全漁連の「JFグループ運動方針案」への質問と修正意見

令和元年11月22日(金)に東京で開催される「JF全国代表者集会」において、5年ごとに策定される「JFグループ運動方針」が採択されることになっています。私も漁協系統組織の役員の一人であることから、その組織協議案(令和元年5月、全漁連)が配布されてきたので、その内容に対し質問と修正意見を提出しました。しかし、11月19日段階になってもなんら事務局である全漁連から回答がありません。要するに無視されたわけです。

 その協議案の表紙には「水産業の成長産業化にむけた改革の実践 ~JFグループが拓く浜の未来~」とありました。もう、これを見ただけで中身が推測できますが、それは何一つ沿岸漁業者の利益になることがない今回の漁業法改訂を是認し、それに自ら追随しようとするものであり、例えれば「泥棒に追い銭運動方針」、さらに過激に言えば「自殺・自爆運動方針」ともいえるものでした。

 昨年5月に発表された水産庁の「水産政策の改革」(案)に対し、漁協理事会での承認を得て組合長名で、昨年6月末に水産庁に質問状を出した時にも「無回答という丁寧な説明」でした。しかし、漁業者の意見を全く聞かず、規制改革の言うがままの膨大な改訂法案を提出したのは水産庁であり、それを短時間で国会で成立させてしまったのが与党議員でありますので、仮に組合員から「なんであんな法案を成立させてしまったのか」と役員としての責任を問われても、「知らないところで勝手に成立した法律なので、自分には責任がない」と申し開きができます

 しかし、今回はそうはいきません。「漁協系統組織自らの責任で策定する運動方針において、改訂漁業法を是認し追随するという、あきらかに浜に対する背任行為にあたる運動方針をなぜ認めたのか」と問われればその責任は免れません。もちろん全国の漁協系統組織の役員にもいろいろな考え方があるでしょう。しかし、組合員の利益確保の観点から運動方針に対する是非の意見言うことはすべての役員に課せられた責任であると思います。黙っていてはそれに賛同したことになります。質問しても回答しない全漁連にはきちんと抗議しなればなりません。

 ということで、「JF全国代表者集会」が間近に迫った本日(11月19日)、私が8月末に漁協系統団体を通じ全漁連に提出したJFグループ運動方針組織協議案に対する質問と修正意見を当ブログに掲載しておきたいと思います。なお、全漁連から回答があればそれも直ちに掲載したいと思います。

組織協議案1ページ

<上記に対する修正意見>

上記文5行目から7行目の「こうした中、・・・・・行かねばなりません。」を削除
(理由)
今回の漁業法等の改正(以下「新法」という)は、2013年2月28日の国会施政方針演説において安倍晋三内閣総理大臣が、農業、林業、水産業の規制改革を開始するにあたり、
「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指す。聖域なき規制改革を進める。企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消していく。これが、新たな規制改革会議の使命」
と述べた方針に基づいて行われたもの。
 よって、企業が活躍しやすい水産業の実現のために、既存漁業者を企業活動を妨げる障害として位置づけ、その資源と漁場に関する権利を弱体化・はく奪する内容となっている。
このことから、文中にある「この改革を自らの課題とし」は、企業利益のための改革に既存漁業者を加担させようとするものであり、当然ながらこの改革によっては既存漁業者の利益が失われることはあっても「将来を切り開くため」には決してつながらないことは明白である。よって、このような既存漁業者にとって自殺行為にも似た文言をJFグループの運動方針に記載することはきわめて不適切で背任行為にもあたることから、削除する必要がある。

 

組織協議案16ページ

 

<上記に対する質問>

水産政策改革への主張反映等の事実確認
文中上から3-4行目において「JFグループの主張が反映されたことから、JFグループとしてこれを了承し、」とあるが、これは現場漁業者の認識と全く異なるもの。新法は、事前に漁業者の意見を聞くことなく秘密裏に策定され、国会審議の直前になって法案の全貌が初めて明らかにされたのが現実。
 よって、新法には既存漁業者が決して容認できない条項が多数見受けられ法律可決後の新法説明会でも、多くの質問や異議が噴出し続け止まることがないことからわかるように、漁業者の主張が反映されたこともなく、ましてやこれを了承した事実もない。
 しかし、全漁連においてはそのような事実があったというのであれば、以下の問題条項(ここに掲げたのはその一部)について、
①この条項の内容(又は旧法にあった条項が削除されたこと)を知ったのはいつか。
②その時にだれが、どのような主張を言ったのか。
③その結果主張が反映されその条項の原案のどこがどう変更されたのか。
④変更後の条項について問題が無くなったとして了承した者はだれか。また、その理由は何か。
⑤変更後の条項は、JF要綱に定めた規定と整合性がとれているかどうか。
を一つずつ全国の漁業者にわかるようにその事実をHPで公開したうえで、それに対する漁業者のコメントをHPを通じ聴取し、改めてこの部分の記述を議論しなおすべきである。

問題条項(又は新法で削除された旧法条項)とその内容
1 新法第1条(目的)
 水産庁は当初の説明会では、旧法の目的は変更しないと説明していたが、突如新法で「漁業者及び漁業従事者を主体とする漁業調整機構の運用」「漁業の民主化を図る」を削除した。

2 旧海洋生物資源保存管理法第3条3項にあった経営勘案条項が削除されたこと。
国連海洋法における規定のほか、FAOの持続的漁業の行動規範や国連の持続的開発目標(SGDs 14.b)では、小規模・伝統的漁業者への特別な配慮の必要性が定められており、特に零細な漁業者が多い漁業権漁業に係る漁業者に対しては単純に資源評価のみに基づく漁獲可能量ではなく、これらの勘案規定は残すべきであるにもかかわらず新法で削除した。

3 新法第43条( 公示における留意事項 )
 個別割当を受けた漁業においては、「船舶の数及び船舶の総トン数その他の船舶の規模に関する制限措置を定めないものとする」とし、漁業紛争を激化させることが必至の漁船の数及びトン数の自由化を認めた

4 新法第62条(海区漁場計画)
・漁場計画の段階で、団体漁業権又は個別漁業権の別を認めた。
・汚染原因者には何の義務も課さず、被害者的立場にある沿岸漁業者(漁協)に漁場保全活動を義務付けた。
旧法においては全ての漁業権に関係地区制限が課せられていたが、新法では団体漁業権のみとなった。これにより、それ以外の個別区画漁業権者、真珠漁業権者、定置網漁業権者の住所が他県でも認められることになり、組合に加入せず(しようにもできない)、単に権利を保有するだけの目的で漁業権を取得することが可能となった。これは、遠くに住む漁業権の権利保有者(網元)と、現地でその権利を借りて漁業を営む者(小作人)という戦前の封建的な漁業体制への復帰を可能とした

5 新法第63条 第1項( 海区漁場計画の要件等 )
・旧法における地元沿岸漁業者・漁協の優先順位が無くなり、「適切かつ有効に活用」という知事の恣意的な判断が可能となった。なお、国の発出する技術的指導には知事の判断を拘束する権限はない。

6 新法第六十四条第7項(漁業免許予定日)
・旧法における免許予定日は、免許の切れ目を生じさせないために「当該存続期間の満了日の三箇月前まで」とあったが、新法で同項の規定は公示の日から起算して「三月を経過した日以後の日」とされてしまった。
・旧法にあった「知事が漁場計画を立てようとしないときに海区委から意見する規定」がなくなった

7 新法第六十五条( 農林水産大臣の助言 )
・旧法にはなかった漁場計画への助言が認められ国の地方への新たな関与が可能となった。

8 新法第六十六条( 農林水産大臣の指示 )
・旧法になかった「前条の規定により助言をした事項について、我が国の漁業生産力の発展を図るため特に必要があると認めるときの指示権」が規定され、さらに強い国の関与権限を認めた

9 新法第七十二条(免許についての適格性)
・旧法にあった海区委による適格性の判断権限とそこに規定されていた「漁村の民主化の阻害」の不適格要件が削除された。
・業種別組合はこれまで旧法における但し書きにより団体漁業権の適格性を有しなかったが新法では認められた。これにより免許申請主体が漁協から業種別組合に移行し、地区漁協による海面利用の一体的管理ができなくなった

10 新法第七十四条(漁業権者の責務)
・組合員による生産活動のための法人の設立その他の方法による経営の高度化の促進に関する計画が義務付けられ、組合員の漁協事業利用離れが進むことになった。

11 新法78条第2項(抵当権の設定)
・新法で抵当権設定の認可要件の緩和が行われ、特定企業等による漁業の支配やその売買を通じたマネーゲーム化が可能となった。

12 新法第92条( 適格性の喪失等による漁業権の取消し等 )
・旧法では、漁業権者以外の者が実質上当該漁業権の内容たる漁業の経営を支配しているような場合などでは、海区委が漁業権を取り消すべきことを申請したときは、知事は漁業権を取り消すことができたが、新法でそれが削除された。これにより、外国人による日本沿岸域の実質上の買収が容易になった。

13 新法第138条(海区漁業調整委員会の委員の任命)
・選挙制度が廃止され、知事のお気に入りの応募者を漁業関係委員に任命することを可能とする制度となった。

<革新的な政策の中身の確認>
16ページ上から5行目にある「革新的な政策」(辞書における革新の定義:旧来の制度・組織・方法・習慣などを改めて新しくすること)は何と何を比較し革新的と判断したのか。またそれは、既存漁業者にとってメリットのある革新なのか、それともデメリットのある革新なのか。メリットのある革新的政策とすれば、その革新性の高い方から順に具体的にその政策を3つ明示されたい。

組織協議案33ページ

<上記に対する修正意見>

文中「2018年12月に決定した…ことが求められる」の全文を削除し、以下に修文。
2018年12月に決定した水産政策の改革は、安倍内閣の第一次産業の改革方針「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す。聖域なき規制改革を進める。企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消していく。」に従って実施されたものであり、今後既存漁業、特に沿岸漁業者・漁協に多くの不利益を与える施策が実行される可能性が極めて高い。よって、その施策の具体化について注視するとともに、関係漁業者の了承なく施策を強行することが絶対ないよう、国に強く働きかけていくことが求められる
さらに、自治事務である漁業権漁業等の管理に関しては、地元自治体に大幅な自主権が認められているところ、地方自治法、地方分権改革推進法の理念に基づく地元漁業者の立場に立った新法の運用条例の制定を、JFグループあげて働きかけていくことが求められる
(理由)
今回の運動方針案における根本的問題点は、漁業法改正を無批判に受け止めていることであるが、その認識は浜の漁業者と全く異なっている。例えば、改正された漁業法に基づき、新資源管理の具体案が令和元年6月12日に公表されたが、そこでは資源量の増加後においても、引き続き漁獲量の大幅な削減が打ち出されており、「水産業の成長産業化」とは真逆の「水産業の衰退産業化」が避けられない内容となっている。また、それは資源が増加しても獲らせない現行のクロマグロ資源管理施策による沿岸漁業者の惨状を見ても明らかである。
 よって、沿岸漁業者・漁協により構成された全漁連においては「会員の利益に反する施策には断固反対していく」ことが当然の責務であるところ、漁業法改正を無批判に受け止めた原文を削除し、これと対峙していくことを表明する内容に修文すべきである。
また、農業分野においても規制改革により一方的に削除された法律を、都道府県条令で復活するなどの動きがあるところ、水産分野においてもこれにならい条例制定を積極的に地方議会・行政に働きかけていく必要がある。

組織協議案36ページ

<文の最後に追加すべき記載事項>

国際連合は、2017年の国連総会において、2019年~2028年を国連「家族農業(漁業)の10年」として定め、加盟国及び関係機関等に対し、食料安全保障確保と貧困・飢餓撲滅に大きな役割を果たしている家族農業(漁業)に係る施策の推進・知見の共有等を求めている。そこでは、家族漁業のための国家委員会の設置と包摂的な財政政策の作成などについて加盟国に求めているところであり、JFとしても家族漁業の重要性を訴えるこの国際的な活動と一体となり、我が国においてもこれらの施策の実現を国に働きかけていくことが使命となっている。
(理由)
国連決議の背景には、先進国の大資本が途上国の農業(漁業)を変え、環境破壊や地域の伝統文化の断絶、在来種の絶滅など、企業的農業(漁業)の負の部分が見え始めてきたことを踏まえたものである。まさに我が国の水産政策改革は、その誤った道に今から進もうとするものであり、それを阻止するにおいて国連議決は、極めて重要な位置づけにあり、次期運動方針案に必ず盛り込むべき事項であるから。

組織協議案37ページ

<上記に対する修正意見>

文中3行目から5行目にかけての「さらには2018年の水産政策等も踏まえ、・・・・がその責務である。」までを削除。
(理由)
 今回の漁業法改正内容には、参入企業の利益になっても既存の沿岸漁業者・漁協の利益になるものは皆無であり、資源および漁場の管理における漁協の役割を弱体化させたこのような改革に「漁業者が自ら取り組む」や「JFグループが支援を強力に進める」ことは、JF綱領の規定にも真っ向から反する背任的行為であるので削除すべきである。

<次期運動方針全般についての意見>

JFグループの運動方針案を検討するにあたり、最大の問題点は、まず最初に漁業者に相談するという従来の法律改正の手続きからすれば「言語道断」ともいうべき非民主的に秘密裏に行われた今回の漁業法改正に、JFグループのトップにある全漁連が全く抵抗しなかったことです。これは、JFグループとして大失態であり、将来まで語り継がれる沿岸漁業者への重大な禍根を残したことは間違いないと思います。しかも、それを今もって公然と批判する系統関係者がいないということも,JFグループに属する我々としても大いに反省しなければならない問題です。

この歴史的失態をわずかでも取り戻すためには、次期運動方針の策定の過程で、漁業法改正の問題点に目を背けることなく、誤魔化すことなく、全国の漁業者に明らかにして、それへの対抗方針を打ち出すことが必要と思います。今の運動方針案を今のままで認めては、まさに「泥棒に追い銭」です。

全漁連の現会長は、規制改革の立場から国会審議で参考人として出席し、改革に賛成しました。これで、全漁連は完全に漁業者の敵となりました。浜の漁業者は「全漁連をぶっ壊す!」くらいの覚悟で次期運動方針の決定に臨むよう、漁協、漁連の役員に働きかけていかねばならないと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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