NHK「クローズアップ現代」への質問状

2015年4月15日に、NHKの番組「クローズアップ現代」で「食卓の魚高騰! 海の資源をどう守る」をテーマとする放送が行われ、その報道内容が、NHKオンラインの同番組のホームページで活字と静止画により公開されました。

同番組は、2014年5月放送の「追跡“出家詐欺”~狙われる宗教法人~」で「やらせ」があったのではないかと指摘され、社会問題になったばかりです。だからということではありませんが、2015年4月15日の放送内容に種々疑問を感じたので、NHKに以下の質問をすることにしました。皆さんの中にもあの番組に首をかしげた方がいらっしゃるかと思い、当ブログにおいてその質問内容をご紹介させていただきます。

 

NHK「クローズアップ現代」番組製作責任者様

                                     佐藤力生

 

 平成27年4月15日に放送された「クローズアップ現代」の「食卓の魚高騰! 海の資源をどう守る」(以下「貴番組」という)の放送内容について、貴日本放送協会の「放送ガイドライン2011」(以下「ガイドライン」という)に当てはめ、それが適切であったといえるかについて、ご質問したくこのお手紙を差し上げる次第です。ご多忙中とは思いますが、ご回答いただければ幸いです。

なお、以下の質問は、NHKオンラインの貴番組のホームページで活字と静止画により公開された内容をもとにしております。

 

まず、釈迦に説法となりますが「放送ガイドライン」のうち私の質問に関連した部分を以下に抜粋しておきたいと思います。なお、以下の文章の頭にふったア、イ、は原文にありませんが、引用しやすいように私がふったものです。

 

「放送ガイドライン2011」より関連部分のみを引用

2 放送の基本的な姿勢

①   正確

ア、 NHKのニュースや番組は正確でなければならない。

正確であるためには事実を正しく把握することが欠かせない。

しかし、何が真実であるかを確かめることは容易ではなく、取材や制作のあらゆる段階

で真実に迫ろうとする姿勢が求められる。

イ、  ニュースや番組において簡潔でわかりやすい表現や言い回しは必要だが、わかりやすさ

のために、正確さを欠いてはならない。

ウ、 番組のねらいを強調するあまり事実をわい曲してはならない。

エ、 事実関係の誤りが明らかになった場合には、速やかに訂正する。

②   公平・公正

ア、 NHKの放送は、視聴者にできるかぎり幅広い視点から情報を提供することを目指す。

イ、  意見が対立する問題を取り扱う場合には、原則として個々のニュースや番組の中で双方

の意見を伝える。仮に双方の意見を紹介できないときでも、異なる意見があることを伝

え、同一のシリーズ内で紹介するなど、放送全体で公平性を確保するように努める。

ウ、 番組ではさまざまな意見や見方を反映できるように出演者は幅広く選ぶ。

エ、 社会的に弱い立場にある人たちの視点を忘れてはならない。

オ、 事実と意見は明確に区別されるべきである。

カ、 歴史的事件、事柄、事象について意見の対立があるものや、学問的に見解が対立している

ものについては、多角的に検証したうえで放送する。

キ、 意見が対立して裁判や論争になっている問題については、できるだけ多角的に問題点を

明らかにするとともに、それぞれの立場を公平・公正に扱う。

4 取材・制作の基本ルール

①   企画・制作

ア、  番組の提案にあたっては、企画の独創性や視点の新しさ、社会的な意義などを明確にす

る。提案の内容について担当者の間で議論を尽くし、制作にあたっては共通の認識を持

つことが大切である。

イ、  番組のジャンルを問わず、構成や演出など、全般にわたって幅広く目配りするとともに、

題材や出演者の選び方に偏りがないように注意する。

それでは以下質問に移ります。

 

貴番組紹介のホームページ冒頭にある「漁獲量の減少によって、アジやホッケなど食卓の魚の高騰が続いている」との記述について

質問1 魚価が上昇してきている要因を「漁獲量の減少」としたのはどのような根拠からでしょうか。

質問2 2014年国内漁業生産量(速報値)は前年とほぼ同じであり、過去において日本の漁獲量は大きく減少してきたが同時に魚価も低下したなどの事実からすると、現在生じている魚価の上昇要因を「漁獲量の減少」と決めつけることは、ガイドライン2-①のア「正確であるためには事実を正しく把握することが欠かせない」及びガイドライン2-②のオ「事実と意見は明確に区別されるべきである」に合致していないのではないかとの疑念を抱かざるを得ませんが、いかがお考えでしょうか。

質問3 流通関係に詳しい人の意見では「最近の魚価の上昇は、円安による輸入水産物の価格の上昇が最も大きな要因」とのことでしたが「食卓の魚高騰!」と感嘆符まで着いた見出しをあげて視聴者の関心を誘いながら、円安の影響ついて貴番組で全く触れられていないのは、どういう理由からでしょうか。

質問4 「円安による影響」に全く触れないのは、ガイドライン2-②のア「幅広い視点から情報を提供する」に合致していないのではないかとの疑念を抱かざるを得ませんが、いかがお考えでしょうか。

 

テキスト中の「魚は手の届かない存在になってしまうのでしょうか。今、温暖化や乱獲などによって、日本の魚が大きく減っています」の記述について

質問5 「日本の魚が大きく減っています」と判断した根拠はなんでしょうか。

質問6 日本の漁業生産量が大きく減った要因は、マイワシ資源が自然変動による減少期を迎えたためであり、その要因は、温暖化でも乱獲でもありません。またその他の資源も一時は減少しましたが、その後回復策が講じられ、水産白書にもあるように資源は全般的に回復傾向にあります。これらは広く知られている基本的な事実です。にもかかわらず、これらのことに全く触れられていない理由は何でしょうか。

質問7 貴番組において日本における資源回復状況に一切触れていないのは、ガイドライン2-①のア「事実を正しく把握する」に反するのみならず、「魚は手の届かない存在になってしまうのでしょうか」という表現は、事実に反しいたずらに視聴者の不安をあおるものであり、ガイドラン2-①のウ「番組のねらいを強調するあまり事実をわい曲してはならない」にも合致しかねないものと受け止められますが、いかがお考えでしょうか。

 

テキスト中の「アジやサバなど、食卓になじみの深い魚の資源も軒並み減少しています」の記述及びその横にある資源量の推移のグラフについて

 

質問8 アジ、サバの資源を「軒並み減少しています」とした根拠は何でしょうか。

質問9 資源量の推移のグラフに掲載されたスケソウダラ(日本海北部系群)はスケトウダラ4系群のうちのひとつですが、これのみを選択した基準はなにでしょうか。

質問10 水産庁による資源評価では、マアジ2系群はいずれも「中位・横ばい」、マサバ2系群は「低位・増加」と「低位・減少」、ゴマサバ2系群は「高位・横ばい」と「中位・増加」で、通算するとアジやサバ6系群中「減少」は1系群のみです。この事実に基づけば「軒並み減少」との記述は、ガイドライン2-①のア「事実を正しく把握する」に反するのみならず、ガイドラン2-①のウ「番組のねらいを強調するあまり事実をわい曲してはならない」にも合致しかねないものと受け止められますが、いかがお考えでしょうか。

質問11 グラフにあるスケソウダラ(日本海北部系群)は、4系群のうち最も資源が悪化している系群ですが、これのみを取り上げることは、ガイドライン2-①のア「事実を正しく把握する」に反するのではないかと受け止められますが、いかがお考えでしょうか。さらに、補足しておきたいことがあります。このグラフのマサバは対馬暖流系群があげられていますが、もう一つの太平洋系群では資源回復措置により資源量が、その取り組みの開始時点の700%を超える増加率を示し、日本周辺資源としては最大の195万トンに達しております。しかし、この事実に触れず、減少する対馬暖流系のマサバのみをグラフにあげたのは、貴番組の編集方針において、事実とは反しても資源悪化を強調し「軒並み減少している」としたいねらいがあったために、意図的にそうしたのではないかと、強く疑義を感じざるを得ません。

 

 

テキスト中の「日本には漁獲量を制限する規制が少なく、早い者勝ちの漁獲競争に歯止めがかけられていません」の記述について

質問12 「早い者勝ちの漁獲競争に歯止めがかけられていません」と判断した根拠となる日本における具体的事例(漁業種類、魚種、漁場、漁期など)をご教示願います。これまで、日本でその様な具体的事例が指摘された事例を承知しておらず、ぜひお聞きしたいための質問です。

質問13 上記の記述は「漁獲量を制限すれば漁獲競争が是正できる」と受け止められますが、漁獲量を制限すればどうして漁獲競争がなくなるのかをご教示願います。魚は限られた漁場と漁期に集中することが多く、あとでゆっくり獲ろうとしても魚が分散してしまうことから、結局漁獲競争はなくならなかったとの外国の事例もありますので、ぜひお聞きしたいための質問です。

質問14 上記の記述は、日本の資源管理のあり方を巡る議論で、「日本では漁業者の話し合いにより漁獲競争は抑制されている」と主張する者との間で、意見が対立しております。にもかかわらず、貴番組ではそのことに全く触れておりません。これは、ガイドライン2-②のイ「 意見が対立する問題を取り扱う場合には、原則として個々のニュースや番組の中で双方の意見を伝える。仮に双方の意見を紹介できないときでも、異なる意見があることを伝え、同一のシリーズ内で紹介するなど、放送全体で公平性を確保するように努める」に合致していないと考えざるを得ませんが、いかがお考えでしょうか。

 

テキスト中の「国が漁獲量の上限を定めている魚種は、僅か7魚種。しかもその上限は、実際の漁獲量を大きく上回っています」の記述について

質問15 「僅か7魚種」の「僅か」の記述は、漁獲量上限を定める魚種が多い方がより望ましい資源管理手法と、貴番組では判断したと受け止められますが、その根拠はなんですか。

質問16 日本における資源管理のあり方を巡る議論の中では、その国々の漁業や資源の特徴に応じ、漁獲量規制か、あるいは漁獲努力量規制か、が選択されるべきであり、加入変動の大きい魚種には漁獲量制限による資源管理手法はふさわしくないとの意見がありますが、貴番組ではそのことについて全く触れておりません。これは、ガイドライン2-②のイ「異なる意見があることを伝える。放送全体で公平性を確保するように努める」に合致していないと考えざるを得ませんが、いかがお考えでしょうか。

質問17 「しかもその上限は、実際の漁獲量を大きく上回っています」としていますが、なぜ国が定める漁獲量の上限が、実際の漁獲量を上回ってはいけないのかご教示願います。国が定める漁獲量の上限は、資源管理を目的としており、その漁獲量の消化率を上げることを目的としておりません。よって、実際の漁獲量が漁獲量の上限を上回れば資源管理上問題となりますが、それを下回って何の問題があるのか、ぜひお聞きしたいための質問です。

 

ゲストに勝川俊雄氏が出演したことについて

質問18 勝川氏は、外国の漁獲規制(正確に言うと個別割当:IQ)を日本に導入すべきと一貫して主張されており、日本の資源管理のあり方に関する意見の対立における一方を代表する一人といえます。これはガイドライン2-②のウ「番組ではさまざまな意見や見方を反映できるように出演者は幅広く選ぶ」及びガイドライン4-①イ「番組のジャンルを問わず、構成や演出など、全般にわたって幅広く目配りするとともに、題材や出演者の選び方に偏りがないように注意する」に合致していないと考えざるを得ませんが、いかがお考えでしょうか。

 

テキスト中「回遊魚でないものの、・・・・夏場には3割も増加しました」の間の、新潟県におけるアマエビに関する記述に関して

質問19 貴番組が題材に取上げた新潟県におけるアマエビのような、船ごとの漁獲規制の試みは、すでに全国各地に前例があります。よって「日本でも始めたところがあります」の記述では、視聴者に「それまで日本には前例がなかった」と誤解されかねません。これはガイドライン2-①ア「NHKのニュースや番組は正確でなければならない。正確であるためには事実を正しく把握することが欠かせない」に合致していないと考えざるを得ませんが、いかがお考えでしょうか。

質問20 貴番組において、新潟県におけるアマエビの事例を取り上げた目的は「船ごとの漁獲規制」と「籠の網目拡大」による資源管理効果の事例を視聴者に示すことと受け止められます。であれば、同じ日本海の事例である「ベニズワイガニ籠漁業」での資源管理の方が、実施年次がより長い、船ごとの漁獲規制に全船が参加、その違反には公的罰則が課せられてより厳格、網目拡大により漁獲物が大型化、アマエビと異なり資源が増加している、などからよりふさわしい題材といえます。にもかかわらずこの優良な題材を取り上げず、アマエビを取り上げたのはゲストの勝川氏がこれにかかわっているからだとすれば、ガイドライン4-①イ「番組のジャンルを問わず、構成や演出など、全般にわたって幅広く目配りするとともに、題材や出演者の選び方に偏りがないように注意する」に合致していないと考えざるを得ませんが、いかがお考えでしょうか。

 

質問は以上でございます。ご回答のほどよろしくお願い申し上げます。

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