「本音で語る・・・」の由来

 

 「本音で語る資源回復計画」(「水産振興」第442号 財団法人東京水産振興会 平成16年10月1日発行:在庫なし)という46ページの小冊子があります。

 この冊子は「筆者は、平成9年10月から平成16年4月までの6年半、水産庁資源管理部管理課で漁業管理推進官、資源管理推進室長として、途中で職名は変わったものの一貫して資源管理の業務に携わった」で始まります。

この筆者とは私のことであり、このブログの表題はこれに由来したものです。

 「本音」とは「建前」の対象に位置するものです。私がその企画、立案、実践に一貫して関わった「資源回復計画」について、役所が公表する資料(建前)に書いていない、裏話(本音)を語っておくことが「将来なにかの役に立つもの」とし、書き残したものです。

 私は、この冊子の最後を以下のようにむすんでいます。

 まだ分かってもらえないのか。何度も言うように「TAC」も「IQ」も道具である。道具に非はない。その道具をおもちゃにする者が悪いのである。ということで筆者の最後の仕事はIQつぶしとなった。そのためか、今度は筆者もつぶされ別のポストに異動し、いまこの話を書いている次第ではないかとの見方もある。目的と手段の逆転は水産行政の至るとこに見られる。今後ともこの戦いは続く。 

 若干補足します。水産庁には、室長以上の幹部が出席する庁議というのがありますが、さらにその上の幹部だけが集まる会議もあり、そこで「IQを導入しよう」という意見が一部の幹部から出ました。私が、なぜIQに反対するかは、おいおい説明していきますが、それを聞いた私は「まだ分かってもらえないのか」と心底がっくりし、思わず「私が資源管理の室長である限り、絶対にIQはやりません」と答えました。当然ですがそれが幹部の逆鱗に触れ、あっという間に異動させられることになりました。

 早いものであれから10年です。この間水産庁では、IQ導入をめぐる議論が繰り返し行われたようですが、幸いなことに未だ我が国にIQは導入されていません。しかし、油断はできません。むしろ今大変な危機が近づいていると思います。

●進撃の巨人が迫るIQ・ITQ

それは、あの「進撃の巨人」のような規制改革会議が、IQのみならずそれを過激化させた「ITQ」の導入を、漁業者の反対にもかかわらず強く迫っているからです。

規制改革会議とは、「市場機能をより発揮するための競争施策の積極的展開」を御旗に掲げた組織であり、その基本思想は欧米由来の個人主義、市場原理主義などを尊ぶいわゆる「新自由主義」といわれるものです。そうです、個人主義を具現化したのがIQであり、それをお金で取引する市場原理主義化したものがITQなのです。

 では、過去20年間にわたる規制改革路線が、我が国経済になにをもたらしたでしょうか。格差の拡大とデフレ不況という経済の低迷ではなかったでしょうか。規制改革会議がマスコミとタッグを組み喧伝してきた「成長路線」とは実はその頭に「自分だけ」が付いたものであったことに、国民はようやく気付いてきました。

漁業関係者も知っています。IQ,ITQがいくら巧妙に資源管理の衣をまとっても、その真の目的が、多くの漁業者から、生活の糧である資源を奪い、漁村共同体を崩壊させ、ごく一部の強欲者のみを豊かにする富の略奪手段の制度化であると。

●不都合な真実 

ここに一つの不都合な真実があります。それは、規制改革会議の関係者が、口を紡ぎ決して触れないことです。それはなんでしょうか。

2009年ノーベル経済学賞を受賞した米国のエリノア・オストロム教授(故人)のことです。教授は、「コモンズ(共有資源)の悲劇」の解決手段として、日本型漁業の特徴でもある「利害関係者による自主的管理」が、有効であることを、それまでの常識を覆して証明したことが受賞の理由となりました。また、世界的に著名な水産資源学者である米国のレイ・ヒルボーン教授も、オストロム教授の考えを支持しており「世界の漁業の大多数にとって、唯一の現実的な解決策である共同管理が、世界の漁業が直面する諸課題の多くを解決できるという希望が得られる」としています。

もうおわかりですね。なぜ彼らがこれらの事実に一切触れないかを。

 これからしても、IQ,ITQという劣った資源管理方法を、我が国に導入しなければならない理由などありません。世界の権威に逆らいIQ,ITQが必要と主張する学者がいるなら、私はその学者にいいたい。ノーベル賞をとってから出なおしてこい!と、までは言いませんが、まずネイチャーなど権威ある学術雑誌に、オストロム教授やヒルボーン教授に対抗できる論文を投稿し、客観的評価を得てから発言していただきたいと。でないと3流学者の言う「IQ,ITQはすばらしい」など誰も信用できませんよ、とね。

  10年間という空白を経た今、このブログの開設で、私とIQとの戦いは第2ラウンドに入りました。今回の目的は、多くの国民を不幸にした規制改革会議から漁業を守ることです。このブログにおいて、資源管理や漁業に関心のある方だけでなく、規制改革会議の提言に沿った経済施策一般に疑問を持つ方にも、その本質を理解するにおいて、すこしでも私の語る本音がお役に立てば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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