天(お客)に唾するJR東海の広報誌『ウエッジ』(中編)

JR東海とロシアの新興財閥は似たところがある

 

私は、昭和50年代後半に進められた国鉄分割民営化には大賛成でした。

そのころ通勤に使っていた駅は「剣豪宮本武蔵には子がいたか、いなかったか」への答え「武蔵小金井」駅でした。まだいちいちハサミで切符に入鋏していた時代です。その改札口に肩までかかる長髪に帽子を斜にかぶり、改札口に尻を半分乗せ、ハサミを改札の横に打ち当てチャンチャンと鳴らしながらリズムをとる横柄な態度の若い駅員がいました。彼を見るたびに、一日も早い民営化を望んだものです。

 

この世にある経済事業体の形態は、大きく官営企業、民間企業、協同組合の3種類あると思います。国鉄民営化は「官から民へ」の典型的事例です。私は格差を拡大し経済を低迷させる現在の規制改革路線における『なんでも民営化』には大反対です。佐賀県武雄市図書館の民間委託で、蔵書購入のデタラメさが報道されていますが、儲けてなんぼの民間会社に任せるから「そら見たことか」という感想です。

 

しかし、この時の国鉄民営化についてはそれまでの官営企業としての国鉄があまりにもひどすぎたので、そうなるしかなかったと思います。どの事業形態にもメリットとデメリットがあり、問題はその運用ではないかと思います。

 

そこで、国鉄と同じように旧ソ連の崩壊で大規模に行われた「官から民へ」によって生まれた「ロシアの新興財閥」のその後を見てみましょう。

なお、その前にひとこと言わせてください。

旧ソ連時代にモスクワ駐在経験をした私は、その「新興財閥」という言葉を聞いた時には、失笑を禁じえませんでした。なぜなら、彼らのほとんどは旧ソ連共産党の幹部でありながら、国家崩壊をチャンスとばかり、我先に豊富な天然資源などの国家財産の払い下げを受け、それにより私腹を肥やしただけの強欲な連中に過ぎないからです。おそらく旧ソ連時代を経験したロシアの一般国民には『国家財産泥棒』と映ったのではないかと思います。

 

  「ロシアの新興財閥」(ウィキペディア)からの抜粋

・新興財閥は、ソ連時代の社会主義的政治・経済体制から、資本主義体制に移行する過程で形成された。

・新興財閥は、連邦レベルから地方レベルに至る政治家及び官僚機構との癒着によってその存在を拡大させていった。

・この過程で政治家や官僚に影響力を行使するためにメディア支配に走った。

・エネルギーや資源関連の産業は、構造上、産業分野における独占的傾向が強く、競争原理が働きにくい状況が問題となっていった。

・プーチンは、エリツィン時代のような財閥の政治介入は容認しないことを告げた。こうして新興財閥の大部分は、本来の業務である実業に専心することとなった。

 

「政治家との癒着」

「政治への影響力を行使するためのメディア支配」

「産業分野における独占的傾向が強く、競争原理が働きにくい」

など、まるでK氏に私物化されたJR東海そっくりですね。政治の力で国家財産を払い下げられて生まれた民間企業の宿命でしょうか。しかし、他のJRは違いますよね。やはりK氏の個人的要素が強いと言わざるを得ません。一日も早く日本にもプーチンのような政治家が登場し、K氏が排除されることで、JR東海が「本来の業務である実業に専心」する日が来ることを願わざるを得ません。

 

自分の立場というのがわかっていないのか

 

JR東海が「官から民へ」という規制改革路線の先駆けとして誕生したためなのでしょうか。それともメディアを通じた現政権への応援で影響力を誇示したいのでしょうか。月刊誌『ウエッジ』の過去の記事には、漁業批判や原発再稼働促進の関連記事を除いても、以下のような市場競争原理の導入を御旗に掲げる「規制改革会議」の主張に添ったものが多数みられます。

 

(以下新しい順)

・地方創生は撤退戦から

・もとに戻すことが復興ではない 福島、三陸から考える「選択と集中」

・滅びゆく農協 岩盤規制と農業の行方

・やっぱり進まぬ規制改革 既得権益に群がる業界団体

・農業の成長戦略 中間管理機構では農地の集約はムリ

・(幻の記事)公共事業増で蘇った自民党建設族

・TPP 迫る時間切れ 交渉参加を急げ

・医師会が築いた医療の闇 メスを入れるのは今

・こんな農協はいらない

 

 では、JR東海ご自身はどういうお立場にあるのでしょうか。

 

回収の対象となった幻の「公共事業増で蘇った自民党建設族」という記事について、政治評論家の森田実氏が「森田実のいわねばならぬ(2013.2.23) 平和・自立・調和の日本を作るために(132)」というブログに、大変参考になるJR東海への見解を載せられていますので、以下にその一部を紹介します。

《新・森田実の政治日誌》国民の生命を守る国土強靱化のための公共事業に対する許しがたい偏見と悪意/JR東海が発行している『WEDGE』2013年3月号「WEDGW REPORT」の、公共事業に対する行き過ぎた偏見と悪意に抗議する(その1)

 

「善がなければ人間はうるさくて有害劣悪な動物にすぎない」(フランシス・ベーコン)

 

 東海道新幹線の車内で販売されている『WEDGE』という月刊誌があります。2013年3月号を開いて驚きました。あまりにもひどい偏見と悪意に満ちた記事が掲載されているのです。『WEDGE』はJR東海の経営陣が編集方針を決めていると言われている月刊誌です。このような雑誌が、国民の生命を守るための国土強靱化計画を非難するというのは異例です。

  政治においていちばん大事なことは国民の生命を守ることです。そのためには、社会資本の整備のための公共事業が必要なのです。この公共事業をマスコミと一部政治家たちは「ムダなバラマキ」と言って攻撃しています。この非難キャンペーンにJR東海まで加わっていることは許しがたい気がしています。JR東海の存在そのものが公共事業の成果です。JR東海は、借金を国が負担して民営化し、いまは巨大な利益を上げています。いま公共事業を目の敵にして攻撃しているJR東海の姿は、自分さえよければ主義の典型です。JR東海の経営陣はいま調子に乗りすぎているように見えます。

 

全くそのとおりです。税金を使った公共事業の成果である東海道新幹線で、国民に赤字を負担させた後民営化し、巨額の利益を上げさせていただいているという立場を忘れて「調子に乗りすぎている」、私が言いたいことがこの短い文章の中に凝縮されています。

 

フランシス・ベーコンの格言を、コメントなしでさりげなく掲げ、

「善がなければ『○○○○』はうるさくて有害劣悪な雑誌にすぎない」

と、読者に読み取らせるところなど、さすが著名な政治評論家は違うと感心した次第です。

 

 

東海道新幹線を上・中・下に分割し競争させよ

 

他人には規制緩和で競争せよと主張していながら、自分は巨大な権益に守られているJR東海が「言行一致」するよう、一つの提案をさせていただきます。私は、JR東海の運行する新幹線に乗りたくありません。最近はあのクリーム色にブルーのラインの入った車体を見るだけで腹が立ちます。他のJRが運航するいろいろな色の新幹線に乗りたいのです。どうして東海道新幹線にはJR東海以外の会社の車両が走っていないのですか? これではお客に選択肢はなく、『ウエッジ』の大好きな競争原理が働いていないではありませんか。

 

例えば、飛行機を例に挙げます。飛行場管理業務は民間会社、管制業務は国土交通省、飛行機そのものには多数の民間会社が参入しています。よって、東海道新幹線も線路や駅舎を管理する民間会社(下)、列車運行を一元的に管理する民間会社(上)、それから列車を走らせる多数の民間会社(中)の上・中・下に分離して、特に中で競争させるべきです。

 

その際にはJR東海は、大好きな「向上心の強いリーダークラスのビジネスパーソン」に向けた富裕層限定の全車両グリーン車のみを、運行するようにお願いします。『ウエッジ』の読者層として端(はな)から眼中にない普通車のお客(だから無料配布していない)は、是非とも新規参入する他社にお任せください。そうすると私も名古屋と東京の間の2時間弱、不愉快な思いをする必要がなくなるだけでなく、他社の列車の中から一番サービスの良い会社を選択できる楽しみも増えますので。

 

ぜひとも次回の月刊誌『ウエッジ』の特集で「東海道新幹線に競争原理を!」と大胆に提言していただくことを、衷心よりお待ち申し上げております。

 

日本漁業を目の敵にするJR東海の背景には「自分さえよければ主義」あり

 

この世に数多(あまた)ある雑誌の中で『ウエッジ』のみが、しかも数多ある社会経済問題の中から、わざわざ漁業問題を取り上げ、嘘までついてなぜ漁業攻撃に懸命なのか理解できません。最近では、多くの資源が回復して攻撃材料に事欠くためでしょうか、ウナギとマグロの資源が減ったのが、まるでうれしくて仕方がないようにはしゃいでいますが、それが減ってJR東海にどのような影響があるのでしょう。車内販売でウナギ弁当とマグロ丼が売り上げの大部分を占め、これが減るとJR東海が赤字に転落することでもいうのでしょうか。

 

漁業攻撃には何か別の狙いがある。そう考えざるを得ません。

 

いつから『ウエッジ』が漁業攻撃を開始したのか、同社のホームページで振り返ってみましょう。『ウエッジ』の主な媒体は月刊誌とWEBマガジンになっており、漁業問題が一番初めに取り上げられたのは、新幹線内に配布される月刊誌ではなく、WEBマガジン「WEDGE Infinity」2011年3月14日の「築地市場移転予算成立 急がれる本質議論」です。

 

第2回目は2011年5月31日の「漁業復興 カギは漁業権の開放」で、ここからいつもの「震災被災地に新自由主義を」「資源を乱獲するな」「IQ・ITQを導入せよ」の漁業攻撃「3本の矢」シリーズが、取っ替え引っ替え今日まで40回以上にわたりWEBマガジンに掲載されています。

 

なお、この記念すべき第1回目と2回目の記事の寄稿者は、昨年の水産庁主催の「資源管理のあり方検討会」に参考人として出席し、自著で資源回復計画を批判しておきながら、「資源回復計画というのは見たことないんです」と公衆の面前で平気で嘘をついたK氏です。ここでもまたK氏が登場です。偶然でしょうが、どうして嘘で漁業攻撃をする方の頭(かしら)文字にはKがつく人が多いのでしょう。これが3つ並ぶと、白い布で全身を覆い松明を掲げながら練り歩く、怖い集団をつい想像してしまいますね。

 

話を元に戻します。

第1回目の記事のテーマ「築地市場移転予算成立 急がれる本質議論」を今から振り返れば、その後の漁業攻撃シリーズとは異質のもので、そのフォロー記事も見当たりません。とすれば、1回目と2回目との間に変調をきたす何があったのか。それは東日本大震災による福島第一原子力発電所の爆発事故でしょう。震災直後において電力危機が発生し、東京電力管内で輪番停電が実施されました。さらに、日本国内の原子力発電所が安全審査のため停止し始めました。電力を大量に消費する新幹線を運行するJR東海にとって深刻な事態であったことは想像に難くありません。

 

では、なぜそれが漁業攻撃につながるのか。それは漁業と原発との強い関わり合いからです。

原発事故において最も深刻な被害をこうむる関係者の代表ともいえるのが漁業者です。ゆえに東京電力は、福島第一原子力発電所の地下水の海洋放出については、地元漁業者の了解がなければ絶対にできません。

 

「魚が放射能に汚染され操業ができない」「放射能が検出されなくなっても風評被害に苦しめられる」「一体いつになれば試験操業から本格操業に戻れるのだろうか」という先の見えないつらい状況下で耐えているのに加え、東京電力からの地下水の海洋放出要請に対し苦渋の選択を迫られる漁業者には、「誠に申し訳ない」という気持ちが生じるのが一般的な感情でしょう。

 

ところが、「自分さえよければ主義の典型」と森田実氏から指摘されたJR東海には、そのような感情はみじんもありません。漁業者を「新幹線を走らす電力を供給する電力会社にいちゃもんつけるけしからん奴ら」としか受け止められないのです。だから、「なんでもよいからケチをつけ徹底的に攻撃してやれ」という流れになったのではないでしょうか。これを自己中心主義者によくある「逆切れ」又は「逆恨み」とでも言ったらよいのでしょうか。

 

そこに、従来から応援してきた規制改革会議から、資源と漁場を漁業者から取り上げ、外部企業に渡す政策が提言され、その手先として虚偽と偏見で漁業を攻撃することを得意とする学者らが現れたので、これ幸いと双方の利害が一致し、「ジャンジャン書かせろ」となったのでしょう。

 

月刊誌『ウエッジ』にみる原発再稼働促進と漁業攻撃との競演

 

私が、原発事故がJR東海の漁業攻撃の起点となったと推測せざるを得ないのは、月刊誌に掲載された、原発と漁業の二つの記事を時系列的に追ってみた結果です。

2011年3月11日 東日本大震災発生

2011年3月12日 福島第一原子力発電所水素爆発事故発生

月刊誌『ウエッジ』

2011年7月号「特集それでも原発 動かすしかない」 賠償スキーム 東電だけが悪者か

2012年3月号「特集こんなに儲かる漁業補償」 カネのために掲げた“反原発”

2012年9月号「特集無理だらけの原発ゼロシナリオ」 国民的議論の前提がおかしい 

2013年2月号 カニ密漁を防ぐ日露協定の抜け穴

2013年8月号「特集ウナギの次はマグロが消える」クロマグロ一網打尽 ウナギ乱獲

2013年9月号「特集日本経済の最大リスク要因はエネルギー今こそ原子力推進・・」

2013年11月号「特集福島の避難者が見たチェルノブイリ」

2014年8月号「特集魚を獲り尽くす日本人」

2015年5月号 絶滅危惧のクロマグロ 産卵場の漁獲規制を急げ

2015年8月号「特集ウナギ密漁、変わらぬ業界・・」 暴力団が暗躍する・・

2015年9月号 マグロ急減で漁業者衝突 動かぬ水産庁の不可思議

 

「原発再稼働促進」と「漁業攻撃」の競演とでもいってよいでしょう。

私が絶対に許せないことは、上の赤字の部分の二つの特集です。

原発事故後の最初の記事が、地域の被災者の心情などお構いなく「それでも原発 動かすしかない」であり、しかもいきなり賠償の話を持ち出すとは、いったいJR東海はどういう神経をしているのか、怒りが湧いてきます。

その次にあげたのが、漁業は「たかるな」です。

こういう「自分の儲けの事しか頭にない」「すべて金でしか世の中を見ることしかできない」JR東海ゆえに、記念すべき月刊誌初登場の漁業特集記事が「こんなに儲かる漁業補償」で、しかも内容は、「カネのために掲げた“反原発”」だったのでしょう。

 

原発事故の被害者の福島県の漁業者を、いきなり侮辱しているのです。

これは、交通事故の被害者を「当たり屋」扱いしているのと同じです。赤信号を無視し、歩行者をはねておいて、苦痛に顔をゆがめる歩行者を上から覗き込み、その運転手が最初に発した言葉。

 

「金が欲しいのか」

 

JR東海とはまさにこの運転手と同じレベルです。 

人間として絶対に『ウエッジ』は許せないと思います。

 

(以下後編に続く)

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