「経営の高度化の促進に関する計画」については、経営規模の大きい個別漁業権者にも適用する。
(趣旨)
経営高度化促進計画は、団体漁業権者にだけに課す責務ではなく、経営規模の大きい個別漁業権者も同様に課す必要があるため。

(生産活動のための法人の設立の運用)
後法72条第2項に規定する「経営の高度化の促進に関する計画」については、既存の漁業協同組合の事業の効率化を通じて行うこととし、それ以外の形態である法人の設立の必要性は地域の漁業特性等に基づき漁業者がその是非を判断するものとする。

(趣旨)
経営の高度化の手段は、そのために存在する漁協の各種事業活動を通じて行うべきものであり、法人化は漁業の種類においては個人経営より非効率になることもあるから慎重に取り組むべきである。

(後法において削除された抵当権設定の認可要件)
(問題点)
漁業権の抵当権設定の緩和は、それを通じた特定企業等による漁業の支配やその売買を通じたマネーゲーム化を招きかねない。

(漁業権の抵当権の設定における認可要件の復活)
知事は、定置漁業権又は区画漁業権を目的とする抵当権の設定が、当該漁業の経営に必要な資金の融通のためやむを得ないと認められる場合でなければ、後法78条第2項(抵当権の設定)の認可をしてはならない。

(趣旨)
左記の問題が生じることを防止するため。

(前法にあった規制が削除)
( 適格性の喪失等による漁業権の取消し等 )
第92条
(問題点)
今回の改訂により海の利権を狙う多くの企業が参入してくることが予想されるが、その際に表には別の者を置き、裏でそれを操る方式が考えられそのような場合に対処できない。特に外国人による日本沿岸域の実質上の買収を促進しかねない。

(事実上支配する者の漁業権取消し規定の復活)
漁業権者以外の者が実質上当該漁業権の内容たる漁業の経営を支配しており、且つ、その者には後法第71の規定によれば当該漁業の免許をしないことが明らかであると認めて、海区委が漁業権を取り消すべきことを申請したときは、都道府県知事は、漁業権を取り消すことができる。

第百六条 漁業権行使規則は、団体漁業権を有する漁業協同組合又は漁業協同組合連合会において、団体漁業権ごとに制定するものとする。
2 (略)
3 漁業権行使規則及び入漁権行使規則(以下この条において「行使規則」という。) には、次に掲げる事項を規定するものとする。
(略)
三 組合員行使権者がその有する組合員行使権に基づいて漁業を営む場合において、当該漁業協同組合又は漁業協同組合連合会が当該組合員行使権者に金銭を賦課するときは、その額

(問題点)
この規定は「漁協が参入企業に高額の負担を課している」という思い込みによる新規規定であろうが、そもそも漁協ごとに、漁場行使料はほとんど徴収せず、経済事業における負担金で賄っているところと、その逆のところなど千差万別であり、適切な額というのは全体の負荷から判断せざるを得ないため。

 

(漁業権行使料の認可における配慮事項)
知事は、後法第106条第3項第3号の漁業権行使規則において規定される漁業権行使料の認可に当たっては、組合員が組合の運営全体に必要なために支出する他の負担も考慮したうえで、それが適切であるかどうかを判断し認可する

(趣旨)
参入企業の金銭負担の多寡は、一部の負担を取り出しても意味がないことから、経済事業も含めた負担全体について他の組合員とのバランスの上で判断するようにするため。

(海区漁業調整委員会の委員の任命)
第138条
第139条
3 都道府県知事は、前条第1項の規定による委員の任命に当たっては、第1項の規定による推薦及び募集の結果を尊重しなければならない。

(問題点)
知事が自らの意向に沿った運営ができる海区漁業調整委員会の委員構成とするために、漁業団体からの推薦者ではなく、お気に入りの応募者を漁業関係委員に任命することを可能とする制度となったこと。

 

知事は、後法第139条第3項における委員の任命に当たり、同条第1項で推薦及び募集した委員候補者が、漁業者又は漁業従事者から選出される委員の定数を上回った場合は、選挙をしなければならない。

(趣旨)                         いかに知事が公平・中立な判断から委員の任命をしたとしても、任命されなかった者からの不服申し立てが頻発することは目に見えており、さらに現場の漁業者からは「知事のお気に入りの委員が決めたような規則には従えない」と漁業秩序が乱れることが避けられないことから、それを防止するため定数を上回った場合において知事に選挙実施を義務付ける。

 

 

 

 

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