緊急投稿その4:重要「資源管理方針に関する質問への回答と再質問について」

令和元年8月1日付で本ブログに公開しました、東京海洋大学名誉教授 櫻本和美先生からのご投稿「資源管理方針に関する検討会における質問の事前通知について」への一部についての回答が、令和元年8月30日付で水産研究・教育機構のHPhttps://www.fra.affrc.go.jp/shigen_hyoka/SCmeeting/2019-1/faq_t.htmlに掲載されました。今回は櫻本和美先生から、それに対するコメントと再質問についてご投稿いただきましたので掲載させていただきます。

私が拝読して感じた率直な感想は、このようなやり取りが行われることで、その問題の本質がより明確になってきており、資源管理に関する専門知識が必ずしも十分ではない私たちにとって、多くの真実が明らかにされてきたのではないかということです。
もちろん、どちらの意見が正しいのかは読者の皆様のご判断となりますが、もし櫻本和美先生からの水産庁や水産研究・教育機構への質問とそれに関する当ブログへのご投稿がなければ、今後の我が国の資源管理の根幹をなすという新MSY理論に関する知識をここまで深く得ることができなかったということは紛れもない事実だと思います。まだ継続中ですが、櫻本和美先生には本当に感謝申し上げたいと思います。

私は広く資源管理に携わる研究者の皆様方にお願いしたいことがあります。この極めて重要なやりとりを、多くの研究者の間でより広範に行っていただけないかということです。それを学会等の権威ある場所で公開討論していただくのが一番ですが、それが無理なら私のブログにご投稿していただき、ご意見を交わしていただいても結構です。投稿者の公的立場から、氏名を明らかにしずらい場合は、匿名で投稿していただいても結構です。

今後の我が国の資源管理の方向性がどうなるか、今は極めて重要な時期と思います。将来に禍根を残さないように研究者の皆様に勇気をもって真実と思われることを発言していただきたいとお願い申し上げます。

 

「資源管理方針に関する検討会における質問の事前通知について(2019.8.1)」に対する回答(2019.8.30)と、その回答への再質問
                     

                   東京海洋大学名誉教授
                   櫻本和美

水産庁は、令和元年7月「新たな水産資源の管理について」を公表し、優先的に検討を開始するマサバ太平洋系群等4魚種7系群について、資源管理目標案と漁獲シナリオ案等を公開した。それに対する13項目の質問状を、8月1日に水産庁および、水産研究・教育機構に郵送した。その13項目の質問内容は、佐藤力生氏の「本音で語る資源管理」にも掲載していただいた。

8月8日に東京で開催された第1回「資源管理方針に関する検討会」において、13項目の質問状に対する回答を、早急に文書でいただけるようお願いし、また、その回答はインターネット上に公開することについて、ご了承をお願いした。その時、質問には個別に回答はできないが、水産研究・教育機構のホームページのQアンドA で回答するという返事をいただいた。8月30日にいただいた上記質問への回答が下記URLである。ただし、スケトウダラとホッケに関しては、さらに時間が必要ということで、今回回答はいただいていない。上記の回答に対して、再度、水産研究・教育機構に本質問状を送信し、同時にまた、「本音で語る資源管理」にも掲載をお願いした。
https://www.fra.affrc.go.jp/shigen_hyoka/SCmeeting/2019-1/faq_t.html

本稿は、第一部「概要」と第二部「各論」から構成されている。2部構成とした趣旨は、まず「概要」で、質問・回答のポイントをご理解いただいた上で、各論を読んでいただいた方が理解が容易になると考えたからである。

第一部「概要」では、キィーとなる3つの質問と、その質問に対する回答について、こちらの解釈を含めてその概要を解説した。回答に記載された表現のままでは、その趣旨が理解しがたいと思われる場合には、より回答内容が理解しやすくなるように、回答の表現を変更しているので、その点はご注意いただきたい。第二部「各論」については、質問事項ごとに、水産研究・教育機構の回答を示し、それに対するコメント・再質問等を示した。

第一部 「概要」

【1】 キィーとなる質問A (8月1日の質問2の内容と同じ)
再生産関係として、ホッケー・スティック・モデル(HSモデル)を仮定することの科学的正当性について

キィーとなる質問A の回答
HSモデルを仮定しないと、非現実的な過大なMSYになってしまう。MSYに基づく管理を実行するためには、妥当と思われるMSYの推定値が不可欠であり、そのような推定値を得るためにはHSモデルを仮定せざるを得ない。それが、HSモデルを仮定する理由である。MSYを用いるということが至上命令であり、科学的正当性などを議論していては、MSYを用いた管理ができなくなってしまうので、そのような議論はしない。HSモデルを仮定して管理を実施するが、データが蓄積された段階で、改訂していくという順応的管理の考え方を用いるので、問題はない。

キィーとなる質問Aの回答に対するコメント

順応的管理の意味を間違って使っていませんか? 順応的管理では、新たなデータが得られた段階で改訂していけばいいのだから、たとえ最初は科学的正当性のないモデルを設定して議論を進めていっても問題はない、などという方法ではありませんよ。

HSモデルが正しいと仮定して管理を実施することの弊害は、既に、櫻本によって示されています(本音で語る資源管理2019.8.22)。すなわち、HSモデルを仮定すると、漁獲量規制の効果を過小評価することが、明らかにされています。データが蓄積された段階で、改訂を行っていくという順応的管理の考え方を用いたところで、折れ曲がる点が変更されていくだけで、科学的正当性のない新たなHSモデルに更新されるだけである。最初に設定したモデルが最後まで使い続けられることに変わりはない。最初に設定するモデルが適切であるか否かが極めて重要である。

【2】 キィーとなる質問B (8月1日の質問1の内容と同じ)
古典的なMSYと、今回算定したMSYの相違はどこか?

キィーとなる質問Bの回答
古典的なMSYは環境変動等を考慮しないで計算しており、今回算定したMSYは、環境変動等の不確実性を考慮し算出している点が異なる、という回答である。

キィーとなる質問Bへのコメント
質問の意味は、どのようにしてMSYを算定したかではなく、MSYを用いてどのように管理を行うか、その方法に相違があるのか、という質問である。すなわち、資源管理の目的が 「資源量を、MSYが達成できる(とされる)固定された資源水準(BMSY)に維持すること」であり、古典的なMSYとどこが違うのか、という質問である。しかし、それに対する回答は全くされておらず、再度、同じ質問をしたい。

【3】 キィーとなる質問C (8月1日の質問3の内容と同じ)
過去の親魚量と漁獲量の関係はMSY理論が誤りであることを示しているのではないか?
例えば、ゴマサバ太平洋系群(8月1日の質問の図14)の ①の期間では親魚量は低く、限界管理基準(黄色の点線)のレベルと目標管理基準値(緑の点線)のレベルとの間を推移している。また、①の期間(1995-2005年)の平均漁獲量(13万1千トン)はMSY(10万5千トン)よりも30%も大きいにもかかわらず、②の期間で親魚量が急増している。しかし、MSY理論では、MSYより過大な漁獲を行った場合、必ず親魚量は減少するはずであり、このような結果は起こりえない。すなわち、このような結果はMSY理論と矛盾するものであり、MSY理論が誤っていることを示すものである。

キィーとなる質問Cの回答
ゴマサバ太平洋系群では、1990年代後半から2000年代前半にかけて、漁獲量がMSYよりも多かったために、親魚量がMSY水準よりも低く推移し、MSYの考え方に合致している。
「上記期間の後も、漁獲量がMSYより大きく、漁獲圧が過剰となっているにも関わらず、親魚量が増大したのは、2004年と2009年に卓越年級群が発生したためである」

キィーとなる質問Cへのコメント
合致する場合はMSYの考え方が正しいと主張し、合致しない場合は卓越年級群の発生が原因だということである。

つまり、上記の回答は、「卓越年級群の発生があると、MSY理論はあてはまらない」ということを認めていることであり、逆に言うと、「MSY理論は卓越年級群の発生がない場合に限り成り立つ」 ということを認めていることになる。

卓越年級群の発生しない資源などないので、結局、「MSY理論は全く使い物にならない」と言っているのと同じである。

また、「今回算定したMSY」は「環境の影響を考慮するとともに、不確実性(分からない部分)に頑健なものになっている」 はずではなかったのか? 「卓越年級群の発生があると、MSY理論にあてはまらなくなってしまう」 のに、どこが 「頑健」 なのか? 回答の内容同志が矛盾しているのではないか?

【4】 結論
以上、主要な3つの質問とその回答内容について解説したが、水産研究・教育機構の回答から、以下のような結論を導きだすことができる。詳細は第二部各論で説明する。

(1) MSY推定の根拠となるHSモデルに科学的正当性は全くない。
(2) 実際の資源変動と漁獲量の関係は、MSY理論では説明できない。
(MSY理論は全く使い物にならない)
(3) 「今回算定したMSY」と「古典的なMSY」には管理実行上の相違は全くない。

 

 

第二部 各論

以下、8月1日に郵送した質問事項について、質問項目ごとに質問内容とそれに対する水産研究・教育機構(以後、水研機構)の回答、その回答に対するさらなる質問等について述べることにする。青字で示したものが、水研機構からの回答である。黒字は、水研機構からの回答に対するコメントや新たな質問を示す。また、水研機構からの回答が不十分な場合や質問に全く答えていない場合は、8月1日の質問と同じ内容の質問を再度示した。黒字で記載した質問事項については、再度、水研機構のQアンドAで、回答を公表していただけるように、お願いしたい。

質問 1
 古典的なMSY理論と「MSYの新定義」によるMSY理論の相違を説明して下さい。「新たな水産資源の管理」で使用するMSYは古典的なMSY理論とは異なるかのように、意図的に誤った説明をしているのではないでしょうか? 

 

質問1への回答
古典的なMSY(最大持続生産量)が決定論的な(一義的に決まる)再生産関係に基づいているのに対し、今回算定したMSYは、再生産関係に関して、加入のバラツキや(必要な時には)自己相関(加入が良い年あるいは悪い年が続く傾向)を組み込んだシミュレーションに基づいています。つまり、加入に影響を及ぼす要因として、環境要因か親魚量かの二者択一的な議論ではなく、双方の影響を考慮しています。したがって、「令和元(2019)年度 漁獲管理規則およびABC算定のための基本指針」におけるMSYや管理基準値等は、古典的なMSYと異なり、環境の影響を考慮するとともに、不確実性(分からない部分)に頑健なものになっています。 (2019/8/30)

 

質問1への回答への再質問
この回答は、オリジナルな質問に全く答えていません。オリジナルな質問を繰り返します。その理由を下記で説明します。

上記の回答によると「古典的なMSY」と「今回算定したMSY」の相違は以下だと述べています。

【古典的なMSY】 「古典的なMSY(最大持続生産量)が決定論的な(一義的に決まる)再生産関係に基づいている」

【今回算定したMSY】 「今回算定したMSYは、再生産関係に関して、加入のバラツキや(必要な時には)自己相関(加入が良い年あるいは悪い年が続く傾向)を組み込んだシミュレーションに基づいています。つまり、加入に影響を及ぼす要因として、環境要因か親魚量かの二者択一的な議論ではなく、双方の影響を考慮しています。」

古典的なMSYと今回算定したMSYの相違として、「今回算定したMSYは、・・・」と記述されているように、算定の仕方、つまり、推定方法が違うといっているだけである。オリジナルな質問の内容は、資源を管理するために、算定したMSYをどのように使うのか? そのMSYの使い方は、「古典的なMSY」と「今回算定したMSY」では、どのように違うのか、という質問です。

もう少し具体的に言うと、「新たな水産資源の管理について(水産庁ホームページ)」の6ページ目に記載されている図(少し改変して下記の図1に示した)と古典的なMSYを用いた資源管理の図(下記の図2)との相違を説明してください、という質問です。

すなわち、資源管理の目的が 「資源量をMSYが達成できる(とされる)ただ一つに固定された資源水準(BMSY)に維持すること」であり、古典的なMSYの利用の仕方と、どこが違うのか、という質問です。

さらに言うと、図1は、「加入に影響を及ぼす要因として、環境要因か親魚量かの二者択一的な議論ではなく、双方の影響を考慮しています。」 と言いながら、MSYを決定する要因は親魚量だけであり、その親魚量がただ一つ存在するという考え方は、古典的なMSY(図2) とどこが違うのですか、という質問です。

 

質問 2
 「現在の環境下における「MSY」が計算できる」とあるが、「現在の環境下」とは、例えば、マサバ太平洋系群の場合は、1970年から2017年までの48年間を指すのか?「現在の環境下」と考えるには、48年間は長すぎないか?この間、3回のレジームシフト(1976/77、1989/90、1998/99)が起きたことが知られているが、レジームシフトに関係なく、1つの「MSY」、1つの「MSYを達成する親魚量」のみを推定して、「環境変動に対応した…」と言えるのか?

 

質問2への回答
質問1で回答しているように、今回算定したMSYは、加入のバラツキ等を組み込んだ計算をすることで、環境の影響にも対応しています。
 また、マサバ太平洋系群に関しては、海洋環境のレジームに応じて再生産成功率が劇的に変化するというよりは、緩やかに変化していると見るほうが妥当と考えられます。この緩やかな変化を組み込むために、加入の残差(再生産関係からのズレ)に自己相関を考慮して、MSYや管理基準値の算定を行っていますが、推定された自己相関係数は0.37であり、この値は特別に高い値ではありません。例えば、154個の資源から加入変動を推定したメタ解析(複数の研究の結果を統合して行う解析)では、平均的な自己相関係数が0.43という結果が得られています(Thorson et al. 2014, CJFAS 71: 973-983)。したがって、レジームに応じて再生産関係が変化する資源という証拠は得られていないため、レジームを分けてMSYを算定するのではなく、利用可能な全期間(1970-2017年)のデータを使用してMSYを算定しています。
 なお、マサバ太平洋系群とゴマサバ太平洋系群を対象とした第一回「資源管理方針に関する検討会」(以下、検討会)での議論をふまえ、レジームを区分した場合の試算結果についても第二回検討会では示すことにしました。
(2019/8/30)

 

質問2への回答へのコメント
「マサバ太平洋系群に関しては、海洋環境のレジームに応じて再生産成功率が劇的に変化するというよりは、緩やかに変化していると見るほうが妥当と考えられます。」 とありますが、レジームシフトの解釈として「レジームシフトとは劇的に変化すること」という解釈で果たして正しいのでしようか? 「劇的に変化する」というよりも、レジーム間の平均的な値の差の方が重要なのだと私は考えています。

下図(8月1日の質問状の図3b)はマサバ太平洋系群の再生産成功率(RPS)の経年変化を示したものです。黒の横棒は全期間のRPSの平均値(全平均)を示したものです。

第1のレジームでは、各年のRPSはほとんどが、全平均より小さく、第2、第3レジームでは、各年のRPSはほとんどが、全平均より大きく、それに伴って、加入量の増減が生じています(8月1日の質問状の図3a)。

第1のレジームでは、加入量はずっと減少傾向にあったものが、第2レジームで加入量がいきなり、加入量の全平均に近い値まで回復したのは、第2レジームでの全平均よりも高いRPSによるものです。このような加入量の変化に対応して、親魚量も変動していることがわかります。

この現象をみて、「マサバ太平洋系群に関しては、海洋環境のレジームに応じて再生産成功率が劇的に変化するというよりは、緩やかに変化していると見るほうが妥当と考えられます。」と考えるか、レジームシフトの影響は極めて大きいと考えるかは、研究者としての感性の問題なので、これ以上言っても水掛け論になるので、やめることにしますが、どちらの考え方が妥当であるかは、読者の皆さんの判断にお任せしたいと思います。

 

質問 3
 マサバ太平洋系群について、第1のレジーム(1977-1989)での加入量と親魚量の減少は乱獲によるものであり、第2のレジーム(1990-1998)で加入量は増加に転じ、親魚量が下げ止まったこと、また、第3レジーム(1999-)に入り、加入量はさらに増加し、親魚量も増加したのは、管理(TAC制度)が成功したからであるとお考えになっているのでしょうか?
 また、「現在の環境下における「MSY」が計算できる」とあるが、レジームシフト等の環境変動の影響は、どのように反映されているのか?説明をお願いしたい。

 

質問3への回答
マサバ太平洋系群とゴマサバ太平洋系群を対象とした第一回「資源管理方針に関する検討会」では、(1)マサバ太平洋系群の加入メカニズムについて、産卵期・海域が早期・低水温であるほうが好条件であるものの、その後の生残に関してはより高温の適水温域に速やかに移動することが必要であり、高水温期・低水温期といった区分と単純に対応した変動とは考えられないこと、(2)第1の期間とそれ以降の期間では再生産関係の変動幅に違いがあり、第1の期間のほうが安定的であることを示し、これは親魚が高齢まで広い年齢群で構成されていることで説明でき、環境要因との関係だけではとらえられないこと、(3)マイワシ太平洋系群については1988~1991年に4年連続で極めて再生産成功率の低い年が見られ、ほぼ同時期にマサバ太平洋系群についても再生産成功率の低い年が見られたものの、長期的にはこれら2種では資源変動は異なると考えられること、(4)第2の期間にあたるマサバ太平洋系群の資源低水準期においては、低年齢時から漁獲圧が高まる傾向が見られ資源回復に至らなかったことを説明しました。さらに、TAC対象種では総じて漁獲割合が低下してきたこと等が示されています(Ichinokawa et al. 2017, ICES. JMS 74: 1277-1287)し、近年における太平洋マサバの資源管理効果についても示されています(Ichinokawa et al. 2015, Ecological Applications 25:1566-1584)。
 レジームシフト等の環境の影響については、質問2で回答しています。
(2019/8/30)

 

質問3の回答へのコメント
(1)  レジームシフトは別に、「高水温期・低水温期といった区分と単純に対応した変動」によって起こっている訳ではないので、この反論はあまり意味がありません。
(2) 「第1の期間とそれ以降の期間では再生産関係の変動幅に違いがあり、第1の期間のほうが安定的であることを示し」 とありますが、「第1の期間のほうが安定的である」 のにどうして、第1期で加入量は減少傾向を示しているのでしょうか?
(3) この反論は、上記(1)の反論を矛盾しませんか? マイワシとマサバでは分布域も産卵期も異なるのに、長期間で同じ傾向を示すはずがないがないでしょう。むしろ、マイワシとマサバで再生産成功率の極めて低い時期が一致したことの方が、珍しい現象というか、特筆すべき現象だと思いますが・・・。
(4) 「第2の期間にあたるマサバ太平洋系群の資源低水準期においては、低年齢時から漁獲圧が高まる傾向が見られ」 とありますが、「低年齢時から漁獲圧が高まる傾向が見られ」るにもかかわらず、第1の期間の親魚量の減少傾向が第2の期間から下げ止まっているのは、なぜでしょうか?

レジームシフト等の環境の影響については、質問2への回答に対するコメントと同じです。

 

質問 4
 シュカルスキーらは224にもおよぶ系群の再生産関係を調べ、「85%の系群で、子の数は親の量によっては決まらず、環境による影響の方がはるかに大きい」ことを示した。シュカルスキーらが示した再生産関係は、85%以上で、親魚量と加入量が無相関となるか、負の相関(親魚量が増大すればするほど、加入量は減少する)を示すかの2パターンとなることを示した。そのようなデータを使って、MSYを推定することに意味があるのか、説明をお願いしたい。

 

質問4への回答
親魚量に対して加入量が一定の場合や、親魚量の増加に伴い加入量も増加するデータしか得られていないような場合等には、MSYの算定が困難になります。
 「令和元(2019)年度 漁獲管理規則およびABC算定のための基本指針」では、このような問題への統一的な解決策として、ホッケー・スティック型の再生産関係(HS)を適用することを提案しています。実際には、HSの折れ点が親魚量の観測値の範囲内に収まるように制約をつけており、これにより現実的な管理基準値を得ることが可能となります(Ichinokawa et al. 2017 ICES. JMS 74: 1277-1287)。当然、実際の折れ点は、観測値の範囲外にある可能性もありますが、データの蓄積に伴い、折れ点や目標管理基準値の推定精度を向上しながら資源管理を行うことで、順応的な管理ができると考えられます。例えば、現在までに観測されてきた親子関係が比例関係の場合には、折れ点を観測された親魚量の最大値と仮定したうえで目標管理基準値を設定しつつ、今後、これまでの親魚量の観測値の範囲を上回る情報が蓄積されれば、より正確な目標管理基準値の算定が可能になります。そのため、今回提案した目標管理基準値は、MSY水準を目指した資源管理を行ううえで、適切な目標と考えられます。なお、これまでに観測されたデータからでは正確な折れ点の推定が困難な資源に対しても、この順応的管理に基づくアプローチで適切に資源管理ができることは、管理戦略評価(MSE)手法を用いた検討により確かめられています。
 さらに、HSよりも適切と考えられる場合には、リッカー型やベバートン・ホルト型の再生産関係も適用可能です。
(2019/8/30)

 

質問4への回答への再質問
回答内容のどこが科学的な説明になるのか、全く理解できません。

「親魚量に対して加入量が一定の場合や、親魚量の増加に伴い加入量も増加するデータしか得られていないような場合は、MSYの算定が困難になるが、ホッケー・スティック型の再生産関係(HS)を適用することが、その解決策になる」

「その解決策になる」という意味が理解できません。何を解決するための解決策になるというのでしょうか? 「親魚量に対して加入量が一定の場合や、親魚量の増加に伴い加入量も増加するデータしか得られていないような場合は、MSYの算定が困難になる」。しかし、「ホッケー・スティック型の再生産関係(HS)を適用することが、その解決策になる」 ということは、「HSモデルを用いれば、MSYの算定ができるので、「MSYの算定が困難」 という問題が解決できる」と言うことですね。つまり、「HSモデルを用いたら、MSYが推定できるようになると言っているだけで、「HSモデルを適用すること」が、科学的に妥当だという説明には全くなっていせんが・・・。HSモデルの科学的正当性を示してほしいというのが質問です。

「実際には、HSの折れ点が親魚量の観測値の範囲内に収まるように制約をつけており、これにより現実的な管理基準値を得ることが可能となります」 とありますが、なぜ、「HSの折れ点が親魚量の観測値の範囲内に収まるように制約をつけた」 のか? その科学的根拠をお示し下さい。また、なぜ、「実際には、HSの折れ点が親魚量の観測値の範囲内に収まるように制約をつける」ことによって、「より現実的な管理基準値を得ることが可能となる」 のか? その科学的根拠をお示し下さい。

順応的管理の意味を間違って使っていませんか? 順応的管理では、新たなデータが得られた段階で改訂していけばいいのだから、たとえ最初は科学的正当性のないモデルを設定して議論を進めていっても問題はない、などという方法ではありませんよ。

HSモデルが正しいと仮定して管理を実施することの弊害は、既に、櫻本によって示されています(本音で語る資源管理2019.8.22)。すなわち、HSモデルを仮定すると、漁獲量規制の効果を過小評価することが、明らかにされています。データが蓄積された段階で、改訂を行っていくという順応的管理の考え方を用いたところで、折れ曲がる点が変更されていくだけで、科学的正当性のない新たなHSモデルに更新されるだけである。最初に設定したモデルが最後まで使い続けられることに変わりはない。最初に設定するモデルが適切であるか否かが極めて重要である。

「なお、これまでに観測されたデータからでは正確な折れ点の推定が困難な資源に対しても、この順応的管理に基づくアプローチで適切に資源管理ができることは、管理戦略評価(MSE)手法を用いた検討により確かめられています。」とありますが、これは本当ですか? 上記でも述べたように、折れ曲がる点が変更になったところで、科学的正当性のない新たなHSモデルに更新されるだけで、科学的正当性のないHSモデルが使い続けられることに変わりはない。「なお、これまでに観測されたデータからでは正確な折れ点の推定が困難な資源に対しても、この順応的管理に基づくアプローチで適切に資源管理ができる」 とありますが、順応的管理に基づくアプローチで適切に資源管理ができた例を、お示し下さい。

 

質問 5
 ゴマサバ太平洋系群の再生産関係に回帰直線をあてはめると、傾きは0.018となり、X軸にほぼ平行な直線になる。つまり、加入量と親魚量は無相関という結果が得られる。加入量と親魚量が無相関であるデータからMSYを推定することに科学的正当性はあるか、説明をお願いしたい。ちなみにICCATのクロマグロでは、再生産関係が不明であるとの理由から、2017年からクロマグロ資源に対してMSYの推定をやめ、神戸プロットの使用も止めている。なぜ、このような無相関なデータにホッケー・スティックモデルをあてはめて、MSYを推定しようとするのか、その科学的正当性について説明をお願いしたい。

 

質問5への回答
ホッケー・スティック型の再生産関係を適用する理由については、質問4で回答しています。
なお、国際的に神戸プロットを使わない方向にあるとは認識していません。例えばNPFC(北太平洋漁業委員会)ではサンマ資源を対象に神戸プロットが使用されていますし、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)でも、マジュロプロット(20%BゼロとFmsyが基準)とともに神戸プロットも提示されています。ICCAT(大西洋まぐろ類保存委員会)のクロマグロについては、モデル設定により資源量の判断が大きく異なったり、過剰漁獲でないことは合意されるものの資源量の判断としては合意に至らないといった、当該資源をめぐる特定の事情により、神戸プロットが使用されていないものと認識しています。
(2019/8/30)

 

質問5への回答への再質問
「ホッケー・スティック型の再生産関係を適用する理由については、質問4で回答しています。」
ということですが、質問4と同じ質問を再度繰り返しお聞きします。

また、神戸プロットに関しては、「ICCAT(大西洋まぐろ類保存委員会)のクロマグロについては、モデル設定により資源量の判断が大きく異なったり、過剰漁獲でないことは合意されるものの資源量の判断としては合意に至らないといった、当該資源をめぐる特定の事情により、神戸プロットが使用されていないものと認識しています。」 ということですが、神戸プロットの不使用に関して、マグロ研究の権威であり、元水産庁遠洋水産研究所の研究者でもあった鈴木治郎氏が、水産経済新聞で次のように述べています(鈴木、2017)。上記の「認識」 が妥当だとはとても思えません。

「2017年になって, 大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)は大西洋クロマグロに対して, 「再生産関係が不明であり, MSYの推定や長期の加入量変動の予測ができないため」との理由で神戸チャートを使うことを中止した. 「再生産関係が不明である」のは今に始まったことではないが, 新しい知見が得られたわけではないのに, なぜ長年使い続けてきた神戸チャートの使用を2017年になって突然やめたのか, その理由をICCATは丁寧に説明すべきである(鈴木、2017)」と述べ、中止にした理由をきちっと説明しないICCATの姿勢を批判しています。

鈴木治郎 神戸チャート不掲載に丁寧な説明を(2017.11.1. 水経塾). 日刊水産経済新聞. 2017

「また、WCPFC(中西部太平洋まぐろ類委員会)でも、マジュロプロット(20%BゼロとFmsyが基準)とともに神戸プロットも提示されています。」 ということですが、「20%BゼロをBMSYの代わりに使用してもいいという科学的根拠をお示し下さい」。まさか「マジュロプロットを提案したのは私たちではないので、提案者に聞いてほしい」 などと言って逃げたりはしないでしょうね。「マジュロプロットではこうだ」 と主張する以上、その考え方を肯定しているわけですから、その科学的根拠も答えられるはずですよね。是非、「20%BゼロをBMSYの代わりに使用してもいい」と言える科学的根拠について、水研機構の資源研究者の方々の見解をお聞きかせ下さい。

 

質問 6
 ゴマサバ東シナ海系群の再生産関係として、ホッケー・スティックモデルがあてはめられている。この場合は、観測された親魚量の最大値8万5千トンで折れ曲がるホッケー・スティックモデルがあてはめられている。従って、折れ曲がっている点より大きな再生産関係を示すデータはない。もし、この点で折り曲げずに、直線をそのまま引き延ばしたモデル(比例モデルという)を考えると、統計的には、この比例モデルの方が、ホッケー・スティックモデルより良いモデルと判断されるはずである。なぜなら、上記ホッケー・スティックモデルと比例モデルの2つのモデルで、計算値と観測値の差を二乗して合計した値(偏差二乗和という)は、そちらのモデルでも同じ値になる。しかし、モデルに使用するパラメータ数は比例モデルが1つ、ホッケー・スティックモデルが2つだから、比例モデルの方が使用するパラメータ数は1つ少ない。当てはまりが同じなら(偏差二乗和の値が同じなら)、より簡単なモデルの方がモデルの評価得点が高く、いいモデルだと判断されるので、ゴマサバ東シナ海系群の再生産関係として最適なモデルは比例モデルということになる。
 しかし、比例モデルを採用すると、MSYが計算できないので、MSYを計算するために、より良いモデルを捨て、ホッケー・スティックモデルを採用したと考えられる。比例モデルではなく、ホッケー・スティックモデルを採用する科学的正当性について説明をお願いします。

 

質問6への回答
観測値の範囲内では、親子関係が比例関係にあるような資源についても目標管理基準値を算定するための解決策として、ホッケー・スティック型の再生産関係(HS)を適用する理由については、質問4で回答しています。 
 仮に、比例モデルを仮定すれば、安定して漁獲が得られる親魚量を決定することができず、同じ環境条件ならば親魚量が多いほうが加入量は多く、親魚をできる限り多く残すべきであるということになります(松田ら 2018, 月刊海洋 50: 430-454)。今回の目標管理基準値等の算定については、資源を効率的に活用するため、観測された親魚量の最大値をHSの折れ点に定めたうえで、折れ点周辺の情報を得ることにより、より正確な目標管理基準値を定めようという順応的管理の考え方に基づいています。
 なお、情報のない観測値の範囲外について、どちらが正しいモデルかを判断することはできません(親魚量が増加すれば、加入もそれに応じて無限に増加していくという比例モデルが“より良い”わけではありません)。我々が行ったシミュレーションでは、情報の蓄積に伴い、更新された管理基準値に基づく資源管理を実施していくことにより、適切な管理が行えることが確認されています。
(2019/8/30)

 

質問6への回答への再質問
「観測値の範囲内では、親子関係が比例関係にあるような資源についても目標管理基準値を算定するための解決策として、ホッケー・スティック型の再生産関係を適用する理由については、質問4で回答しています。」
ということですが、質問4で行った再質問と同じ内容をここでも再度質問したいと思います。

仮に、比例モデルを仮定すれば、安定して漁獲が得られる親魚量を決定することができず、同じ環境条件ならば親魚量が多いほうが加入量は多く、親魚をできる限り多く残すべきであるということになります(松田ら 2018, 月刊海洋 50: 430-454)。

ということですが、この批判は全く非科学的です。なぜならば、「同じ環境条件ならば親魚量が多いほうが加入量は多く・・・」 とありますが、これまで古今東西で 「環境条件が同じだった」 ことなど一度としてありません。この海域はこの数十年の間、環境状態が一定であった、といえるような例が、もしあれば教えて下さい。この前提条件は、「もし、太陽が西から登ればこうなるので、あなたの言っていることは間違いである」と言って批判しているようなものである。前提条件自体が非現実的であり、全く意味がない。

一方で、「加入に影響を及ぼす要因として、環境要因か親魚量かの二者択一的な議論ではなく、双方の影響を考慮しています。」 と言いながら、その一方で、「同じ環境条件ならば・・・」と言って批判することの矛盾に気づいてほしいものです。加入に影響を及ぼす要因として、環境要因と親魚量は「不二一如」であり、別々に論じることなどできないことを真に理解しなければ、資源変動を理解することなどできないでしょう。

なお、情報のない観測値の範囲外について、どちらが正しいモデルかを判断することはできません(親魚量が増加すれば、加入もそれに応じて無限に増加していくという比例モデルが“より良い”わけではありません)。我々が行ったシミュレーションでは、情報の蓄積に伴い、更新された管理基準値に基づく資源管理を実施していくことにより、適切な管理が行えることが確認されています。

ということですが、私も資源水準がどのような大きさになっても、比例モデルが正しいといっているわけではないので、誤解がないようにお願いします。それよりも、「情報のない観測値の範囲外について、どちらが正しいモデルかを判断することはできない」 にも関わらず、ホッケー・スティック型の再生産関係に限定して議論を進めることの方が問題ではないでしょうか? 少なくとも、両方の可能性をチェックするというのが、真の科学的な態度ではないか、と言っているわけです。

上記でも述べたように、ホッケー・スティック・モデルを正しいと仮定して管理することの弊害は、既に、櫻本によって示されています(本音で語る資源管理2019.8.22)。すなわち、ホッケー・スティック・モデルを仮定すると、漁獲量規制の効果を過小評価することが、明らかにされています。

情報の蓄積に伴い、更新された管理基準値に基づく資源管理を実施していくことにより、適切な管理が行えることが確認されています。 とありますが、そのような例をお示し下さい。すでに述べたように、折れ曲がる点が変更になったところで、科学的正当性のない新たなHSモデルに更新されるだけで、科学的正当性のないHSモデルが使い続けられることに変わりはない。更新された管理基準値の科学的正当性が保証されるという根拠も当然ないことになります。「適切な管理が行えることが確認されています」とはとても言えないと思います。

 

質問 7
 マサバ太平洋系群の再生産関係は大きく2つの部分に分けることが可能で、増加していく時代と減少していく時代に分けられる。前者では、親魚量が増加していくにも関わらず、加入量は増えつづけ、後者では、親魚量が減少しているにも関わらず、加入量は減りつづけていることがわかる。
 リッカーモデルでは親魚量が過大になると加入量は減少し、ホッケー・スティックモデルは親魚量がある値以上に大きくなると、加入量は一定値になるというモデルである。しかし、上記のような再生産関係の軌跡はリッカーモデルやホッケー・スティックモデルでは全く説明できず、リッカーモデルやホッケー・スティックモデルが誤りである(架空のものである)ことを示していると考えられるが、それに対する見解をお聞かせ下さい。

 

質問7への回答
今回使用しているホッケー・スティック型の再生産関係(HS)を対数スケール上にプロットすると以下の図のようになります。増加時期と減少時期のいずれも、そのほとんどは折れ点より低い範囲に位置しています。HSでは、親魚量がある値以上に大きくなると加入量を一定とするのはその通りですが、マサバ太平洋系群で適用しているHSは観測値と矛盾しない結果となっています。 (2019/8/30)

                                   

質問7への回答への再質問
これは、ほとんどの再生産関係を示す点が折れ点より下にあるからいいとか悪いとかいう問題ではなく、再生産関係のメカニズムそのものに対する質問です。

もし、加入量が親魚量によって決定され、HSモデルに従って変動しているとすると、環境変動等の影響を受けて、加入量はHSモデルが示す線上より大きい年もあれば、小さい年もある、ということになります。環境変動の影響がランダムだとすると、加入量がHSモデルが示す線上より大きい場合も小さい場合も、同じように起こることになります。しかし、実際には、親魚量とともに加入量が増大するときは、加入量はそのほとんどがHSモデルが示す線上より大きく、反対に、親魚量とともに加入量が減少するときは、加入量はそのほとんどがHSモデルが示す線上より小さくなり、全体として時計回りのループを描いています(8月1日の質問状の図10)。なぜ、そのようなパターンになるのか、そのメカニズムを説明してください、と問うているのです。

 

下記の問8でも全く同じ議論が成り立ちます。

 

質問 8

 3年移動平均をとってゴマサバ太平洋系群の再生産関係を図示すると、スケトウダラ太平洋系群同様、親魚量の増大に伴って加入量も増大する時期と、親魚量の減少に伴って加入量も減少する時期の2つに分けられることがわかる。
 上記のような再生産関係の軌跡はホッケー・スティックモデルでは全く説明できないにも関わらず、このようなデータにホッケー・スティックモデルをあてはめてMSYを推定することの科学的正当性についてご説明をお願いします。

 

質問8への回答
ゴマサバ太平洋系群のMSY算定には、ホッケー・スティック型の再生産関係(HS)ではなく、リッカー型の再生産関係(RI)を適用しています。当該系群における加入量と親魚量のデータが利用可能な期間は1995年以降と比較的短く、親魚量に対して加入量がほぼ一定のため、仮に再生産関係を誤って適用していたとしても管理が失敗するリスクを軽減できるとの観点で、モデルを比較した結果、RIを採用しました。具体的には、HS(あるいはRI)が正しい場合に、誤ってRI(あるいはHS)から算定された管理基準値に基づく資源管理を行った場合の親魚量と漁獲量の推移を調べました。その結果、RIが正しいにもかかわらず誤ってHSを仮定すると、親魚量が大きく減少し限界管理基準値を下回るリスクが増大するのに対し、HSが正しいにもかかわらず、誤ってRIを仮定するとそのようなことは起こらず、かつ本来得られる漁獲量からの減少程度も相対的に小さかったため、RIを適用することとしました。このように、必ずHSを適用しているわけではなく、判断が難しい場合には、シミュレーションによってリスク分析を行ったうえで、再生産関係の選択や管理基準値の算定を実施しています。(2019/8/30)

 

質問8への回答への再質問

「ゴマサバ太平洋系群のMSY算定には、ホッケー・スティック型の再生産関係(HS)ではなく、リッカー型の再生産関係(RI)を適用しています。」 ということですが、自分たちの都合で、ホッケー・スティック型の再生産関係(HS)を使ってみたり、リッカー型の再生産関係(RI)を使ってみたり、するということですね。

表1は平成 31(2019)年度管理基準値等に関する研究機関会議報告書(系群別)に記載されているモデル選択の表を集計したものである(一部改変)。赤字で示した再生産モデルが、データに最も適合する最適なモデルを示す。青字は実際に採用された再生産モデルである。表の一番左端のモデルの欄を見ていただくと、統計的に見て最適なモデル(赤で示したモデル)と実際に採用されたモデル(青で示したモデル)が一致している系群 は1つもない。

5列目の「順位」というのは、モデルとして統計的にみて一番いいモデルから最下位(6番目)のモデルまで、その順位を示しています。採用されたモデル(青で示したモデル)が5番目であったり、6番目であったりするケースも多い。2番目ぐらいが採用されるならまだしも、5番目や6番目(最下位)と、順位が低いものが採用されているのは、かなり恣意的と言わざるを得ない。

上記の表1で、最適なモデルを使った場合に、どんな管理になるのか、是非示していただきたい。

表 1  再生産モデルの選択

 

さらに、質問7と同じ質問であるが、ゴマサバ太平洋系群の再生産関係をプロットすると(8月1日の質問状の図11)、マサバ太平洋系群と同様に、加入量と親魚量がともに増大していく時期(A)と、加入量と親魚量がともに減少していく時期(B)に分かれる。

加入量と親魚量がともに増大していく時期(A)では、親魚量が増大するに伴い、加入量は増大する一方である。また、加入量と親魚量がともに減少していく時期(B)では、親魚量が減少するに伴い、加入量は減少する一方である。また、全体としては、時計回りの軌道を描く。このような現象(特に、B、のような現象)は、リッカー型の再生産関係(RI)では説明できない。もし、リッカー型の再生産関係(RI)が正しければ、親魚量が減少していく場合は、加入量はAのような軌道を、反時計回りに移動するはずである。なぜ、Bのような軌道を描く現象が現れるのか、なぜ、時計回りのループを描くような軌跡が現れるのか、そのメカニズムを、説明していただきたい。

 

 

質問 9
 ゴマサバ太平洋系群の過去の親魚量と漁獲量の時系列、および、シミュレーションによる親魚量と漁獲量の時系列は、MSY理論が誤りであることを示していると思われるが、どのようにお考えですか?

 

質問9への回答
ゴマサバ太平洋系群では、1990年代後半から2000年代前半にかけて、漁獲量がMSYよりも多く、漁獲圧が過剰となることで、親魚量がMSY水準(SBmsy)よりも低く推移したという、MSYの考え方に合致した結果が得られています。その後、親魚量が増大したのは、漁獲量や漁獲圧が減少したためではなく、2004年と2009年に卓越年級群が発生したためです。この期間の加入量については2つの尖ったピークが見られることからその影響が読み取れます。卓越年級群が発生していない2010年以降は、漁獲量と親魚量を維持することができず、2000年代前半の状態は持続可能でなかったことを示唆しています。
 また、ゴマサバ太平洋系群では、現状の漁獲圧でもMSY水準(Fmsy)をやや下回るので、漁獲圧を削減する必要があるという結果にはなっていません。新たな漁獲管理規則を適用したからといって、すべての系群で漁獲圧を削減する必要があるというわけではなく、本系群のように現状の漁獲圧の水準が推奨されるものも存在します。 (2019/8/30)

 

質問9への回答への再質問
 「その後、親魚量が増大したのは、漁獲量や漁獲圧が減少したためではなく、2004年と2009年に卓越年級群が発生したためです」。ええ、ええ,ええ!! 卓越年級群が発生したら、MSY理論は成り立たないということでしょうか? 逆に言うと、MSY理論は卓越年級群が発生しない場合に限り成り立つ理論ということでしょうか? 卓越年級群が発生しない資源などないので、MSY理論は全く使い物にならない、ということでしょうか?

また、上記の質問1の回答では「今回算定したMSYは、再生産関係に関して、加入のバラツキや(必要な時には)自己相関(加入が良い年あるいは悪い年が続く傾向)を組み込んだシミュレーションに基づいています。つまり、加入に影響を及ぼす要因として、環境要因か親魚量かの二者択一的な議論ではなく、双方の影響を考慮しています。」 。「令和元(2019)年度 漁獲管理規則およびABC算定のための基本指針」におけるMSYや管理基準値等は、古典的なMSYと異なり、環境の影響を考慮するとともに、不確実性(分からない部分)に頑健なものになっています。」 ということですが、下図(8月1日の質問状の図13に相当)の赤で示したMSYもそのようにして算出されたMSYのはずですが、「卓越年級群が発生すると、MSY理論では説明できない現象が起こってしまうということでしょうか?」 「環境の影響を考慮するとともに、不確実性(分からない部分)に頑健なものになっています。」 という質問1の回答と完全に矛盾していますね。

 

質問 10
 ゴマサバ東シナ海系群の過去の親魚量と漁獲量の時系列、および、シミュレーションによる親魚量と漁獲量の時系列は、MSY理論が誤りであることを示していると思われるが、どのようにお考えですか?

 

質問10への回答
ゴマサバ東シナ海系群については、MSY水準(Fmsy)を上回る漁獲圧のもとで、親魚量と漁獲量がともに経年的に減少しているため、誤りであるとは考えていません。今回の検討の結果、当該資源はこれまで限界管理基準値付近で推移し、当該資源の再生産能力を十分に活用できない状態にあったと考えています。
(2019/8/30)

 

質問10への回答へのコメント
「ゴマサバ東シナ海系群については、MSY水準(Fmsy)を上回る漁獲圧のもとで、親魚量と漁獲量がともに経年的に減少しているため、誤りであるとは考えていません。」 ということですが、下図(8月1日の質問状の図15に相当) を見ると、MSYより大きな漁獲量は、1990年代後半と、2000年代中ごろの数年間だけで、「MSY水準(Fmsy)を上回る漁獲圧のもとで、親魚量と漁獲量がともに経年的に減少している」 というのはどこを指して言っているのでしょうか? 

 

質問10への回答への再質問
質問に対する答えに全くなっていませんので、再度質問します。

下図(8月1日の質問状の図15に相当) はゴマサバ東シナ海系群の管理シナリオ案に掲載されている図7(一部改変)を示したものである。図15 で、①の期間の親魚量は限界管理基準値を推移している。黒の実線は①の期間(1992-2017年)の平均漁獲量5.6万トンを示す。5.6万トンの漁獲を26年間続けても、親魚量は特に減少していないので、図1に示したMSY理論が正しければ、5.6万トンは持続生産量(回復量)と考えられる。②の期間では現行の漁獲圧を続けた場合(緑の太線)の漁獲量は①の期間での平均漁獲量(黒の実線)よりもかなり少ないにも関わらず、現行の漁獲圧を続けた場合(緑の太線)の②の期間の親魚量が①の期間の親魚量より減少していくのはなぜか? 図1に示したMSY理論が正しければ、このような結果にはならないはずである。すなわち、このような結果は図1に示したMSY理論と矛盾するものであり、MSY理論が誤っていることを示すものである。 

 

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