国のガイドライン(技術的助言)に地方は従う義務はない -真の地方分権の確立を目指そうー(後編)

4 今回(第5回)の技術的助言における違法性について

 

(1)なぜ、国は漁業法改正後においても技術的助言を発出する必要があったのか?

 

 そもそも論で言えば、国の技術的助言などなくても地方には何の不都合も生じません。なぜかというと、自治事務である漁業権漁業管理事務においては、地方が法律の解釈・運用権限を有しているからです。国からの余計な「おせっかい」は迷惑千万です。一方、国においてもそれを発出しなければならない義務はありません。地方が法律さえ守っていればあとはご自由におやりくださいで済みます。わざわざ面倒な文書作成の必要もないのです。それでもなぜ技術的助言の発出にこだわるのでしょうか。そこにこそ国の隠された狙いがあるからです。

 

 改正前の漁業法は漁業者優先の法律だったため、漁協が企業の邪魔をしないような法律の運用を(違法に)地方に押し付けるための手段として、技術的助言を利用するしかなかったのです。しかし、今回は安倍総理の「『世界で一番企業が活躍しやすい国』を目指す。聖域なき規制改革を進める。企業活動を妨げる障害を、一つひとつ解消していく。これが、新たな規制改革会議の使命」というご下命に基づき、規制改革の思うがままに漁業法が改正されたはずです。漁業権漁業は自治事務といえども、改正漁業法の条文本体に書き込まれた内容には地方は従う義務があります。よって、日本の海は世界で一番企業が活躍しやすい海面になったはずです。にもかかわらずなぜ技術的助言が引き続き必要なのでしょうか。

 

それは、国が法律に企業優先の本音を露骨に書き込まず、「あいまいなきれいごと」を表に出し真の狙いを隠した法律改正を行ったために、中途半端な法律になってしまったからです。例えば、今回の法律改正の最大の目的であった漁業権の優先順位の見直しについては、本音丸出しで優先順位制度を残したうえで、例えば以下のように法律に明記すればよかったのです。

優先順位1位:新規参入企業(特に総理のオトモダチのモリカケ水産は最優先)

  〃 2位:個別免許漁業権者 

  〃 3位:組合免許漁業権者

 

これなら、地方や漁協がどうジタバタしようがオトモダチ企業最優先ですので、技術的助言などは不要だったはずです。ところが、改正漁業法では「適切かつ有効」などというあいまいな新基準に留めてしまったのです。このため、2018年11月15日に開催された衆議院本会議での漁業法改正案に関する質疑で𠮷川農水大臣が、「『適切かつ有効に利用』について都道府県によって判断の基準が大きく異なることがないようにする観点から、国が技術的助言を定め、適切かつ有効の考え方を示していく考えであります。」と答弁するしかなかったのです。

 

「適切かつ有効」などは法律用語として、特に漁業者の生存権の与奪に直結する海面利用の判断基準としては極めて不適切です。法律の条文は、だれが読んでも同じようにしか判断できない客観性と具体性を兼ね備えていなければなりません。例えば刑法で「適切かつ有効に生活を送っていない者は死刑に処す」などは法律としてはおかしいと子供でもわかります。しかし、逆に言えばこれさえあれば、警察官には膨大な裁量権が与えられるわけですから、その解釈・運用次第ではだれでも逮捕し死刑にできるという万能の法律にもなります。こんな法律の下では、国民は常にびくびくして生きていくしかありません。まさに漁業者にとっても、いつ海を取り上げられるかわからない恐ろしい「適切かつ有効」な漁業法ができたということです。

 

なお、改正前漁業法における優先順位は極めて厳格にできており、誰が判断してもそういう順位にしかならないという、客観性の高い非常によくできた法律でした。それはそうでしょう。プロが真面目に作った法律と、ど素人が適当に作った法律とでは根本からできが違います。また、優先順位を無くす理由を水産庁は、北海道から沖縄まで一律に優先順位を決めることは適当でない、地域ごとに判断できるようにすべきというもっともらしい理由を持ち出したのです。であれば、今回の技術的助言においても地域の実情に合わせて、どうぞ「適切かつ有効」のご判断をとなるはずですね。ところがそれでは困るので、北海道から沖縄までがんじがらめに厳格に「このやり方でやるべし」という全く逆のことを技術的助言で言ったのです。ここだけですが、おまえらあほかといいたいです。

 

それにしても、なぜもっとわかりやすい企業優先の露骨な法律にしなかったのでしょうか。おそらく、今回の法律改正は、漁業者はもちろん与党政治家もその必要性を認めていない中、当時の農水省事務次官がそのポストに居座り続けたかったためのパフォーマンスだったという見方もあり、一人の役人の私的保身欲のために必要とした法律改正のために、あまりに企業寄りの露骨な条文を含んだ法律にはさすがにできなかったのではないかと推測されます。

 

しかし露骨でなくても、どうにでも解釈できるあいまいな法律であれば、全漁連をいいように言い含める(騙す)こともできるし、一方で実際の企業参入においては、企業優先の解釈・運用が十分可能と判断し、そこまで露骨な条文にする必要がないとしたからではないでしょうか。これには前例があります。はじめから結果ありきで、国家戦略特区制度を巧妙に使って「一点の曇りもなく」そこに誘導していった加計学園方式と同じです。だから、過去のこのブログで述べたように、どうにでも解釈できるというこのあいまいさが今回の改正漁業法の便利な点で、同時に弱点でもあり、そこを逆手にとって県条例を制定すれば、ほとんどの改悪事項を無効にできるという脇の甘い法律となったのです。

 

漁業法改正そのものは、漁業者を完全に無視し問答無用で強行した半面、条文自体はあいまいなものとなりました。おそらくこれは政策の中身よりも、「70年ぶりの漁業制度の大改革を成し遂げた安倍内閣、さすがすごい名総理!」という社会に対するアピール効果の方にしか関心がなかった安倍総理の「空(くう)」と「業(ごう)」のマッチングゆえの現実的な落としどころではなかったでしょうか。

 

しかし、自分で改革し自分が儲ける新たな利権を作り上げるのがいつもの規制改革推進会議です。そこにぶら下がる利益相反丸出しの連中は、内心この点で不満が残ったのではないかと思います。なぜそう思うかというと、今回の技術的助言の原案は2019年11月に漁業団体に対し水産庁から示されていますが、これに対し規制改革推進会議が、水産庁にその予定がなかった技術的助言案に対するパブリックコメントの募集を行うように要求するという意外な行動に出たからです。

 

これを受け、規制改革の言いなりの水産庁は、2020年3-4月にかけその募集を行いました。さらに、規制改革推進会議自らが、わざわざコロナ禍のなか2020年4月9日付で書面議決により「水産改革に関する提言」を取りまとめ、技術的助言案に対する修正を求めたのです。もちろん水産庁は当然のごとく言われるがままに技術的助言を修正したのです。

 

これは地方分権の精神等に反した規制改革推進会議からのあからさまな違法介入です。

 

違法と思う根拠の第1点目は、技術的助言は国が募集するパブリックコメントの対象にはならないことです。政府のHP(電子政府の総合窓口)において「パブリックコメントは、国の行政機関が政令や省令等を定めようとする際に、事前に、広く一般から意見を募り、その意見を考慮することにより、行政運営の公正さの確保と透明性の向上を図り、国民の権利利益の保護に役立てることを目的」としています。また、その対象は「政令、府省令、処分の要件を定める告示、審査基準、処分基準、行政指導指針」となっています。このうち技術的助言に一番近そうなのが「行政指導指針」ですが、その定義は「同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとする際に各行政指導に共通する内容」となっています。

 

ということは、技術的助言はそれに該当しませんね。なぜかというと、自治事務は地方がそれぞれの地域の自然・社会・経済情勢等を勘案して法律を独自の解釈・運用で事務の執行をすべきものという趣旨で国と地方とで事務分担されており、国による「同一の行政目的」の範疇に含まれないからです。さらに、技術的助言とは、地方が法律の解釈・運用を行う場合の国による一つのサービスとして示す参考事例に過ぎず「行政指導」とは全く違うからです。

 

二つ目の違法性は、規制改革推進会議の権限を逸脱しているのではないかということです。規制改革推進会議の役割とは、「経済に関する基本的かつ重要な政策に関する施策を推進する観点から基本的事項を総合的に調査審議することを目的とした内閣府の諮問会議(審議会等)である。」とされています。ではこの「基本的かつ重要な政策」「基本的事項を総合的に調査審議」に技術的助言の中身に関する審議が該当するのでしょうか。総理大臣が町内会の回覧板の回し方はこうすべきだというような文書は、誰が解釈しても「そんなことお前のする仕事ではないだろ!」で当然対象外でしょう。ではなぜかこんな些末なことまで規制改革推進会議が口出しするのでしょうか。まさにこれこそ加計学園と同じく、大所高所から国家的な課題を扱うと装いながら、その真の狙いは個別のオトモダチ企業への利益供与にあるからです。そのためには現場にまで手を突っ込む必要があるのです。ここに規制改革の本質が露呈してしまったということです。

 

そもそも、上の二つの違法性を指摘する以前に、常識で考えてもこれがおかしいことがすぐにわかります。自治事務に関してはその法律の所管省庁ですら、技術的助言で認められているのは「地方公共団体にとって必要な事項となっているかどうかその内容を検証し、地方自治法の趣旨を踏まえ、必要な最小限度のものとなるよう徹底を図るとともに地方公共団体の自主性及び自立性に配慮すること」と制限されています。

 

このため、知事が自治事務に関する運用について県民から意見を募集するのは当然あり得ることでしょう。しかし、地方に権限がある自治事務の細部の運用について「国としては地方はこうするべきと思いますが、国民の皆様のご意見を募集します」ということはだれが考えてもおかしいでしょう。これは国が「〇〇県の条例案について、他県の意見を求めます」とするのと同じです。アメリカ政府が「日本の法律改正案についてアメリカ国民の意見を募集します」のと同じです。どう考えても地方自治法違反です。規制改革はコロナと豪雨と40度の猛暑と(この後はおそらく巨大台風)と強欲で頭がおかしくなっているとしか言えません。安倍政権とは常識で考えれば子供でもわかるようなことも無視して違法なことを平気でするのです。ホトホトこれにはあきれ果てます。

 

以上の経緯からして、規制改革は法律のあいまいさを補(おぎな)い、本来の狙いである企業優先、漁協潰しが確実に実行されるように、露骨な解釈・運用の技術的助言を示し地方を拘束しようと考えたのでしょう。そのためには法律違反などお構いなしに今回の技術的助言の細部にまで介入せざるを得なかったのではないかと思われます。よって、漁業法が改正されたにも関わらず、国にとって技術的助言の発出がその後も必要だった理由は、ここにあると思います。

 

(2)第5回技術的助言における違法性(各論)について

 

しつこいくらいに繰り返しますが、国の技術的助言で地方を拘束することは法律上認められていません。地方は国の「おせっかい」文書は、そのまま右から左にゴミ箱にポイ捨てしても全然構わないのです。だから、今ここで第5回の中身の違法性についてあれこれ論考すること自体が本来は無意味なことです。しかし、第5回の内容の驚くべき酷さについて、漁業関係者に広くお知らせしておくことは、不祥事を連発する安倍政権の根底にある異常性を身近な事例で知っていただくという点で、意味のあることと思います。以下、その代表的な違法な個所をカッコ内に引用し、それについてコメントしていきたいと思います。

 

①技術的助言における規範性や拘束性のある違法な表現(用語)の使用の例

 

前編で紹介しましたが、技術的助言では使用してはいけない表現の解説は、重要なポイントですので再掲します。

(自治総研通巻397号 2011年11月号より)

技術的助言の中には、国から自治体への行政サービスとして情報を提供しているものもあり、提供する情報には制限がない状況にある。重要なことは内容よりも文章表現であり、あくまで自治体の自主的な判断を前提にしたものでなければならない。この点に関し、景観法運用指針(平成16年12月17日付け農林水産事務次官・国土交通事務次官・環境事務次官通知)は、「①~べきである。~べきでない。②~ことが望ましい。~ことは望ましくない。③~ことが(も)考えられる。」の3つの表現を意図的に区分して用いている。これらのうち、①は処理基準で用いるべきもので、「技術的」助言で用いる表現としては不適当である。

 

5回目の技術的助言には、この基準に照らすと、過去にも増して地方分権の精神を根本的に無視した違法な記述が多々ありますが、そのうちの代表的な事例のみをカッコ内に抜粋したいと思います。

 

第1 海面利用制度等の趣旨の文中

本ガイドラインは、このように海面利用に関する制度が適切に運用されるように制定するものである。

(違法性)

「本ガイドラインは、・・・制定する」の「制定」は明らかに、この文書が法律の運用の適否の判断根拠となる規範性を有しているかの如くの誤解を与える極めて不適切な表現です。正しくは、「制度の運用における参考として通知するものである。」でなければなりません。

 

2 海区漁場計画の作成>(2)海区漁場計画の作成の時において適切かつ有効に活用されている漁業権・・>ア 「適切かつ有効」に活用 の文中

 

 生産量等の項目を含む事業計画書等に基づき自らの事業を評価し、計画的に漁業の生産活動を行っていく必要がある。

 

(違法性)

事業計画書などの作成義務は法律では規定されていないので「必要がある」とする法的根拠はありません。正しくは、「事業計画書等に基づき・・・行うことも考えられる」でなければなりません。

 

上に同じ文中

・「適切」の判断基準としては、・・・等を満たしていることが求められる

・「有効」の判断基準としては、・・・等を満たしていることが求められる

(違法性)

「適切」及び「有効」の定義は法律に規定されておらず、まさに地方分権の観点から地方がその解釈(判断)を行うことが「求められる」ところです。それを国が示した基準を満たすことが地方に「求められる」とするのでは明らかに違法な表現で極めて不適切です。よって、単なる情報提供としての位置づけである技術的助言としては正しくは、「等も考えられるところである。」に修正しなければなりません。

 

上に同じ文中

・漁場を「適切かつ有効」に活用しているかどうかの判断を行う際に確認すべき項目を示したチェックシート(別紙1)を添付するので、これにより運用されたい

 

(違法性)

 「これにより運用されたい」も、言うまでもなく完全に違法な表現です。それに加え、そもそもこのようなことこそ現場で判断すべき運用の細則です。極めて煩雑で現場に過大な労苦を課すチェックシートを勝手に国が決め、その作成を地方に押し付けるようなことこそが、地方分権における議論で厳しく糾弾された「国による地方の箸の上げ下ろしまでに及ぶ干渉は徹底的に排除すべき」の悪しき事例そのものです。よって、表現のみならず内容においても極めて不適切であり、地方は決して「箸の上げ下ろし」までの介入に従ってはなりません。

 

 なお、口に出すのも腹立たしいのですが、チェックシートの例を見ると漁業権者の欄には「〇〇漁業協同組合」としかなく、「〇〇水産株式会社」の例示がありません。これでは個別漁業権者は免除されるという企業に甘い不公平極まりないもので、漁協には到底受け入れられるものではありません。なお、国への隷属根性が抜けきれない県庁の担当者が必要だというのなら、「もとになる資料がここにあるので、どうぞご覧いただき県庁職員がご自身で作成してください。法的義務もないことを漁協に押し付けるのはやめてください」で済みます。

 

 さらに付け加えれば安倍内閣が漁業者に「記録をちゃんと残せ」などと言えた立場でしょうか。自分はモリ・カケ・サクラ問題で公文書の改ざん、隠ぺい、破棄をさんざんやってきておいて、どの面下げて、偉そうに。誰がそんなチェックシートなど作成するでしょうか。笑わせるなです。

 

また、規制改革自身も過去において以下のようなことがあったようです。

 

郵政民営化を審議する間、内閣府設置法に基づく規則で定められた議事録が3年間にわたって作成されていないことがのちになって判明した。そのため、会議で誰がどのような提案をし、反対をしたかが分からず、全体を要約した「議事概要」としての資料しか残っていない。内閣府設置法の総合規制改革会議令に基づく同会議運営規則は「議長は議事録を作成し、一定の期間を経過した後に公表する」と定めている。議長の宮内はこの件に関して一切の説明も責任もとらないまま、同会議は2004年3月末で廃止された。しかし、「規制改革・民間開放推進会議」として再設置され宮内が引き続き議長を務めた。(ウィキペディアより)

 

規制改革推進会議こそが、今回の水産改革の会議に参加した委員、専門委員などにおいて、漁業法改正を利用して自分の商売で儲けていないかを確認する「利益相反による私的経済効果」のチェックシートを作成・公開し、見本を見せてほしいと思います。

 

上に同じ文中

本ガイドラインに基づく制度運用が適正に実施された上で法第91 条に基づく都道府県知事による指導又は勧告が行われなかった場合や、指導又は勧告を受けた後にそのことが改善された場合も、「適切かつ有効」に活用されているものと考えられる。

 

(違法性)

 上記文書の後半は、法第91 条の本文に規定されたものであり、地方に対する法的拘束力がありますが、最初の「本ガイドラインに基づく制度運用が適正に実施された上で」の部分は法律にはないことであり、技術的助言に拘束性を持たせる表現であり完全に違法です。

 

 この文章を素直に解釈すれば、本ガイドライン(技術的助言)が実施されていない(従わない)場合は、「適切かつ有効」に活用されていないと判断せよと言っているのです。もうここまでくると、違法性などというレベルを超越した「地方自治法などくそくらえ!国の言うとおりにせよ」という国の傲慢さが表れた言語同断な文章です。当然最初の部分は絶対に削除しなければなりません。

 

2 海区漁場計画の作成>(3)漁場の活用の現況及び次条第二項の検討の結果 の文中

・団体漁業権として区画漁業権を設定することが、「漁業生産力の発展に最も資する」と認められる場合としては、例えば、①…、②…、③…、とする場合その他経営問題に精通した中立的な有識者が関与した具体的な実行計画により地域経済の発展に資することが明らかである場合等が想定される。

(行政機関としての中立性の著しい欠如)

上記の文章の最後の「想定」とは「推し量る」「推測」「想像」などの意味ですので、「必要がある」などという規範性や拘束性を有する表現でなく、「国は勝手に・・・と想定した、だから地方も自由に想定されたい」という趣旨と理解してよいでしょう。よって、「漁業生産力の発展に最も資する」かどうかの判断は、地方の権限において想定すればよいので、技術的助言の表現としてはセーフと思われます。

 

この文章の問題点は別にあります。表現としての違法性よりも書かれている内容が著しく不適切で、到底看過することができないことです。よくもまーこんな文書を規制改革のご下命としても水産庁は発出したものです。上記の赤字「中立的な有識者が関与した」を含む文章は、原案になかったのに規制改革推進会議が後で追加させたものですが、企業利益のために著しく偏向しており、まさに自らこそ中立公平であるべき行政庁の文章としては、あり得ない非常識極まりないものです。この文書の発出に携わった公務員は憲法第15条第2項「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」に完全に違反しています。

 

まず、「中立的な有識者が関与した」の「中立的」ですが、一体だれとだれとの間のどういう利害の対立を踏まえたうえでの「中立」でしょうか。例えば漁場利用をめぐる沿岸と沖合の対立や,A県とB県の対立なら、それを仲裁するという立場から、いずれの方にも利害関係を有さないという意味での「中立」ならば理解できます。しかし、ここで言及しているのは「漁業生産力の発展のための具体的な実行計画の作成」においての「中立」です。この実行計画とは、漁協が水協法に基づき作成する事業計画と同じようなものです。

 

私も漁協の監事をしていますので、仮に職員から「佐藤さんにお聞きしたい、漁協が作成する実行計画に中立的な有識者の関与が求められているのですが、だれを選んだらよいのでしょうか」と聞かれたら、答えようがありません。なぜなら全く意味不明だからです。組合が作成する実行計画の内容に賛成と反対の組合員がいたとして、このようなテーマにおいてそのいずれでもない「中立」という概念が存在し得ないからです。

 

声を掛けられた有識者も困るでしょう。どういう基準をもとに中立というのかが示されていないからです。おそらく、規制改革は漁協と企業の利害対立を想定した「中立」というのを想定しているのでしょう。しかし、ここでのテーマは漁協の実施計画であり、漁場の利用調整ではありません。それに外部の一企業が漁協の事業計画に賛成・反対だと口をはさむ余地があるのでしょうか。そんなことがあるわけありません。それがあり得るのなら、逆に漁協が企業の事業計画にも関与できるということになりますが、これもあり得ません。お宅の会社の事業計画は中立的な有識者が関与していますかと聞く人間に私は未だあったことがありません。

 

また、その有識者がその基準に照らし中立であるかどうかをだれが判断するのかも示されていません。さらに、対立する利害関係者のいずれかからその有識者が中立的でないと判断したときに、どのような手続きで異議を申し立てることができるのかも全く示されていません。

 

このような助言では、「中立的」をどうにでも解釈できるものであり、行政の恣意的な運用に歯止めがきかず、規制改革の狙う企業に有利に働く立場の者が「中立的な有識者」と判断される恐れが大です。農業分野で実際にあったことで驚くべきことに、規制改革を自分の会社の利益に誘導したことで有名な某氏が会長である会社からど素人(なんの農業知識もないアルバイト)が堂々と中立的有識者として送り込まれたという例があると聞きました。

 

規制改革とはそこまで姑息な手段を使う連中だそうです。漁協にも同じくこのようなインチキ「中立的な有識者」が押し付けられることも、国の言いなりの弱腰県であり得ることです。仮に、もしそうなれば漁業者はその者に「お前のどこが中立か」と罵詈雑言を浴びせ二度と出席したくないと思わせるようにする必要がありますね。

 

この中立的有識者とは「中立」という名をかたり、企業利益に偏向した者を漁協内部に送り込もうとする策略であり、地方にとって害をなす以外の何物でもなく、絶対に従ってはならないことを広く漁業者に周知しておく必要があります。

 

2 海区漁場計画の作成>(3)漁場の活用の現況及び次条第二項の検討の結果 の文中

・なお、(「漁業生産力の発展に最も資する」と)認められない場合としては、個別漁業権の取得を希望する者を妨害する目的で申請を行う場合等が想定される

 

(違法性)

今回の技術的助言においてここが一番ひどく、安倍長期政権下の常軌を逸した役人の忖度ぶりや堕落ぶりにはあきれ果てます。「個別漁業権を妨害する目的で申請を行う場合は、団体漁業権を認めるな!」と言っているのです。いったい法律の何条の解釈・運用なのでしょうか。そのような法律の規定はどこにもありません。国が地方に対する単なるサービスとしての技術的助言にこんなことを書き込むことにより団体漁業権者の権利を剥奪するという点で、典型的な違法助言です。地方は強い怒りをもってこの文書を撤回するよう強く抗議すべきです。

 

そもそも通常の申請なのか、妨害しようとする意図での申請なのかの判断はどういう基準をもって行うのか明示されていません。この判断基準がなければ、個別漁業権申請者にとっては、競願相手となるすべての団体漁業権の申請は自分の申請に対する妨害と一方的に決めつけることができます

 

よって、この技術的助言さえあれば、個別漁業権が申請された海域においては、団体漁業権の申請は一切認められないという運用が可能となるトンデモない内容です。しかも驚くことに、団体漁業権の取得を妨害しようとして個別漁業権を申請しようとする者(例えば、地先海面における開発事業をもくろむ企業によるダミー水産会社など)も十分想定される中、これを防止するための同様の規定がなく、個別漁業権申請者の妨害はやり放題なのです。

 

ついに隠された狙いが表に出てきましたね。この「妨害するな」の一文を追加するだけで、あいまいだった法律を本来の目的に沿った以下のような企業を優先順位第1位にすることが可能になったのです。

優先順位1位:新規参入企業(特に総理のオトモダチのモリカケ水産は最優先)

  〃 2位:個別免許漁業権者

  〃 3位:組合免許漁業権者

 

原案になかったにも関わらず、規制改革のいうがままにこの記述を追加した水産庁の行為は、憲法に定められた国民全体の奉仕者という国家公務員のあるべき姿から完全に逸脱したものであり、特定企業の回しものであると厳しく糾弾されなければなりません。

 

以上、今回の技術的助言の代表的な問題点を指摘しました。最後に改めて技術的助言とはなにかについて以下に繰り返します。

 

「国民の権利義務に影響を及ぼす内容は、法律によることが必要であるため、法律によらず、通知・通達のみをもって、国民の権利・義務に影響を及ぼすことは、それ自体が無効」

「法律にその規定がないのにそののりを越えて、規範性を持つとか拘束性を持つようなものを出したとすれば、これは違法」

 

以上から「地方は国の技術的助言に従う義務はない。まして今回の技術的助言には無効かつ違法な内容が数多く含まれており、地方はこれに従うつもりは全くない」と県庁と漁業団体は堂々と国に対し公言すべきでしょう。

 

しかし、これは多くの地方でできないかもしれません。その理由は明治維新以来の中央集権制度に対する地方の隷属根性が簡単に抜けないからです。そこにコロナという国難が生じました。現状を見ればわかるように、結局は地方が現場の責任を負うしかないのです。よって、地方分権改革からちょうど20年のこの期において、真の地方分権が確立できるかどうか、その真価が問われるのが今回の技術的助言への対応ではないかと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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